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大阪の風俗街で商売を学び、夜逃げも…波乱万丈のフリーランスが辿り着いた生き方

2025.12.04

働き方改革やコロナ禍などを経て、「自分らしい生き方」や「自分らしい働き方」を求めることは珍しくなくなった。ウェルビーイングな生活を体現するためにも、自分らしさに素直に従ってみることも、人生で大事なことかもしれない。

アパレル未経験ながらアパレルブランド『JESUS SHOP』や『Vannei TOKYO』を立ち上げ、『Vannei TOKYO』ではラフォーレ原宿出店を実現させた人物がいる。フリーランスとして活動するヤマサキえりか氏だ。

ヤマサキえりか氏

ヤマサキ氏はもともとWeb業界でのキャリアを積み、渡米からアパレルブランドの立ち上げ、ラフォーレ原宿への出店と、華々しい経歴で注目を集める。

現在はインスタグラムマーケティングの分野で多くの女性たちを支援する傍ら、イラストレーターとしての新たな挑戦も始めている。

幼少期から“商売の真髄”を感じなから貧乏生活を送り、中学時代にはすでにメルマガビジネスで収益を得ていたヤマサキ氏。今回DIME WELLBEINGでは彼女のこれまでの歩みや独自の哲学、現代を生きる人々へのメッセージを聞いた。

約100人の業務委託マーケターのコーチを行ってきた

100人の女性を導くインスタマーケティングコーチとして伝えるコミュニケーションと信頼関係

ヤマサキ氏の現在の活動の中心は、インスタグラム運用代行を提供する株式会社SAKIYOMI(サキヨミ)での業務委託の仕事だ。

同社には約100人の業務委託マーケターが在籍しており、その9割が子育て中の女性だという。ヤマサキ氏は同社でのこれまでの業務で、彼女たちを指導・サポートする「コーチ」として、週に1度の1on1ミーティングなどを通じて並走した。

「完全在宅で出来る仕事なので、マーケターはママさんが多かったです。お子さんが5人いらっしゃる方や、妊娠7か月で業務をスタートされる方もいました。『今から分娩台に上がってきます!』と連絡をくれた方もいましたし、産後に最短1週間で戻って来られた方もいました。

保育園や幼稚園の補助の関係で、仕事をしている方が優先度が上がるので、『子どもがいても何かしら仕事していたい』という方も。SNSというのが“今っぽい”のと、“ちょっと手に職”みたいな専門職なので、ママさんに選ばれたのだと思います」

そんなママさんたちに当時ヤマサキ氏がコーチとして教えたのは、インスタグラム運用のテクニカルな知識だけではない。むしろ、クライアントとのコミュニケーションや信頼関係の構築といった、より実践的なスキルに重きを置く。

「基礎のスキルはあるけれど、現場に出た時にイレギュラーなパターンなどで『全然話が違う! 教わったことと違う!』ということもあるじゃないですか。クライアント企業の規模によっても対応が違うこともあります。そういう部分も、OJTをしながら私が並走してコーチングしました。

あとは、アサインされた時点でクライアント担当者が“既にギスギスしているパターン”もあります。まだ関係性がない中で、クライアントの方がSNS運用の知識はそこまでなくてもマーケティングにおいてはレベルが上ということもあるので、テクニカルなところよりも、『信用を得るためにどうしていくか』という“クライアントワーク”が多かったかもしれないです」

その“信用の得るため”の作戦を、ヤマサキ氏は「イエス積み重ねる作戦」と名づけている。

「イエス積み重ねる作戦」でクライアントとの距離を近づける

「例えば、『今日やることと、今日やったこと』を独り言のようSlackで記録する。先方が見ているところで『返信が欲しい』とか『質問したい』とかではなくて、『今日は私、これとこれとこれをやります』『実際、本当にそれが終わった』という報告というか、独り言を続ける。

そうすると相手も『ちゃんとやってくれているんだ』と思って、そのうち心を開いてくださる。中には感情的になっている相手もいらっしゃるけど、『お怒りということは、すごく悲しんでいること』に近いと思って。例えば、期待していた以上の数字が全然出ていないとか、運用の不手際があったとか、掘り起こしていくと『自分の会社のことを適当に扱われたみたい』という思いで傷つかれているんだと思うんです。

もしかしたらクライアントの担当者も自分の上司に怒られていて辛い立場にいるかもしれない。表面上怒っている人も、突き詰めると悲しんでいるかもしれないので、距離を少しずつ近づけていく会話をして、温度感が伝わるような工夫や心構えを伝えました」

治安の悪い風俗街で得た“商売の神髄” 夜逃げからの極貧生活

SNS運用の知識だけでなく、コミュニケーションや信頼関係構築のノウハウを人々に教えるヤマサキ氏。実は幼少期から紆余曲折な人生を歩んできた。

本人曰く「大阪の超絶治安の悪い風俗街」で薬局を営む父と母のもとに生まれたヤマサキ氏。その薬局は場所柄、「夕方5時に開いて朝の5時に閉まるという怪しい薬局」だったと振り返る。その薬局で父の隣に座り、一緒に店番もしていたという。この街でヤマサキ氏は商売の真髄を肌で感じていた。

風俗街で学んだ商売の真髄を語る

「店番している時に気がづいたんです。雨が降るとビニール傘が高く売れるんですね。普段300円ぐらいで売っているビニール傘を、500円にして店の前に持って行くと飛ぶように売れる。

それが幼いながらに不思議で、普段から500円で売ればいいのにと思って父に聞いたら、『みんな、女の子に“いい顔“したいから、ちょっと高いと思っても女の子が雨に濡れるぐらいやったら傘買うんや』と。『なるほど!』と思って。晴れの日も雨の日もビニール傘であることは変わっていないのに、『土砂降りに見舞われることによって300円の傘が500円で売れるんや』というのが最初の驚きでした。“化ける”という感覚をそこで知りました」

傘の価値が“化ける”ことを知ったヤマサキ氏は、繁華街で育つことでさらに“化ける”感覚を学んでいく。

「ああいう場所に住んでいると、みんな並んで商売をやっているので、早くから街のヒエラルキーみたいのを理解していました。『ここのフグ屋さんとカニ屋さんがライバル店で、でも同じ並びだから表面上仲良くしている』ということに気づいたんです。

例えばカニ屋のおっちゃんのところでお小遣い500円をもらったら、その500円を握りしめてフグ屋のおっちゃんところに行く。『カニのおっちゃんが500円くれた』って言うと、フグのおっちゃんは絶対に1000円くれる。そういうことに気づいていましたね。嫌な幼稚園児ですけど(笑)。

でも幼稚園の子が、当時20時とか22時頃まで店番していたから、みんなかわいがってくれましたね」

しかし小学校2年生の時、父親の事業失敗により生活は一変。一家は夜逃げ同然で祖母の家に移り住み、「鍋を食べようとしたら天井からゴキブリが鍋の中に落ちてくるようなボロ家」での極貧生活が始まった。

後に両親は離婚。転校先の小学校の同級生からも“ゴキブリハウス”と呼ばれたこの場所で、父と祖母と共に暮らしたという。この経験が「自分でお金を生み出さなければ」という強い思いの原点となる。

中学生になると、趣味だったアイドルグループの情報サイトや有料メルマガを作り収入を得るなど、早くからビジネスの才能を開花させた。

中学時代からビジネスをスタート

高校卒業後はWeb系の専門学校へ。それは父からの「人生で一番時間を忘れて没頭したことを仕事にしなさい」というアドバイスがきっかけだった。中学時代に夢中でホームページを作成した経験を思い出し、Webの道を志したのだ。

学費の支払いにも苦労したが、たまたま父が交通事故で得た示談金が振り込まれるという奇跡的な出来事にも助けられ、無事に卒業。在学中は誰よりも熱心に勉強に打ち込んだという。

キャリアの転換点――成功の裏にあった心身の悲鳴

Webエンジニアとしてキャリアをスタートさせたヤマサキ氏だったが、プログラミングの師匠の昼夜を問わない働き方を見て「自分のなりたい姿とは違うかもしれない」と感じ始める。

そんな時、「アメリカに行きたい」という思いが芽生え、その資金を稼ぐためにSNSでファンを作り、古着を販売するビジネスを開始。これがアパレル事業へと発展し、ついにはアパレルブランド『Vannei TOKYO』ラフォーレ原宿への出店を果たすまでに成功を収めた。

しかし事業の拡大とともに、常に数字に追われる日々に疑問を感じ始める。そして、ラフォーレでの出店を終えた直後、原因不明の高熱と発疹に見舞われた。診断は「薬疹」。多忙とプレッシャーから、自分が精神安定剤を日常的に服用していることすら認識できなくなっていたのだ。

激務を経てウェルビーイングな生活に行きついた

「この頃に、『もうこういうのは辞めよう』と思ったんです。追い詰めるような働き方は辞めようと。それまでは本当にひどい生活をしていましたから。お酒飲みまくり、タバコ吸いまくりの、昼夜逆転生活。アメリカから日本に帰ってきて、その次の日に韓国に行って帰ってきて、そのままフランスに行く、みたいな。えげつない生活していたので。その間も常に飲んでいましたし」

この出来事を機に、ヤマサキ氏は心身を追い詰めるような働き方を辞め、「自分にとっての幸せを追求する生き方」へと舵を切ることを決意した。約6年前に都内から千葉の海沿いへ移住。現在は朝4時に起き、運動を取り入れるなど、心身の健康を第一に考えた「ウェルビーイング」な生活を送っている。

「それこそお金の余裕もある程度できましたし、昔みたいに地べたを這いずり回る……みたいなこともしなくてよくなったので。これからは『自分の思う幸せは何だろう』というのを、解像度上げてやっていく人生にしようと思いました。そう思ったのが29歳くらいの頃ですね。」

現在はフリーランスとして、SAKIYOMIをはじめ7社と契約し、収入源を分散させることで精神的な安定を保つ働き方を実践。その仕事内容は多岐にわたり、AIを活用したサービス開発や、元プロ女子ゴルファーのセカンドキャリア支援など、枠にとらわれない挑戦を続けている。最近では、幼い頃からの夢であったイラストレーターとしての活動も本格的に開始した。

自分らしく輝くための「3つのヒント」

インタビューの最後に、ヤマサキ氏はフリーランスとして、また一人の女性として輝き続けるための秘訣を語ってくれた。それは「自分にとっての幸せの定義を明確にする」こと。

3か月に一度、「マインドマップ」を使って「自分がワクワクすること」「嫌なこと」を書き出すのだ。自分の価値観をアップデートしていくのだという。

マインドマップで自分を見つめ直す

「私が思う『キレイだな』と思う人や『この人楽しそうだな』と思う人、私が『ワクワクする瞬間』とか、そういうものをとにかくいっぱい書き出していきます。

ワクワクする瞬間とは、例えば新しい物を開ける時とか。逆に嫌いなことも書きます。満員電車とかしがらみとか。そして『楽しい』『好き』『この瞬間のためだったら何でもできる!』みたいのをいっぱい書き出して、『じゃあそれを叶えている状態ってどんなだろう』と、1回具現化してみて、抽象化した時にどんなものかを、3か月に1回やるようにしています。

3か月に1回というのは、やっぱり何か気づかないうちに人間って3か月だけど価値観が変わるんです。読んだ本や出会った人で変わるので、3か月に1回か、せめて年に2回かで『マインドマップ』を書き出さないと、『自分にとってこれが幸せだ』と思っていたものいつの間にか変わっていて、自分が過去に思っていたもので自分を縛ってしまう。

途中でもうワクワクしなくなっているのに、『去年決めたから』みたいな形で縛ってしまう。だから3か月に1回ぐらい見直すのを推奨していますね」

またヤマサキ氏は、「自分の機嫌は自分で取る」ことも大事だと言う。「フリーランスは誰も機嫌を取ってくれない。自分をワクワクさせる環境を自ら作り出すことが大切」だと語る。

さらに「自分のモチベーションを信用しない。モチベーションは幻想」と断言するヤマサキ氏。「やる気に頼るのではなく、友人を巻き込むなど『やらざるを得ない』仕組みを作ること」が継続の鍵だという。

壮絶な過去を乗り越え、しなやかに、そして力強く自らの道を切り拓いてきたヤマサキエリカ氏。彼女の生き方は、変化の激しい時代の中で“自分らしい幸せや働き方”や“ウェルビーイングな生き方”を模索する多くの人々にとって、大きな勇気とヒントを与えてくれるだろう。


取材・文/コティマム

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