30~50代の4人に1人が悩んでいるといわれる睡眠負債や、ストレス社会から起こる不安や落ち込み。そんな悩みの根本的改善を目指すのが、このたび発売となったオンライン動画形式の「メンタルケアプログラム」だ。
後編では、共同監修した精神科医の吉岡鉱平先生と世界的な瞑想家のニーマル・ラージ・ギャワリ氏にインタビュー。プログラム開発の経緯や魅力について伺った。
睡眠に悩む人におすすめ!オンライン動画でセルフケアできる「メンタルケアプログラム」とは?
働く世代の8割以上が睡眠に関する何らかの悩みを抱えているといわれる昨今。 「寝つくのに時間がかかる」「夜中に目が覚めてしまって眠れなくなる」といった不眠トラブル…
心の悩みには瞑想やマインドフルネスが効果的
――吉岡先生は2022年にご自身が立ち上げた「Baseクリニック赤坂」の院長として、心と身体の不調に対するさまざまな治療を提供するほか、株式会社comatsunaの代表として、ヘルスケア関連事業も展開されています。今回「メンタルケアプログラム」を共同監修することになったきっかけを教えてください。
吉岡鉱平先生(以下、吉岡先生) 不眠や不安、落ち込みといった悩みに瞑想やマインドフルネスが効果的であることは、10年ほど前からさまざまな論文で世界的に知られています。私もクリニックを訪れる患者さんに常々薦めてきましたが、患者さんの暮らしにどうしたら落とし込めるのか、そこが課題だなと感じていました。
――瞑想やマインドフルネスを薦めても、実際にはなかなか取り組めない、ということでしょうか。
吉岡先生 そうなんです。おすすめの書籍を紹介しても、なかなか実践できない、続けられない、というフィードバックが多い。何かいい方法はないだろうかと思っていたときに、知人からニーマル・ラージ・ギャワリ先生のことを聞きまして。
――ニーマル・ラージ・ギャワリさんは世界的瞑想家として知られ、今回の「メンタルケアプログラム」を手がけたトータルウェルネスカンパニー、スワル株式会社が運営する講座やイベントを通して瞑想を指導していますね。
吉岡先生 ニーマル先生が広尾の瞑想スタジオで月に何回か瞑想のクラスを行っているということで、その知人の紹介で参加したら、本当に素晴らしくて。「これが瞑想の正しいやり方なのか!」と驚きました。
――吉岡先生自身ももともと、瞑想は行っていらっしゃったんですか。
吉岡先生 はい。ただ、やり方を誰かに習ったわけではないので、本当に合っているのかどうか、疑問に感じていた部分はありました。それだけに、ニーマル先生のクラスで瞑想を体験したときは、「本物に触れたうえで自分で実践するのとそうでないのとは、まったく違う」と実感したんです。ちょうどそのタイミングで「メンタルケアプログラム」の開発を検討しているという話を聞き、これはぜひ私の患者さんたちにも薦められるものにできたらということで、ご一緒させていただくことになりました。
5000年の叡智には現代病の改善策も含まれている
――なるほど。ニーマルさんが「メンタルケアプログラム」を開発しようと考えたきっかけを教えてください。
ニーマル・ラージ・ギャワリ氏(以下、ニーマル氏) 私は瞑想やヨガの講座で指導を行うほか、東洋の伝統的な予防医学であるアーユルヴェーダをベースとした施術を受けられる銀座の「THE HUNDRED WELLNESS SALON」を監修しています。講座やサロンには瞑想やヨガ、アーユルヴェーダに興味をもつ人が訪れますが、ある日、スワルの石古暢良社長から「それ以外の一般の人たちが抱える悩みやストレスにアプローチする方法はありませんか」と相談を受けたんです。
――忙しい毎日のなかでバランスを崩してしまっている一般の人たちにとって、講座やサロンに足を運ばなくても心身を整えられるようなものがあれば、それはたしかによさそうですね。
ニーマル氏 不眠や不安、落ち込みといった症状は現代病とされていますが、実は、5000年以上の伝統をもつアーユルヴェーダの叡智にはその改善策が含まれています。それを一般の人向けにわかりやすく伝えるために開発したのが「メンタルケアプログラム」です。吉岡先生もメンバーに加わってくださって、より深みのある内容に仕上がりました。
3つのリスクに同時に対処することで効果が上がる
――「メンタルケアプログラム」は「不眠アプローチ」「不安アプローチ」「落ち込みアプローチ」の3つのプログラムがセットになっています。プログラムが単体ではなく、3本セットになっているのはなぜでしょうか。
吉岡先生 「不眠」「不安」「落ち込み」はストレスの三大症状で、互いにリンクしているんです。例えば、不安があると不眠になり、それがさらなる不安につながり、落ち込んでいく、といったふうに、それぞれが影響し合います。
ニーマル氏 「不眠」「不安」「落ち込み」のどの症状がいちばん強く出ているかという違いがあるだけで、ストレスを抱えている人はこれら3つのリスクを抱えています。ですから、不眠で悩んでいる人であれば、不眠へのケアだけでなく、不安や落ち込みへの対処も同時に行ったほうが、改善がスムーズになります。「メンタルケアプログラム」を単体ではなく3本セットで提供しているのも、そのためです。ぜひ3本とも試してみていただきたいです。
メディテーションとメディケーション、それぞれの役割
――3つのプログラムを自分の状態に合わせて使いこなしていくことで、ホリスティックに心身を整えられるということですね。「メンタルケアプログラム」は西洋医学と東洋医学を融合したアプローチですが、それぞれの分野がどのように補完し合うのでしょうか。
吉岡先生 例えば、オレキシン受容体拮抗薬という比較的新しい不眠症治療薬があります。従来の睡眠薬と異なり、依存症や離脱症状のリスクが低いことから期待を集めているのですが、弱点があり、不安が強い状況だと効果が出にくいんです。そういう方が「メンタルケアプログラム」で心を穏やかにすることができれば、治療薬をより有効に使えたり、あるいは、治療薬を減らせたりする可能性が出てきます。東洋医学のメソッドで心と身体の土台を整えながら、必要に応じて西洋医学のアプローチを取り入れる、というのがベストだと考えています。
ニーマル氏 メディテーション(瞑想)とメディケーション(投薬治療)には、それぞれにしかできないことがあります。メディテーションは心を健やかにし、病気を予防するもの。メディケーションは内分泌系や神経系、ホルモンなど、身体に直接働きかけるものです。緊急時には投薬治療がマストで、瞑想では対応できません。一方、ライフスタイルは瞑想で整えることができますが、投薬で変えることはできません。ですから、両方をうまく活用していくべきです。なお、「不安」や「落ち込み」は考え方のクセからやってくるもの。悩んでいる人は「メンタルケアプログラム」で根本的な改善を目指すとともに、自然のリズムと調和する生き方を取り戻していただきたいなと思っています。
吉岡鉱平氏
Baseクリニック赤坂院長・株式会社comatsuna代表・日本精神神経学会認定 精神科専門医・日本医師会認定産業医・国立福井大学医学部卒。東京慈恵医大麻酔科を経て麻酔科専門医として活動後、メンタルマネジメントへの関心を深め精神科医へと転身し精神科専門医を取得。2022年にBaseクリニック赤坂を開院。麻酔科と精神科の2つの領域における知識と経験をもとに、ココロとカラダの不調に対する様々な治療を提供している。株式会社comatsunaの代表としてヘルスケア関連事業も展開する。
ニーマル・ラージ・ギャワリ氏
世界的瞑想家。ネパール出身の世界的瞑想家。古来からのヒマラヤメディテーションの叡智の継承者。祖父が創立した王立アローギャ・アシュラムで9歳から本質的なヨーガ(アーサナ、呼吸法、メディテーション)の研鑽を積む。15歳より王族、政府要人らへの指導を開始した世界の瞑想界のサラブレッド。
取材・文/志村香織







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