他人の悩みやつらさに寄り添うあまり、自分の心が疲れてしまう“共感疲れ”。SNSやニュースで情報があふれる今、誰にでも起こり得る現象です。この記事では、共感疲れが起こる理由、陥りやすい人の特徴、そして心を守りながら人と関わるための予防法をわかりやすく解説します。
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友人や家族の悩みに深く寄り添ったり、困っている人を見ると放っておけなかったり。あなたの持つその高い共感力は、人間関係において大切なものです。
しかし、その共感力が強すぎるあまり、他人の感情や苦痛を自分のもののように感じてしまい、心が消耗してしまうことはありませんか?
「力になりたい」という気持ちから親身になって関わった結果、なぜか自分が疲弊し、落ち込んでしまう……。それは“共感疲れ”のサインかもしれません。
本記事では、共感疲れの状態を明らかにし、疲れを引き起こす原因や、陥りやすい人の特徴を解説します。そして最後に、自分自身を守りながら、健全に人と関わるための予防法をご紹介します。
共感疲れとは
共感疲れとは、他者の苦難や困難な状況に対し、過度な思いやりや共感を持つことによって、あたかも自分が経験しているかのように心が疲弊し、ストレスを感じる現象を言います。
これは当初、医療従事者や支援職で起こりやすい症状とされていましたが、現代ではSNSなどの普及によりショッキングな情報に触れる機会が増えたため、誰にでも起こる可能性があると言われています。
この状態が続くと、無気力、イライラ、睡眠障害、慢性的な疲労感などの精神的・身体的な症状が現れる危険性があります。
■そもそも共感とは?
共感とは、簡単に言えば「相手の気持ちを自分のことのように感じ、理解しようとする心の働き」です。
私たちは誰かと関わる際、大きく分けて2つの形で共感を使っています。1つ目は、相手がなぜそのように感じているのか、その状況や考えを頭で理解しようとする「理解の共感」です。
もう1つは、相手が楽しいときには自分も楽しくなり、相手がつらいときには自分も同じようにつらさを感じる「感情の共感」です。
この共感の力があるおかげで、私たちは人と心のつながりを感じ、助け合いながら社会生活を送ることができます。
しかし、共感疲れを引き起こすのは、この「感情の共感」が強くなりすぎ、相手のつらさを自分のものとして深く追体験してしまう場合に起こるのです。
■共感疲れを起こす原因
共感疲れを引き起こす主な原因は、個人の性質というよりも、外部からの情報や環境的な要因にあります。
1つ目は、つらい情報に絶えず触れ続けることです。これは、医療や福祉、教育などの現場で他者の深刻な悩みや困難な状況に長く接する環境にある場合や、SNSやニュースを通じて、事故や事件といった衝撃的な映像や情報が次々と目に入ってくる、情報が多すぎる状態が大きな原因となります。
2つ目は、心の距離が近くなりすぎることです。相手の感情に深く入り込みすぎるあまり、客観的な視点を保つための心の区切りが曖昧になってしまうと、相手の苦痛を自分のものとして完全に引き受けてしまい、疲労が溜まってしまいます。
つまり、感情の処理能力を超えた量のネガティブな情報に接することと、対人関係において健全な距離を保てない状況が、共感疲れを招く主な原因と言えます。
共感疲れを起こしやすい人とは?

共感疲れは誰にでも起こり得ますが、特に以下のような傾向や特徴を持つ人は、他者の感情や情報に過敏に反応し、疲労を溜めやすいと言えます。
1.感受性が強く、周囲に気を遣いすぎる人
感受性が強い人は、家族や友人など周囲の状況や他者の言動に対して非常に敏感です。他人よりも多くの情報を感じ取る傾向があるため、相手の気持ちを深く理解しすぎてしまい、心に大きな負荷がかかります。
また、「相手を傷つけたくない」「迷惑をかけたくない」という思いから、自分の気持ちを抑えて必要以上に他人に気を遣いすぎる人も、共感疲れになりやすいです。
2.社会的使命感が強い人
困っている人を見ると「助けたい」「力になりたい」という気持ちが非常に強く、強い使命感を持つ人も注意が必要です。
この傾向を持つ人は、自分の許容量を超えて頑張りすぎてしまうことが多く、結果として心身の疲労を引き起こす要因となります。
3.過去の経験と重ね合わせてしまう人
過去に自身がトラウマになるような経験や、つらい出来事を経験したことがある人も、共感疲れを招きやすいです。
ニュースを見たり、他人の経験を聞いたりした際に、無意識のうちに自身の経験と感情を重ね合わせてしまうのです。深く共感しすぎてしまうことで、心理的な疲労を感じやすくなります。
共感疲れにならないための予防法
共感疲れを防ぐためには、普段から自分の心の状況を把握し、意識的に負担を軽減する工夫を取り入れることが大切です。ここでは、日常で簡単に取り入れられる方法をお伝えします。
1.情報のコントロールとデジタルデトックス
テレビのニュースなど継続的に流れる情報は、予期せぬタイミングで心に影響を与えることがあります。日常から、ながら視聴をやめる、デジタルデバイスやメディアに触れるタイミングを決めるなど、自分で情報をコントロールすることが重要です。
仕事や情報源から一時的に離れ、スマートフォンやSNSを控える、デジタルデトックスの時間を作ることも有効です。
2.自分の気持ちを信頼できる人に話す
自分の感情を抱え込まずに言葉にすることが大切です。1人でつらい気持ちを抱え込まず、今感じている不安や悩みを信頼できる人に話すことで、心の中の負担を手放すことにつながります。
他人に話をするという行動は安心感を得られ、また、言葉にすることで考えが整理される効果も期待できます。
3.心身をリセットする自分だけの時間と睡眠
共感疲れを起こしやすい人は他人のことを考えすぎる傾向があるため、誰とも関わらず自分の好きなことや趣味に没頭する時間、心身をリセットできる自分だけの時間を持つことが必要です。
この際、しっかりとした睡眠をとることも大切です。また、リラクセーション効果の高いアロマテラピー、呼吸法などを積極的に取り入れて心身をほぐすことも有効です。
4.思考を意識的にポジティブに切り替える習慣
ネガティブなことに囚われすぎないよう、意識的に思考をポジティブに切り替える習慣をつけましょう。その日あった「良いこと」「感謝できること」を日記などに書き出すことで、自分の思考を整理し、共感疲れを予防することができます。
文・構成/藤野綾子
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