近年注目される、若手社員の企業に対するエンゲージメント。企業の将来を担う存在である彼らが、ビジョン・方針に自己実現を重ね合わせ、企業への貢献意欲を持ち続けられるかどうかは、企業全体の活力や生産性に大きく影響する。
しかし実際には、若手社員が職場に適応する過程で、様々な壁に直面し、企業への貢献意欲の低下や離職意向の高まりにつながることもある。
そこでALL DIFFERENTは今回、社会人1~4年目の若手社員1,793人を対象にした「エンゲージメントの実態」に関する調査結果を発表した。
本調査では、若手社員が企業に対して感じる貢献意欲や愛着、すなわち「従業員エンゲージメント」に着目し、エンゲージメントの構成要素の1つである「会社で働くことに対する誇り」の実態を、様々な観点から明らかにしている。
58.2%の若手社員が、勤務先企業に「誇り」を実感。社会人歴が長くなるにつれて減少傾向
はじめに、社会人1~4年目の若手社員に対して、勤務先企業で働いていることに「誇り」を感じるか質問した。結果、「感じる」と回答した割合は18.6%、「やや感じる」と回答した割合は39.6%となり、58.2%の若手社員が勤務先企業に「誇り」を感じていることがわかった(図1)。
勤務先企業で働くことへの「誇り」を、社会人1~4年目の社会人歴別に分析した。
結果、「誇り」を感じる(「感じる」「やや感じる」の合計)割合が、社会人1年目社員では68.0%、社会人2年目社員では61.2%、社会人3年目社員では58.6%、社会人4年目社員では49.2%となり、社会人歴が長くなるにつれて、勤務先企業で働いていることに「誇り」を感じる割合が減少することがわかった(図2)。
勤務先企業で働くことに「誇り」を感じる人ほど、勤務先で「働き続けたい」と思う傾向
次に、勤務先企業で働くことへの「誇り」と「勤続意向」の関係性を調査した。
結果、勤務先企業で働くことへ誇りを「感じる」と回答した人のうち、勤務先企業で働き続けたいと「思う」と回答した割合は57.1%となった。「どちらかといえば思う」(33.9%)と回答した割合も含めると、勤務先企業で働くことに「誇り」を感じる人の9割以上が勤務先企業で働き続けたいと感じることがわかった。
一方、勤務先企業への誇りを「感じない」と回答した人のうち、勤務先企業で働き続けたいと「思う」と回答した割合は3.3%となり、働き続けたいと「思わない」と回答した割合は69.3%となった。
勤務先企業への誇りを「やや感じる」「あまり感じない」の結果も鑑みると、勤務先企業で働くことへの「誇り」と「勤続意向」には、相関の関係があることがわかった(図3)。
勤務先企業で働くことに「誇り」を感じる人ほど、組織への貢献を自ら考え、実行している傾向
勤務先企業で働くことへの「誇り」と「主体性の発揮」の関係性を調査した。「主体性の発揮」では、組織への貢献へ主体的な行動をしているかという質問*に対して、「している」「ややしている」「あまりしていない」「していない」の4段階の評価で回答してもらった。
*実際のアンケートでは「自身の業務に加えて、+αの行動として、上司・先輩・後輩など組織のメンバーに貢献できることを自ら考え、実行しているか」と質問
結果、勤務先企業で働くことへの誇りを「感じる」と回答した人のうち、組織への貢献行動を「している」と回答した割合は46.3%、「ややしている」と回答した割合は38.6%となった。勤務先企業で働くことに「誇り」を感じる若手社員の8割以上が、組織に貢献できることを自ら考え、実行していることがわかる。
一方、勤務先企業で働くことへの誇りを「感じない」と回答した人のうち、組織への貢献行動を「している」と回答した人は4.3%、「していない」と回答した割合は51.7%となった。
勤務先企業で働くことへの誇りを「やや感じる」「あまり感じない」の結果も鑑みると、勤務先企業で働くことへの「誇り」と、組織への「主体性の発揮」には、相関の関係があることがわかった(図4)。
勤務先企業で働くことに「誇り」を感じる人ほど、知識・スキル強化への努力をする傾向
勤務先企業で働くことへの「誇り」と「知識・スキル強化」の関係性を調査した。「知識・スキル強化」では、知識・スキルを強化する努力をしているかという質問*に対して、「している」「ややしている」「あまりしていない」「していない」の4段階評価で回答してもらった。
*実際のアンケートでは「自身の業務につながる知識・スキルを強化する努力をしていますか」と質問
結果、勤務先企業で働くことへの誇りを「感じる」と回答した人のうち、知識・スキル強化への努力を「している」と回答した割合は40.5%、「ややしている」と回答した割合は47.5%となった。勤務先企業で働くことへの「誇り」を感じる若手社員の約9割が、知識・スキルを強化するために努力していることがわかる。
一方、勤務先企業で働くことへの誇りを「感じない」と回答した人のうち、知識・スキル強化への努力を「している」と回答した人は1割も満たず、「していない」と回答した割合は56.7%、「あまりしていない」と回答した割合は29.7%となった。
勤務先企業で働くことへの誇りを「やや感じる」「あまり感じない」の結果も鑑みると、勤務先企業で働くことへの「誇り」と自身の業務につながる知識・スキルを強化するための努力には、相関の関係があることがわかった(図5)。
安心して発言できる雰囲気や環境が整っている職場ほど、勤続先企業へ「誇り」を感じる傾向
最後に、「職場の雰囲気」と勤務先企業で働くことへの「誇り」の関係性を調査した。「職場の雰囲気」では、安心して発言できる雰囲気や環境があるかという質問*に対して「感じる」「やや感じる」「あまり感じない」「感じない」の4段階評価で回答してもらった。
*実際のアンケートでは「安心して自分の考えを伝えられる雰囲気や環境が整っていると感じますか」と質問
結果、勤務先企業では安心して自分の考えを伝えられる雰囲気や環境が整っていると「感じる」と回答した人のうち、勤務先企業への誇りを「感じる」と回答した割合は56.3%、「やや感じる」と回答した割合は33.0%となった。
一方、勤務先企業では安心して自分の考えを伝えられる雰囲気や環境が整っていると「感じない」と回答した人のうち、勤務先企業への誇りを「感じる」と回答した人は1割に満たない結果となった。また、誇りを「感じない」と回答した割合は58.9%、「あまり感じない」と回答した割合は25.4%となった。
安心して自分の考えを伝えられる雰囲気や環境が整っている職場では、勤務先企業への「誇り」を感じる傾向にあることがわかった(図6)。
考察 勤務先企業への“誇り”を育み、若手社員のエンゲージメントを高めるコツ
本調査では、勤務先企業に対する「誇り」が、若手社員の知識・スキル強化への意欲や主体性の発揮度合い、そして勤続意向と関連している可能性が示唆されました。
若手社員が勤務先企業に「誇り」を持つことは、組織全体に好ましい影響を及ぼします。例えば、組織を「もっと良くしたい」「改善したい」という気持ちが自然と芽生え、業務プロセスの見直しや職場環境の改善が進んだり、また、新しい業務に積極的に取り組み、各社員の能力・経験の幅が拡大するなど、組織の活性化と持続的な成長につながる好循環が生まれます。
社員が勤務先企業に対して「誇り」を持てるようになるための取り組みには様々なものがあります。組織開発・人材育成の領域においては、「自分の行動が、企業の成長・拡大に寄与できている」と感じられる取り組みを行うことで、勤務先企業への誇りにつながるでしょう。具体的には次のような取り組みが有効です。
(1)意見を言い合える組織風土・文化の醸成
若手社員が意見を発信しやすくなるためには、制度面と風土面の両面からの支援が求められます。制度面では、改善提案制度や年次別の意見収集などが意見を引き出す仕組みとして有効です。一方で風土面では、上司や先輩が日常的に若手社員の意見を傾聴し、対話することで信頼関係を構築することが重要です。
(2)組織貢献への期待の伝達と、組織貢献への自己認識を促す活動
若手社員は経験が浅いため、自分の業務が組織にどう貢献しているかを把握しづらい傾向があります。1on1や評価面談の場などを活用し、組織からの期待を明確に伝えたり、表彰制度や成果共有会などで組織への貢献を可視化・称賛したりすることが効果的です。
(3)学ぶ意欲を高めるようなフィードバックの実施
前述した1on1や評価面談の場で期待の伝達をする際に、どのようなマインド・知識・スキルを身につけると組織貢献につながるかを伝えることで、成長への意欲を高めるとともに、意見や提案の質を高め、正しい方向へと成長を導くことができるようになります。
社員が自社に誇りを持てる環境を整えることは、組織の持続的な成長と人材定着の基盤創りにつながるといえるでしょう。
ALL DIFFERENT株式会社
事業開発推進本部 コンテンツマネジメント部 ユニットリーダー
宮澤 光輝(みやざわ・こうき)氏
東京大学卒業後、ALL DIFFERENT (旧トーマツ イノベーション/ラーニングエージェンシー)に入社。コンサルタントと研修講師を兼務し、サービスの企画・開発、研修講師育成、中堅~大企業に対して研修の企画・提案および実施などをはじめとした人材育成支援に従事。複数の全社プロジェクトでプロジェクトリーダーを担当。現在はサービスの企画・開発チームのリーダーとして、対面研修、オンライン研修などの新サービスの企画・開発、研修講師育成を担う。研修講師としては公開講座や企業内研修等で、OJT指導者向け、管理職向けの研修を中心に年間100回以上実施。
構成/こじへい







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