従来品とは明確に異なることを示すボトルデザイン
『ReWEAR』は衣類をよみがえらせることだけではなく、香りや仕上がりにもこだわった。
香りは華やかさや衣類が柔らかくなったことを実感してもらいやすくするため、ラグジュアリーブランドの香水を手掛けるブランドの調香師と検討。多くの候補が挙がったが、絞り込みをかけていく中で最後まで残ったのが、現在販売されている〈クラシックローズ&ムスク〉と〈フレッシュシトラス&グリーン〉の2つになる。
仕上がりについては、フワフワになることがより実感できるようにしただけではなく、『セルラーゼ』が毛玉や毛羽立ちを除去することにより表面がなめらかになる。表面がなめらかになることで、花粉や大気中の汚れが付着しにくくなることが期待できる。
特徴的なスクエアボトルもこだわってつくったものだった。洗濯洗剤や柔軟剤での採用例が決して多くないスクエアボトルを採用した経緯は大きく2つある。小林さんは次のように話す。
「デンマーク産の酵素を使っているので北欧風デザインにあやかったのと、従来の柔軟剤とは異なることを見た目から印象づけるためにスクエアボトルを採用しました」
ヘアケアブランドのノウハウを生かし季節限定品を発売
楽天市場での先行発売では、発売開始から数時間で完売を記録したほど。予想していた以上に反響が高かったことから、お気に入りの服の寿命を伸ばしたいことのニーズは高いと判断された。
対象ユーザーとしていたおしゃれで服にこだわりのある人たちに訴求するため、強みとしているSNSマーケティングでは、ファッション関係のインフルエンサーや古着系ユーチューバーといったファッション感度の高い人たちを囲い込むことにした。可能な限りこうした人たちにサンプリングし、SNSでの発信を強化。とくにInstagramやTikTokでビフォー/アフターの比較や香りの良さを訴求することに注力した。同社からサンプルを送っていないインフルエンサーも自発的に、ビフォー/アフターに関する発信を行なったほどだった。
ただ、時期によって訴求点は変わった。ECサイトでの先行販売を実施した頃はビフォー/アフターを打ち出し、最大の特徴である服がよみがえることを訴求したが、全国販売が始まった4月以降になると、主に香りの良さを訴求。柔軟剤として重視される点を強調するようにした。
『ReWEAR』は小売店からの期待も高く売場を活性化する起爆剤として迎えられた。売場の活性化もあって取り組んだのが、季節限定品の投入。ヘアケアブランドで培ったノウハウを活用した。
まず夏向けの〈ホワイトシャルドネ&ダージリンティー〉の香りを7月にECサイト、8月にドラッグストアと総合スーパーにて数量限定で発売(現在は販売終了)。楽天市場では4日間で売り切れになったほどで、小林さんによれば「定番化を望む声を多くいただいております」という。10月には秋冬向けに〈チェリーヴィンテージ&シダーウッド〉の香りをECサイトにて数量限定で発売。ドラッグスストアと総合スーパーでも12月に数量限定で発売される予定だ。
取材からわかった『ReWEAR』のヒット要因3
1.潜在ニーズを掘り起こした
衣類は洗濯を重ねていくうちに傷んでしまうが、これを使えば洗うことで毛玉や毛羽立ちが除去される。商品の登場でお気入りの服を長く大切に着たいという潜在ニーズが顕在化され、大きな支持が獲得できた。
2.機能的価値と情緒的価値の両立
衣類の再生で高い機能的価値を提供する一方、情緒的価値の提供にも注力した。所有欲をかき立てるデザイン性の高いボトルや洗濯が楽しくなる香りで情緒に訴え、手に取ってもらうきっかけをつくった。
3.巧みなSNSマーケティング
ファッション感度の高いインフルエンサーやユーチューバーを囲い込みSNSでの発信を強化。ビフォー/アフターを訴求するだけではなく、時期によっては香りを訴求するなど、SNS上で注目される機会をつくり続けた。
ユーザーの声としては「毛羽立ちが少なくなった」「フワフワ感が違う」「香りがめちゃくちゃイイ」と衣類の再生機能と柔軟剤の基本的な機能の両方を評価する声が多い。「おしゃれ着を洗う時に使っています」という声も聞かれる。生活者の潜在ニーズやSDGsのような社会が求めていることに対応することができれば、柔軟剤のように競争が厳しい市場に再参入しても支持を得られることを、『ReWEAR』は示している。
取材・文/大沢裕司
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