アプリやAIチャットなど顧客サービスもAIによって進化
OpenAIとの契約締結によって、顧客サービスにもAIを活用した施策を進めていく。
〇パーソナライズ提案を行うAIコンシェルジュ in MUFG Apps
MUFGグループ各社のアプリに最新のAIを搭載し、質問への回答にとどまらず、利用するほどにパーソナライズされたサポートを行う「AIコンシェルジュ」を実装していく。将来的には各アプリのデータを統合し、AIが取引全体を把握したうえで、どのアプリからも的確な提案が可能となる。第一段階として、来年度に開業予定のデジタルバンクへの実装を予定している。
〇各種サービス申込みを支援する申込専用AIチャット「エムットクイックスタート」
MUFGの特設ページに設けたAIレコメンデーションとAIチャットを通じて、MUFG各社の口座開設やサービスの申し込みを丸ごとサポートするサービスを実装。顧客サービスブランド「エムット」の様々なサービスの中から、顧客の要望にあった“サービス”を案内し、お得なプログラムのレコメンドも含めて、初めての人にもわかりやすくエムットをスタートできる仕組みを構築していく。
〇ChatGPTから家計管理などを可能にするApps in ChatGPT連携
OpenAIの「Apps in ChatGPT」への連携を検討していく。ChatGPTの仕組みにMUFG各社のアプリ等を接続し、顧客の状況に応じた家計管理や資産運用の相談をChatGPTとの対話の流れの中で自然に行える、新しい金融体験の提供を目指す。
〇ChatGPT上で決済が可能になるAgentic Commerceへの対応
ChatGPT上で商品の検索から購入まで完結できるサービスのコマース規格(Agentic Commerce Protocol(エージェンティック コマース プロトコル)に対応し、ChatGPT上で販売業者が連携する決済手段に、MUFGの各種決済サービスの実装を目指していく。
「これまでは金融サービスの取引を行う場合、銀行のアプリなどに入っていただかなくてはいけない状況でしたが、日常的にChatGPTで会話する中で、金融に関しての関心や、聞いてみたいこと、取引したいことなど、ChatGPTの対話の流れの中から金融サービスに入っていけることで、お客様のタッチポイントが劇的に拡大するのではないかと考えています」(MUFG 山本氏)
セキュリティとデータプライバシーに関しては、データ連携は顧客の同意を前提とし、万全のセキュリティ対策を講じる。取引など更新される情報処理はMUFGのアプリ内で完結し、中継サーバーでは個人情報をマスキングする。また、 OpenAIも顧客データをモデル学習に使用しないことを明言している。
ハルシネーション(生成AIが事実に基づかない、もっともらしい嘘や誤った情報を生成する現象)対策として、世界中の導入実績で培ったノウハウを活用し、正確な情報提供を目指すと両社は話す。
サービス導入の具体的な時期は未定だが、親和性の高いデジタルバンクからAI実装を進める計画だという。2026年度後半に、グループ共通のMUFGポイントやロイヤリティプログラムを含むプラットフォームの刷新を予定しており、富裕層向け会員サービス「エクセレントクラブ」の全面リニューアル、デジタル相続プラットフォームのリリース、新デジタルバンクの開業を予定しており、これらに呼応して順次AIの導入を進めていく。
【AJの読み】AI導入によって顧客サービスだけでなく人材活用も変化
OpenAIが10月に発表した「Apps in ChatGPT」は、ChatGPT内で既存のサービスやアプリを利用できる機能で、普段使っているサービスやアプリを、ChatGPTから直接使えるようになるため、様々な企業が連携していくことが期待される。
「我々のステップとしては、まずはアメリカ英語圏でApp in ChatGPTのロールアウトを行い、その後違う言語に対して進めていく予定です。具体的な時期というのは今現段階では申し上げられませんが、日本はビジネス面でいうとアメリカに次いで今2番目に大きな国ですので、優先順位を高められる努力を日本法人で行いながら、1日も早い日本でのロールアウトを実現していきたいと考えています」(OpenAI Japan 長﨑氏)
MUFGは金融業では初となるOpenAIとの連携締結により、MUFGをAIネイティブな企業へ変革していくと同時に、OpenAIの最新技術をタイムリーにサービスへ導入し、AIの技術進化をサービス革新に直結させると意気込む。
顧客側からしても、日常的に使うサービスや、お金の相談をChatGPTとの会話の中で学んでもらうことで、アプリを使ってより簡単にできる利便性が期待できる。
一方で、AI導入により行員が減少し、高齢者などデジタルに疎い人にとっては、対面での対応がますます縮小されていくのではないかと懸念もある。
「AIが進化しても、高齢者層を中心に対面サービスのニーズは依然として高い価値を持つと認識しています。少子高齢化による労働力不足をAIで補うことが主目的であり、AI導入による人員余剰の懸念は小さいと考えます。AIは行員のスキルを拡張し、新規参入者の学習期間を短縮することができるので、これによりキャリアチェンジやリスキリングが促進されると期待しています」(MUFG 山本氏)
取材・文/阿部純子







DIME MAGAZINE














