育てる喜びと知的好奇心を刺激する──。
バンダイの新作たまごっち『Tamagotchi Paradise』は、宇宙から細胞までを旅するダイヤル機能を搭載し、5万種以上に進化するたまごっちを実現。開発者たちは「生物の進化」や「本能に触れる楽しさ」を追求し、子どもたちの心に届く玩具を目指した。
30年の歴史を持つたまごっちが、今なぜ世界中で支持されているのか。その理由と挑戦の裏側、そして大ヒットの秘密について、DIME本誌でも紹介したインタビューを、再編集して特別に公開する。
バンダイ『Tamagotchi Paradise』(たまごっちパラダイス)

シリーズ史上初の「ダイヤル機能」を搭載し、宇宙から細胞まで移動できるように。実在する動物の成長にヒントを得て、環境やお世話次第で5万種類以上のたまごっちに成長。全3色、各6380円。
話を聞いた〝たまごっち企画・開発チーム〟

辻 太郎(つじ・たろう/中央)
常務取締役。CTO(チーフたまごっちオフィサー)としてパーパスを策定、青柳と岡本の開発を見守った。
青柳知里(あおやぎ・ちさと/左)
トイ事業部 企画1チーム アシスタントマネージャー。生物多様性や学びといったトレンドを商品に結びつけた。
岡本有莉(おかもと・ゆうり/右)
トイ事業部 企画1チーム。動物好きの原体験をもとに「生物の進化の必然性」を取り入れる発想を提案した。
「育てる本能」に刺さった初代たまごっちの衝撃
「人の本能に触れる何かを持ったものは、世代も国境も越えてヒットする」
1996年に初代「たまごっち」を開発した本郷武一の言葉だ。彼はこんな話もしている。
「ものや情報やサービスは溢れている。人の心にチクッと刺さる部分があるから埋もれない」

たまごっちはたしかにそんな玩具だった。「育てる」という本能に触れ、世話を怠ると見た目がイケてない「おやじっち」になったり、時には死んでしまったりするようなチクッとくる部分もあった。ヒットは社会現象化し、発売約2年半で全世界累計約4000万個を販売。青柳知里が振り返る。
「たまごっちが死ぬと、子どもが悲しんで土に埋葬してしまうこともあったと聞いています。それくらい、人の心にちゃんと届く玩具だったんだと思います」
危機もあった。爆発的なブームになると、それが去ったあと「オワコン(終わったコンテンツ)」感が漂う。実際、たまごっちも一時期はそうなったが、バンダイは2004年に『かえってきた!たまごっちプラス』を出し、シリーズ化に成功する。
当時の開発陣は「携帯のアプリにしたら?」「目覚まし時計機能など実用性があるものは?」とも考えた。しかし調査の感触はイマイチで、形も元のままのたまご形が望まれ、グラフィックの進化も求められていなかった。そんな中、開発陣を導いたのは、本郷の「本能に触れる何か」という言葉だった。彼らはほかのたまごっちと仲良くなれる赤外線通信機能を搭載、「誰かと繋がる」という人間の根源的欲求にコミットすることでたまごっちを甦えらせたのだった。
その後、組織も進化した。CTO(チーフたまごっちオフィサー)という役職が設定されたのだ。現在のCTO・辻太郎常務取締役の最初の仕事が興味深い。

「たまごっちのパーパスを定めました。『世話のやけるよろこびを世界中の人々に。』というものです。その後、たまごっちはアニメ化に挑戦するなど様々な進化を遂げてきましたが、芯がブレてはいけないと考えたのです」
世話を焼くことは喜びだったのだ。玩具の開発は、担当者に「人間は何を楽しいと感じるのか」という難問を突き付けるのかもしれない。そして2024年、この難問と向き合ったのが、海外市場で知見を積んできた青柳と、関連会社からバンダイへと所属は変わりつつも、長くたまごっちと向き合ってきた岡本有莉だった。
時代に合わせて進化を続ける『たまごっち』の変遷
1996年『たまごっち』

日本中で大ブームに
モノクロのドット液晶画面、かつ通信機能もなかったが大人気に。
2004年『かえってきた!たまごっちプラス』

赤外線通信機能搭載
赤外線通信機能を搭載。結婚して子どもが誕生するなどの進化が実現。
2008年『たまごっちプラスカラー』

ついにカラーになった
カラー液晶を採用。季節・時間・天気も表現。リフォームも可能に。
2018年『たまごっちみーつ』

アプリ連携が可能に
スマホアプリと連携、全国のユーザーとの交流を楽しめるように。
2025年『Tamagotchi Paradise』

ダイヤル機能追加
店頭の「Lab Tama」端末との通信で限定アイテムの入手も可能。
芯を持ちつつ時代に合わせて変わりつづけてきました








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