1997年に初代が登場したスバルの正統派SUV、フォレスターが2025年春、6代目の新型に生まれ変わった。レガシイ・アウトバックが国内市場から消滅したことで、現時点でのスバルの国内モデルのフラッグシップモデルとなるのはフォレスターということになる。
もはや躊躇せずにいられる燃費性能を達成
デザインから開発をスタートしたという新型フォレスターは引き続きスバルグローバプラットフォーム+インナーフレーム構造を採用し、駆動方式はもちろん、全車、スバル自慢のシンメトリカルAWD。グレードはプレミアム、X-BREAK、SPORTの3タイプが用意される。
なお、新型フォレスターはグッドデザインアワード2025を獲得している。デザインからスタートしたという開発陣にとって、これは格別にうれしい受賞ではないか。
新型フォレスター最大の注目点は、すでにクロストレックに搭載されていたトヨタの2モーターハイブリッドシステム、THSをベースにスバルがAWDとともに組み合わせた2.5L水平対向エンジンによるストロングハイブリッド(エンジン160ps、21.3kg-m。モーター119ps、27.5kg-m)をプレミアムとX-BREAKグレードに採用したことだ。
つまり、スバルは走りやアイサイトに象徴される安全性能は文句なしだが、燃費がちょっと・・・と感じていた人も、もはや躊躇せずにいられる燃費性能を達成したことになる。具体的には、ストロングハイブリッドモデルのWLTCモード燃費は、先代マイルドハイブリッドモデルの14.0km/Lに対して約25%も向上した(18インチタイヤ装着車比較)18.8km/L!!
しかも、燃料タンクを48Lから63Lに増やしたことで1000kmオーバーの無給油走行まで可能にしているのだから、頼もしすぎる。
一方、SPORTグレードとして、1.8L直噴ターボ”DIT”ガソリンターボモデルも用意(177ps、30.6kg-m)。こちらのWLTCモード燃費は13.6km/Lだが、ストロングハイブリッドモデルに対しておよそ100kg軽量かつ、トルクフルな水平対向ターボエンジン搭載によって、正統派SUVにして軽快感ある走りを特徴としている。
この@DIMEでは袖ケ浦フォレストレースウェイでのプロトタイプ試乗記、浜名湖を往復した“わんこと行くクルマ旅”でも新型フォレスターの概要、試乗記をお届けしているが、今回は飛行機で北海道・旭川に飛び、旭川空港からスバル研究実験センター美深試験場までの約125キロの行程を、新型フォレスターのストロングハイブリッドモデルとガソリンターボの2台を乗り換えつつ、走破するというプログラムに参加した。
ここで国内自動車メーカーの試験場として最北端に位置するスバル研究実験センター美深試験場について説明すると、1995年に開設され、東京ドーム77個分に相当する362ha敷地面積を誇る、冬季は低温環境+氷雪路面における自動車の各性能評価、夏季は高度運転支援機能の評価、各種走行評価を行う試験場になっている。
試験場内には冬季のみのハンドリング路、長さ1km以上の直線路を持つ総合路、融雪試験路、外筒信号機が設置された、高度運転支援機能や自動運転の評価を行う市街地路、メイン周回路、登坂路、多重車線炉、インターチェンジ・サービスエリア模擬エリアなどがある、まさに北海道の環境を生かした一大試験場なのである。
スバルのクルマは降雪地帯でも使い勝手が良く、安心して走れる…という雪国に密着したクルマづくりがここで行われているわけだ。
雪道で感じた“スバルに守られている”という安心感
さて、11月某日、北海道・旭川空港に立ち降りれば、東京は初冬という季節感なのだが、この地はすでに雪国、一面、雪に覆われ、駐車場に止まっているクルマたちは雪の帽子を被っていた。気温は零下を示していた。
現地の人からすれば、まだ冬の始まりだろうが、我々都会人にとっては極寒であり(羽田空港の朝は気温16度)、ダウンコートを着用しての旭川訪問であった。
最初に乗り込んだのは、SPORT EXグレード、つまり1.8L直噴ターボエンジンを搭載する、18インチタイヤ装着の、ハーマンガードンサウンドシステム、アイサイトXなどを標準装備するフォレスターだった。
初めて走る行程ながら、標準装備の11.6インチの縦型大型ディスプレーによるナビ機能・案内があるから安心だ。
粉雪降る白銀の世界を走り始めてまず感じたのは、フォレスターに乗り込む際、ダウンジャケットを脱いだのだが、まるでそのように、厚手のコートを脱いだときのような軽やかな気分にさせる走行感覚、そして18インチのスタッドレスタイヤを履いた、極上ともいえる乗り心地の良さ、さらに滑りやすい路面で威力を発揮するアクセルコントロールのしやすさであった。市街地を抜け、高速道路に入ると、雪道に慣れた地元ドライバーの速さが目立つ。さすがである。
が、都会暮らし、めったに雪道を走らないボクでも、フォレスターは安心感、安定感たっぷりにシャーベット状になった路面をまったく不安なく、地元ドライバーに負けない速度で快適に走ることができたのである。
そうした安心感はスバルのシンメトリカルAWDの高度な制御はもちろん、全方向の視界の良さによって得られたことも実感できた。
途中の道の駅からは、スバル研究実験センター美深試験場を目指し、ストロングハイブリッドのX-BREAK S:HEV EXに乗り換えた。
実は、今年の夏、フォレスターのストロングハイブリッドモデルで東京~浜名湖間往復約600kmを走破したことがあるのだが、運転のしやすさ、安定感、安心感、そして乗り心地の良さ(19インチオールシーズンタイヤ装着車)と車内の静かさによって、想定していた運転疲労はほぼ皆無だったことを覚えている。
ここでも、ストロングハイブリッドならではの出足、中間加速におけるスムーズでトルキーな走行性能が際立ち、もちろん、車内の静かさは高級サルーンに匹敵するレベル。スタッドレスタイヤ×雪国の荒れた路面でも快適感はもう絶品だった。
山間部の樹氷に囲まれた狭い道、そこでのすれ違い、カーブ、撮影のためのUターンなどでも、0次安全の要と言われる全方向の視界の良さ、死角のなさと、先代から維持した最小回転半径5.4mの小回り性によって、スイスイと不安なく走り抜けることができたのである。
今回は主に滑りやすい路面の下りやスタックからの脱出で威力を発揮するXモードを使うような場面には遭遇しなかったが、万一、そうした場面でもスバルのAWD、Xモードが大いに頼りになるというわけだ(試験場では実体験した)。

スバルのクルマが雪国でも絶大なる信頼を得ていて、雪道に強いことなど、苗場のスキー場で「ゲレンデタクシー」というスバル車でゲレンデを走り送迎するイベントを行っていることからも百も承知だが、今回、改めて感じたのは、ナビがあるとはいえ、旭川の初めて走る雪道を延々とドライブしても、精神的、肉体的な疲労が、”スバルに守られている”という実感もあって、まったくなかったことだ。
おかげでストレスフリーのまま、キタキツネと遭遇しながら、旭川空港から約125キロ離れたスバル研究実験センター美深試験場に無事、到着することができたのだった。
その後、スバル研究実験センター美深試験場で体験した「総合安全体感試乗in道北」の様子については、改めて報告させていただきたい。つづく


文/青山尚暉







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