政府による2025年6月の「骨太の方針」では、「実質賃金を毎年1%程度増加させる」方針が示されたが、近年は企業の賃上げに向けた支援が拡大している。
新しい取り組みとしては、物価の変動を受けて中小企業が不利な立場にならないようにする目的で、価格交渉促進月間が設置され、旧下請法を改正して法的な枠組みを強化する取引適正化法が2026年1月に施行される予定だ。
そんな中で、次世代経営コンサルタント集団のフォーバルが運営する中小企業のGDXに関する実態調査を行っている「フォーバルGDXリサーチ研究所」は、『BLUE REPORT 11月号』を2025年10月31日に発行した。
このリポートでは、実質的な賃上げ要請の対象となる中小企業側の賃上げがどの程度進んでいるのか、中小企業の賃上げ状況や取り組みによる効果、今後の方針などを調査している。
賃上げを実施している企業は66.3%
「賃上げ」の実施状況に関する調査では、「2025年1月以降に実施している」が15.4%、「2025年以前から実施している」が50.9%と、6割以上の企業が賃上げを行っていると回答した。
2024年7月から8月にかけて行った賃上げの実施状況を問う『ブルーレポート2024年9月号』の調査では、実施していると回答した企業は56.0%だったので賃上げを実施する企業は確実に増えているようだ。
賃上げ率のボリュームゾーンは「2%~3%未満」の18.6%
実際に賃上げを実施した企業の賃上げ率に関する調査では、もっとも多いボリュームゾーンは「2%~3%未満」の18.6%だった。それに「1%~2%未満」(18.1%)、「3%~4%未満」(14.6%)が続く形となった。
この調査では、1%から4%未満の範囲で賃上げを実施した企業が約半数だったが、「6%以上」の高い賃上げを実施した企業は10.1%で、業種別では建設業の割合がやや高い傾向があった。
働き方改革で建設業でも労働規制が強まり、昨今の資材・燃料・物流コストの上昇を背景に、見積価格の見直しによる値上げの一部を労務費に配分するなどの流れができつつある可能性もありそうだ。
賃上げ効果を実感している企業は42.2%
賃上げを実施した企業に対して、その効果と経営や従業員への影響と効果について質問すると、賃上げの効果に関しては「とても効果がある」、「ある程度効果がある」を合計しても4割程度で効果を感じている層は半数以下だった。
もっとも多い回答が「どちらともいえない」の34.0%で、まだ効果を見定めている企業も多そうだ。賃上げの効果について「とても効果がある」、「ある程度効果がある」と回答した企業に、賃上げによる経営や従業員への影響を追加調査すると、「従業員のモチベーションが向上した」がもっとも高く85.6%で、ほかの回答と比較しても圧倒的多数だった。
ほかにも「離職率が低下した」(17.1%)」や「生産性が向上した」(15.2%)も上位に挙がっており、離職率や生産性に一定の効果はあったようだ。
社会的要請である賃上げに応えるための原資確保が重要
このリポートでは、賃上げの実施率は約7割だったが、2024年7月から8月にかけて行った賃上げの実施状況の調査では、実施していると回答した企業は56.0%で、賃上げした企業は増えていた。一方で賃上げした企業では、その効果を感じたのが約4割で、最多の回答は「どちらともいえない」で現状では効果を見定めている状況が推察される。
社会的な要請として賃上げ圧力が高まる中で、賃上げに取り組む中小企業が増えたことは評価できる。物価高騰などの経済的に不安定な要素もある中で、賃上げのための原資を確保する方法は、今後の継続的な賃上げを進める上で重要といえそうだ。
https://gdx-research.com/report/bluereport202511/
構成/KUMU







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