今年10月に退職代行サービス大手の「モームリ」は、無資格で顧客を弁護士に紹介して報酬を得た疑いがあるとして、警視庁の家宅捜索を受けた。民間経営の代行サービスの多くは、弁護士の監修はあるが、東京弁護士会などから弁護士法が禁じる斡旋の非弁行為にあたるとして注意喚起がされており、最近では事業撤退もみられる状況だったという。
帝国データバンクは、保有する企業データベースのほか、開示資料、各口コミサイトなどから判明した主な「退職代行サービス」を展開する事業者についての調査・分析を行った「「退職代行サービス」動向調査」を公開した。帝国データバンクが保有する企業データベースや外部情報を基に集計した結果、退職代行サービス事業者は全国に少なくとも52法人あったという。約6割は民間経営で、弁護士法人による運営は3割強だった。利用料金の平均は2万9410円で、弁護士法人は約4万4700円、民間経営は約2万2500円だった。
なお、この記事での区分は、「弁護士法人=法人格などで判別できたもの」、「民間経営=株式会社、合同会社などで運営されているもの」、「組合など=法人としての特定が可能な労働組合など」としている。
主要な退職代行サービスの弁護士運営は約3割

本人に代わって退職したい意思を会社に伝える「退職代行サービス」を展開する事業者52法人のうち、約6割が株式会社など「民間経営」によるもので、法律を専門とする「弁護士法人」による運営は約3割だった。人手不足で転職がしやすくなったことに加えて、職場でのトラブル回避や退職までの期間短縮などで退職代行ニーズが高まっていることを背景に、退職代行サービス市場への参入は増加傾向にあったようだ。
帝国データバンクの保有する企業データベースのほか、開示情報などから主要な退職代行サービスの運営事業者をみると、法人が特定できた退職代行サービス事業者の設立年は、52法人のうち39法人(75.0%)が10年以内に設立された企業だった。5年以内では17法人で32.7%を占めており、もっとも設立数が多かった年は2018年、2019年。2021年の各6法人で、業歴の浅い事業者が多い印象だ。
利用料金は、各社の最低料金(着手金など含む、正社員、税込)の平均は2万9410円だった。弁護士法人による料金は約4万4700円で、民間経営による料金は約2万2500円だった。料金設定は、退職意向を電話で伝達するだけの簡素なサービスから退職代行の使用有無をアドバイスするコンシェルジュサービス、有給休暇の取得交渉や貸与品の返却など付帯サービスをオプションで設定するケースなどさまざまだが、弁護士と民間経営による料金設定は平均で約2倍の開きがあったという。
「モームリ」の件では、退職代行業務の「グレーゾーン」に改めて焦点が当たり、民間企業の参入で急成長が続いた業界の先行きに不安を抱かせた。退職代行サービスはトラブルを回避したい労働者から一定のニーズがあり、有用なサービスといえるので、その業態のあり方を再考する時期を迎えているとも言えそうだ。
https://www.tdb.co.jp/report/industry/20251024-taisyoku25y
構成/KUMU







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