2025年は2年連続で高水準の賃上げ率を実現して、多くの企業が給与引き上げを行った。だが実質賃金の改善は依然として進んでおらず、厚生労働省によると2025年9月時点で8か月連続のマイナスになっている。こうした状況下では、ビジネスパーソンも生活の「豊かさ」や「ゆとり」を実感できていない状況になるといえるだろう。
そうした歴史的賃上げ後も実質賃金の改善が進まない中で、ビジネスパーソンの“手取り実感”の変化を明らかにするために、食事補助サービス『Ticket Restaurant(チケットレストラン)』を提供するエデンレッドジャパンは、賃上げを実施した企業の経営層と賃上げのあった一般企業の従業員に「手取りに関する意識調査」を実施して結果を公開した。
この調査では、賃上げ後に「手取りが増えた」と実感している従業員は約1割で、大多数が「思ったほど増えていない」もしくは「むしろ減ったように感じる」と回答した。
約9割が給与は上がっても“手取りが増えた実感なし”
2025年度に昇給した従業員400名を対象に手取り実感について質問すると、手取りが増えたと実感している人は約1割で、約9割が手取り増加の実感がないと回答。6割以上が「思ったほど増えていない」と答えており、給与は上がったが生活改善につながるほどではないようだ。
額面の給与よりも“手取り”を意識するようになったと答えた人は全体の8割以上で、働く人の関心が“給与の総額”から“実際に使えるお金”へシフトしていることも浮き彫りになった。名目賃金の上昇だけでは生活実感が伴わないので、いかに手取りを増やすかが注目すべき課題になりつつあるようだ。
7割以上が手取りを守るための対策を実行
手取りを増やすために行っている取り組みでは、74.7%が何らかの対策を講じていると回答。最多は「食費の節約」(55.3%)で、それに「光熱費・通信費等の節約」(45.5%)が続き、食費や光熱費など「日常の支出」を抑える動きが顕著になっている結果だった。生活支出を見直しながら“手取りを守る”行動が、ビジネスパーソンに広がっているようだ。
給与アップ以外で会社に望む支援は福利厚生の拡充
会社に求める支援については、手取りを実質的に増やすために給与アップ以外で会社に望む支援を質問したが、それによれば3人にひとり(33.0%)が「福利厚生の拡充」と回答しており、従業員に“手取りを守る”行動が広がっているのと同様に所属企業にも“生活支出を減らす支援”への期待が高まっている。
経営層の9割は給与アップ以外の取り組みも重要視すると回答
企業の経営層に対しても従業員の手取りに関する意識を質問した。「従業員の手取り実感を高めるために、給与アップ以外の取り組みも重要だと思うか」という質問では、約9割の経営層が「そう思う」と回答している。
具体的な取り組みについては、8割以上の経営層が何らかの“実質手取りを増やすための対策”を実施していた。それによれば「福利厚生による生活支援」(49.0%)がもっとも多く、「インフレ手当・一時金などの支給」(37.5%)、「教育・スキルアップ投資」(24.5%)がそれに続いた。
定額減税やサラリーマン減税、社会保険料負担軽減を求める
全対象者600名に国の政策に対して賛成か反対か質問すると、定額減税やサラリーマン減税、社会保険料負担の軽減など働き手の手取りを実質的に増やす施策への賛同が9割を超えた。
高市新政権が掲げる「給付付き税額控除」や「ガソリン暫定税率の廃止」などのほかに、長年据え置かれてきた食事補助やマイカー通勤手当などの非課税限度額の引き上げの議論も政府内では検討されている。
こうした動きは、「賃上げ」だけでなく「実質手取り」を増やすための新たな政策フェーズに入ったことを意味しており、企業・個人・行政の三位一体で“実質的な豊かさ”を取り戻す機運が高まっているといえそうだ。
現状では、賃上げは進んだが「手取りが増えた実感がない」と感じる人が多く、ビジネスパーソンが抱える“実質的な豊かさの伸び悩み”が浮き彫りになったといえる。手取りを増やすことは、生活費の補填にとどまらず、働く喜びや企業への信頼感を育むきっかけにもなるはずだ。
この調査では、9割の企業が従業員の手取り増を意識しており、約半数の企業が賃上げ以外の取り組みとして福利厚生を活用していることも明らかになった。「給与を上げる」から「手取りを増やす」へ、働き手の実感に寄り添った支援策が企業に求められているようだ。
「ビジネスパーソンの手取りに関する意識調査」概要
調査対象:2025年度に賃上げを実施した企業の経営層200名/2025年度に賃上げを経験した従業員400名
調査期間:2025年10月22日~2025年10月24日
調査方法:WEBアンケート方式
調査主体:エデンレッドジャパン
※小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計が100%にならない場合があります。
出典:エデンレッドジャパン
構成/KUMU







DIME MAGAZINE

















