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「攻殻機動隊 S.A.C.」はなぜ時代を先取りできたのか?神山健治監督が語る製作秘話

2025.11.29

DIME2025年12月号では、映像化30周年を記念した『攻殻機動隊』を大特集! 原作者・士郎正宗氏への一問一答をはじめ、歴代監督、バトー役・大塚明夫氏とトグサ役・山寺宏一氏のスペシャル対談など、作品のキーパーソンたちが集結。AI時代の行方からリーダーシップ、組織運営まで、未来を先取りしてきた『攻殻機動隊』から、現代のビジネスパーソンが学ぶべきヒントを探っている。

今回は、なぜ『攻殻機動隊 S.A.C.』は時代を先取りしたのか?知られざる制作秘話を神山健治監督に聞いた。

シリーズ初のTVアニメ『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』(以下『S.A.C.』)。草薙素子と公安9課の新たな活躍を描き、人気を博す。デジタル環境の変化が起きていた当時に描かれたのは、来たるネット社会だった。

神山健治監督

神山健治監督

かみやま けんじ/1966年生まれ、埼玉県出身。背景・美術スタッフとしてキャリアを開始。1996年、Production I.Gにて、押井守主宰の押井塾に参加。代表作は『攻殻機動隊 S.A.C.』シリーズ、『東のエデン』など多数。2024年は『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズのスピンオフである劇場版アニメ『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』の監督を務めた。

〝140文字〟に可能性を感じネット社会を描くことを決めた

 神山健治監督は制作をスタートする際に「『S.A.C.』はお茶の間に向けた『攻殻機動隊』」という旨を、スタッフに伝えたそうだ。

「〝お茶の間〟はTVアニメだとより様々な層に見られるという意味です。なので『攻殻機動隊』という揺るぎない世界観をかみ砕き、難しい印象を払拭しようと。士郎先生の原作は素晴らしい先見の明がある。何に置き換えれば、そのおもしろさやすごさが伝わるのか。そう考えていて思いついたのが、素子たちを警察官として描き、理解しやすくすること。制作を始める当時は『踊る大捜査線』の映画がヒットしていた頃。公安9課の周辺で起こる事件を1話完結で解決して何らかの結論を出し、最後には落語のサゲ(オチ)のようになる構成で作っていきました」

 原作と映画『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』は草薙素子が公安9課を去って終幕する。そうではなく〝素子がどこにも行かない世界線〟とし、事件があるかぎり公安9課が事件解決に当たるのも『S.A.C.』ならではの設定だ。

「そうすれば、物語がずっと続けられると思ったんです。それと、1話完結の構成だけでなく、全26話を通じて描く壮大なテーマも入れたいと考えていました」

 それがまさに〝笑い男事件〟を核として描かれるネット社会だ。着想を得たのは、たまたま読んだとある記事だったという。

「当時は140文字のメールが携帯電話で送れるようになったばかり。そのことについて、サービスを提供する側である通信業界の偉い人が『テキストなんかで会話したい人がいるの?』と疑問を投げかけた……という内容でした。その人にとっては〝家単位〟だった電話が〝個人単位〟に変わり、いつでも直接話せるほうが価値があると考えたようです。けれど僕は、140文字のメールにこそ、すごく可能性を感じました。テキストは〝ながら〟でやりとりができる。これからの若者にとって、テキストを使った交流や情報交換が主流になると直感しました。偉い人の考え方とは逆で、むしろ『これは当たる!』と。テキストを送れるメールは個人にとって、ある種の〝身体拡張〟であり、自分の時間を何倍も増やせるようになる。これは爆発的に広まるに違いないと」

 神山監督が予見したようにテキストによるコミュニケーションはその後、際限なく広がっていった。

『S.A.C.』
『S.A.C.』の第9話では、ネットマスターが主宰するチャットルームで〝笑い男〟について様々な推理が展開される。ネット社会を描いた物語を象徴するエピソードのひとつだ。濃密な会話は20年以上たった今でも見応えがある。

リアルの世界だと、会話をする相手や機会を選べないことが多いですよね。しかも面と向かうと、相手との隔たりを感じることもある。けれどネットの世界には、良い側面と危ない側面が両方あるものの、壁はありません。そのような特性を持つネットの社会について『S.A.C.』のシリーズを通じて描こうと決めました」

 ネット社会を舞台に繰り広げられる登場人物たちの緻密な会話は、アニメ制作において珍しい脚本チームの体制を取った『S.A.C.』だからこそ生まれたものだ。

「全26話ありますから、個々の脚本家がやりたいことも入れつつ、主題がブレないように描こうと。『S.A.C.』の監督に起用された当初から、そう考えていました。特に、SFの場合は設定に〝穴〟があると、もう〝おしまい〟(=話のつじつまが合わず、SFファンに総スカンを食う)です。現実の未来を予測したり扱いにくかったりする内容を描く必要もある。なので〝ツッコミどころ〟を未然に見つけてつぶしておこうと。〝集合知〟で穴や破綻を防御しようという思いで脚本チームが全員参加するミーティングを重ねた結果、自分の意図したシーンが多く描けました」

 各話の脚本家(STAND ALONE)を尊重し、チーム(COMPLEX)として世界観を確固たるものにする。脚本作りの体制はまさに「STAND ALONE COMPLEX」というサブタイトルそのものだったわけだ。

「人間はひとりであり、集合体でもある。作品の概念を言い当てたすごくいいタイトルにできました。海外では当初『変なタイトル』と思われていましたが、今は『Cool!』だと評価していただいています」

 神山監督は『S.A.C.』を皮切りに、『攻殻機動隊 SAC_2045』まで約20年、『攻殻機動隊』シリーズを描きつづけてきた。その中で得たものも大きかったという。

『攻殻機動隊』シリーズの制作に携わることで、ある種の『目盛り』を手に入れたと思っています。作品に〝穴〟は作らずに〝隙〟をどれだけ作れるのか。つまり監督が視聴者に対し、どれだけ間口を開くのかという塩梅を調整できるようになったと自負しています」

時代を先取った『攻殻機動隊』の作品たち

2002年『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』

配信先:Netflix|Amazon Prime Video|U-NEXTほか

『S.A.C.』

西暦2030年、情報のネットワーク化が進んで電脳犯罪が複雑化した社会を舞台に、独立部隊公安9課(通称「攻殻機動隊」)に所属する草薙素子たちの活躍を描く。現代社会に通じる近未来の社会問題を多く取り扱う。全26話。

2004年『攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG』

配信先:Netflix|Amazon Prime Video|U-NEXTほか

『攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG』

『S.A.C.』のスタッフが再集結し、ストーリーコンセプトに押井守氏が参加。舞台は西暦2032年で「個別の11人」を名乗るテロリストや、素子と因縁のある男「クゼ」などが登場。難民や核などの問題についても描かれる。全26話。

2006年『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX Solid State Society』

配信先:Netflix|Amazon Prime Video|U-NEXTほか

『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX Solid State Society』

『S.A.C. SSS』と言われる長編作品。草薙素子が去った『2nd GIG』から2年後の西暦2034年、トグサ率いる〝新生公安9課〟を数々の難事件が同時多発的に襲う。123分。

2020年-2022年『攻殻機動隊 SAC_2045』

配信先:Netflix|Amazon Prime Video|U-NEXTほか

『攻殻機動隊 SAC_2045』

NETFLIXにて2020年にシーズン1(12話)、2022年にシーズン2(12話)が配信された、シリーズ初のフル3DCG作品。AIによって世界経済が破綻を迎えた2045年。各国で内戦やレイドが勃発する中、素子たちに招集がかかる。

取材・文/宇野なおみ 撮影/タナカヨシトモ 編集/田尻健二郎

© 士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊製作委員会
© 士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊2045製作委員会

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