失敗や困難に直面したとき、つい自分を責めてしまうことはありませんか。セルフコンパッションは、友人に向けるような優しさを自分自身にも向ける考え方です。自己批判のループを抜け、心の安定や回復力を高める助けになります。この記事では、その基礎と日常で使える実践方法を紹介します。
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日常生活で失敗や困難に直面したとき、「なんで自分はダメなんだ」と責めてしまったり、「もっと自分を大切にしたいのに」と感じたりすることはないでしょうか。
仕事や人間関係など、日々のプレッシャーの中で、つい「もっと頑張らなきゃ」と自分を追い詰めてしまうことは少なくありません。
そんなときに取り入れたいのが、「セルフコンパッション(自己への思いやり)」という考え方です。
これは、困難な状況や失敗に直面したときに、自分自身を厳しく責めるのではなく、親しい友人を思いやるような優しさを自分に向けるアプローチです。
本記事では、セルフコンパッションとは何か、そして日常生活ですぐに実践できる簡単な取り入れ方までをわかりやすく解説します。
セルフコンパッション(自己への思いやり)とは
セルフコンパッションとは、文字通り「自分自身に対して思いやりを持ち、慈しむ姿勢」のことです。
心理学者のクリスティン・ネフ教授によって提唱された概念で、困難な状況や失敗に直面したときに、自分を厳しく批判するのではなく、ありのままの自分を理解し、受け入れることを目指します。
「自分はダメだ」といった自己否定の感情を和らげ、健やかなメンタルを保つためのセルフケアであり、健やかなメンタルを保つための手段なのです。
■セルフコンパッションの重要性
私たちは失敗したり、困難に直面したりすると、しばしば自己批判に陥りがちです。しかし、自己批判は一時的な反省を促すかもしれませんが、長期的には意欲の低下やうつ状態を招くことがわかっています。
ここでセルフコンパッションの重要性があります。
セルフコンパッションは、失敗を“人間ならあること”と受け入れ、自分を励ますアプローチです。これにより、落ち込んだ状態から立ち直る力(レジリエンス=回復力)を引き出し、「次も頑張ろう」という前向きな意欲を育むことができます。これが、一時的な反省を促すだけの自己批判との大きな違いであり、セルフコンパッションが重要である理由の1つです。
また、自尊心とも異なります。自尊心は、他人との比較や成功体験によって高まることが多く、状況によって不安定になりがちです。それに対しセルフコンパッションは、自分が成功しているかどうかにかかわらず、ありのままの自分を思いやる安定した態度です。
つまりセルフコンパッションは、自分を甘やかすことではなく、不安定な自尊心や有害な自己批判から抜け出し、持続的な心の安定と回復力を保つために非常に重要なスキルであると言えます。
セルフコンパッションを取り入れる方法
セルフコンパッションは、特別なトレーニングがなくても、日常生活の中で意識的に取り入れることができます。ここでは、すぐに実践できる簡単な方法をいくつか紹介します。
1.自分に優しい言葉をかける
失敗したり落ち込んだりしたとき、頭の中で自分を責める声が聞こえたら、それを止めてみてください。そして、もし親しい友人が同じ状況にいたらどんな言葉をかけるかを想像し、その言葉を自分自身にかけてみます。
例えば、仕事でミスをしたときに「なんでこんなミスをするんだ、自分は本当にダメだ」という声が聞こえたら、「緊張したり、疲れていたのかもしれない。誰にだって間違いはあるよ。大丈夫」と言い換えてみましょう。
2.自分の感情に気づき、そのまま受け止める
イライラや不安、悲しみを感じたとき、その感情を否定したり、無理に消そうとしたりする必要はありません。「今、自分は辛いと感じているな」「不安なんだな」と、自分の現在の状態に優しく気づき、そのまま受け止める練習をします。これはマインドフルネスの考え方にも通じます。
例えば、電車が遅れてイライラしたときに「イライラしちゃダメだ」と抑圧するのではなく、「ああ、今イライラしている。仕方ないよね」と自分の感情を客観的に認めるだけでも十分です。
3.「自分だけではない」と思い出す
悩みや苦しみを感じると「こんなに辛いのは自分だけだ」と孤立感を深めがちです。しかし、そうした感情や失敗は、人間なら誰もが経験することだと考えましょう。
例えば、人間関係で悩んで「なぜ自分だけうまくいかないんだ」と考えそうになったら、「同じように悩んでいる人はたくさんいる。これは人として自然な悩みだ」と思うようにしてみてください。
4.自分をいたわる具体的な行動をとる
心が疲れていると感じたら、自分を物理的にいたわる行動も有効です。自分が心地よいと感じる、簡単なセルフケアを取り入れてみてください。
具体的には、温かいドリンクをゆっくり飲んだり、好きな音楽を聴いてリラックスしたり、お風呂にゆっくり浸かったり、肌触りの良い毛布にくるまるといったことが挙げられます。
5.優しいタッチを試してみる
不安や緊張を感じるとき、自分の体に優しく触れることで、脳の安心システムが作動すると言われています。
不安を感じたら、そっと自分の胸に手を当てたり、自分の腕を優しくなでたり、両手で頬を包み込んだりしてみることをおすすめします。
【参考】セルフ・コンパッションと「あるがまま」|公益社団法人日本心理学会
文・構成/藤野綾子
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