リモートワークと出社を組み合わせるハイブリッドワークが多くの企業で定着しました。
しかし、その一方で「コミュニケーションが取りづらい」「部下の評価が難しい」「チームの一体感が薄れた」といった新たな課題に直面し、解決策を模索している企業も少なくありません。
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なぜ、利便性が高いはずのハイブリッドワークが、組織の壁となってしまうのでしょうか。
本記事では、ハイブリッドワークを真に機能させ、成果と一体感を両立させるための具体的な「仕組みづくり」について、国内外の事例を交えながら解説します。
1. なぜZoomなどは「出社」へ回帰したのか
ハイブリッドワークの課題が浮き彫りになる中、象徴的な動きを見せた企業があります。
Web会議システムの代名詞ともいえるZoom社が、オフィス近くに住む従業員に対して週2日以上の出社(オフィス勤務)を求めたのです。リモートワークを支える企業が「リアル回帰」を選んだ事実は、多くのビジネスパーソンに衝撃を与えました。
また、米国の他のテクノロジー企業も同様の動きを見せています。例えば、Meta(メタ)やGoogle(グーグル)は週3日の出社を義務化し、その出社状況を人事評価に反映させる方針を示しています。
Amazon(アマゾン)に至っては、週5日のフル出社体制へ移行する方針を打ち出しており、「リアル回帰」の流れは顕著になっています。
これらの動きから、「時代の流れは、リモートからリアル(出社)へと戻っている」と考えるのは早計かもしれません。実際、出社体制に戻した企業でも、Web会議は依然として活発に利用されています。
ハイブリッドワークの導入により、オンライン会議が細分化・高頻度化し、結果として会議に費やされる時間が増加傾向にあるという調査結果もあります。
重要なのは、「リモートか、出社か」という二元論で考えることではありません。Zoom社などの決断は、「自社のビジネスにおいて、最も成果を出しやすい環境は何か」を追求した結果です。
一方で、ハイブリッドワークやフルリモート体制を維持しながら、高い生産性を実現している企業も数多く存在します。
では、その「差」はどこにあるのでしょうか。
2. 成果を出す組織に共通する「役割の明確化」
ハイブリッドワークがうまく機能している企業と、そうでない企業。その最大の分岐点は、「立ち位置」、すなわち「個々の役割が明確になっているか」という点に尽きます。
なぜ役割の明確化が重要なのでしょうか。それは、「役割」とは「責任範囲」と同義だからです。
自分の役割と責任範囲が明確であれば、それを果たすために何をすべきか、誰に報告し、誰と連携(相談)すべきかが自ずと明確になります。
疑問点や障害が発生すれば、責任を果たすために自発的な「報告・連絡・相談(報連相)」が行われるはずです。
しかし、役割が曖昧な組織ではどうでしょうか。
特にリモートワーク環境下では、お互いの業務が見えにくいため、「それは私の仕事だと思っていなかった」「誰かがやってくれるだろう」「聞いていないので対応できない」といった「言い訳」や責任の押し付け合いが発生しやすくなります。これは、責任範囲が曖昧であることの裏返しに他なりません。
例えば、あるプロジェクトで遅延が発生したとします。役割が曖昧なチームでは、「Aさんが資料をくれなかったから」「Bさんの確認が遅れたから」と、他責の理由が並びます。
しかし、役割が明確なチームでは、「私は〇日までに〇〇を仕上げる責任があったが、Aさんからのインプットが必要だった。
そのため、前日にリマインドし、当日の朝に状況を確認するべきだった」と、自責で物事を捉え、主体的な行動が生まれます。
管理職の皆さんは、ご自身のチームを振り返ってみてください。部下に業務の進捗をヒアリングした際、言い訳や、あるいは無言での回答が返ってくることはないでしょうか。
それは、部下の意欲の問題ではなく、管理職であるあなた、あるいは会社全体として、彼らの「役割と責任範囲」を明確に定義できていないという「管理不全」のシグナルかもしれません。







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