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世代間ギャップをプラスの力に変える!「リバースメンター制度」の成功戦略

2025.11.25

1. 【現状認識】なぜ今、若手社員が上司を教えるのか?VUCA時代と制度の効果

現代のビジネス環境は、「VUCA(ブーカ)時代」というキーワードで象徴されます。これは、変動性・不確実性・複雑性・曖昧性が支配する予測困難な状況です。この時代において、従来の経験則からの判断や過去の知識だけでは企業は生き残れず、むしろ、経営層やベテラン社員が持つ「過去の成功体験」が新しい時代への対応を阻害するリスクすらあります。そこで着目されるのがリバースメンター制度です。この制度は若手社員(メンター)が持つ最新の技術や消費者のリアルな感覚といった「時代の最前線の知見」を、組織の中枢や意思決定層に効率的に注入する、対VUCA戦略として位置づけられます。

この「強制的立場逆転」ともいえるメカニズムは大きく2つの効果があります。一つは、自ら新しい経験をしなくなった組織の意思決定層の古い知識をアップデートし、イノベーションを促進する最も良い効果。加えて2つ目は、自分の知識が経営に活かされる経験ができる若手社員の自己肯定感を高め、優秀な人材の定着率向上にも繋がります。

2. 【最大リスク回避】制度を潰すリスクと壁を乗り越える「ルール」

一方、リバースメンター制度の最大のリスクは識学のマネジメント理論でいう「位置の錯誤」です。すなわち組織内での上司部下の意識や、役割や権限の認識が混乱することです。そして実行における最大の壁は、メンターである若手社員の過度な心理的負担から生じる指導の形骸化です。この制度では若手社員は指導者であると同時に、その他日常では上司の評価権限下にある「部下」という位置でもあります。この矛盾が「本音を言ったら評価に響くかもしれない」という恐れを生み出します。例えば、若手社員が部長に新しい知識や取り組みを提案した際、部長が難色を示した途端に、忖度してその次の指導を控えてしまうといった弊害を生みます。これを識学理論では「不必要な恐怖」と整理しており、制度成功の壁になります。

この「位置の錯誤」を防ぎ「不必要な恐怖」を取り除くためには、指導と評価の役割を完全に分離する「ルール」を作って対応しなければなりません。まず最も重要なのは「完全分離の文書化」です。具体的には、「メンターリング中の発言や指導内容は、メンティーによるメンターへの人事評価に一切用いない」ことを口頭や雰囲気ではなく文書で保証します。また、ペアリングの原則として、「直属の上司・部下の組み合わせは避ける」ことを必須とし、仕組みとして、業務上の評価権限が及ばない「位置」の関係でペアを組みます。

さらに、指導を受ける側のベテラン社員の抵抗感を克服するためのルールも不可欠です。メンティーには「指導中、メンターの意見を最後まで遮らずに傾聴し、感情的な反論をしない」という行動規範を義務付け、セッション中はメンターの「指導する位置」を尊重させます。また、禁止事項として、「メンティーからメンターへの業務指導や、メンタリングテーマ外の作業依頼を禁止する」ことで、ベテラン社員から発せられる「立場の上書き」を防ぎます。

さらに、意思決定と実行のスピードを上げるためのルールやデジタルツールの積極活用と本音の場作りにおいても運用ルールの設定が必要です。スピード重視の運用フォーマットとしては、長時間会議を避け「会議は週に一度、30分間の短時間オンラインミーティング」など、頻繁でリズム感のある接触をルール化します。また若手が慣れたLINなどの即時性の高いツールを情報交換に活用などのルールも有効です。

3. 【持続的成長】効果の測定と改善で制度を組織の成長エンジンにする

リバースメンター制度を「コスト」ではなく「投資」として成立させ、組織の成長エンジンとして機能させるための評価と定着の仕組みを組み込みます。

それには前述の運用ルールの設定に加えて「果たすべき結果の状態」を明確にしておくことも重要です。例えば、「クラウドサービスAの活用による、部門の月次報告書の作成時間30%短縮」といった具体的な結果を定めることがそれにあたります。

そして制度の正当性を証明するため、活動の「結果」を定量的にみるKPIの設定と追跡、メンティー層のデジタルリテラシーテストのスコア上昇幅、指導されたツールの利用率などを測定し、知識定着の結果を検証します。その結果に基づき、制度にかかった総コストと、業務効率化や売上増加といった「結果(事実)」から得られた経済的利益を比較し、投資としての正当性を証明します。

最後に評価の仕組みです。メンターの活動を組織の財産として評価し、継続的なモチベーションを維持するための仕組みが必要ですので、成果の評価への反映もルール化し、メンターの活動を正式なプロジェクト活動と位置づけ、人事評価で加点評価とします。メンティーが指導によって自身がどう変わったかを記載する貢献実感レポートを義務付けるなど、若手の貢献を「結果(事実)」で見える化して組織全体で認められる仕組みとします。

リバースメンタリングは、組織内に「知恵の源泉は役職や年齢ではなく最新の知見にある」という新しい認識が定着させ、ベテランも「学習する組織」へと進化させ、世代間のギャップをプラスの力に変えるアクションです。

文/識学コンサルタント 安藤

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