コンビニやスーパーなどで、セルフレジを導入する店舗が増えている。
レジの混雑緩和や待ち時間の短縮につながるし、人手不足なので仕方がないと思うものの、商品のパッケージからバーコードを見つけ、専用端末で読み取るのはやや面倒だと感じる。
キャッシュレス決済、セルフレジ、消費者が店舗に求めるデジタル化に対する本音
SquareはMMD研究所と共同で、18歳〜69歳の男女1万人を対象に「実店舗のデジタル化に関する消費者の意識調査」を実施した。これは日本の小売店やレストラン、…
そういった手間を軽減できるのが、画像認識AIを活用したAIセルフレジだ。
事前に登録された商品データを基にAIが自動識別して、商品情報と金額をディスプレイに表示。顧客はその内容を確認してキャッシュレス決済を行なう。
韓国のスタートアップ企業Fainders.AI(ファインダーズエイアイ)が展開するのは、そんな画像認識AIの次世代AIセルフレジ「VISION CHECK-OUT」だ。
2025年11月6日に、東京江東区の豊洲セイルパーク内に実証実験ストアをグランドオープンすることを発表し、体験会を実施した。いったい次世代AIセルフレジとはどういうものなのか?
次世代AIセルフレジ「VISION CHECK-OUT」の強み
まずFainders.AIについて説明しよう。同社は2020年4月、韓国・ソウル市で設立したスタートアップ企業。「顧客には利便性を、店舗には利益向上を提供する」というミッションのもと、画像認識AIを活用したリテールソリューションを提供する。
AI無人店舗ソリューション「WALK THROUGH」とAI画像認識セルフレジ「VISION CHECK-OUT」を開発・販売し、現在、韓国国内の食堂やベーカリー、シンガポール・チャンギ国際空港などで8店舗を展開。
2025年6月には日本法人のファインダーズAI ジャパンを設立し、日本市場への本格的な進出を開始した。
体験会では、ファインダーズAI ジャパンの代表取締役 CEOであるジミー・リー氏が、「VISION CHECK-OUT」について説明した。
画像認識AIのメリットは、バーコードを読み取る必要がなく、果物や揚げ物など、バーコード表示ができない商品についても、認識してくれるところ。一方で従来型の画像認識AIの認識精度はそれほど高くなかった。
例えばベーカリー分野ではスタッフのレジ作業のサポートとしての活用に留まっていて、完全なセルフには至っていないのが現状だと言う。
Fainders.AIが日本に展開する「VISION CHECK-OUT」は、7つのステレオカメラで商品をスキャンすることで、高い認識精度を実現。
「同じパッケージでもサイズの違いを判別したり、袋もののパッケージがくぼんで変形していても、商品の数が多くても1秒程度で正確に全ての商品を認識し、10秒程度で決済まで完了できる」とリー氏。
体験会では、ドリンクと皿に盛り付けられた惣菜を実際に購入した。ペットボトルのドリンクを立てても寝かせてもちゃんと認識した。
商品の数が多くても瞬時にそれぞれの名称と金額がディスプレイに表示された。驚いたのはプルトップの缶をまとめて置いたり、ペットボトルを逆さまにしてもちゃんと認識したことだ。
従来の画像認識AIが上からのシングルカメラなのに対して、「VISION CHECK-OUT」は7つのステレオカメラを設置。人間の目のように2つのカメラを並べて設置するステレオカメラでは、商品情報が3Dで得られる。
7つのカメラの角度を微妙に変えることで、360度から商品を読み取ってマッチングすることが可能。この構造や高度なAIのアルゴリズムによって高い認識精度を実現していると言う。
商品を重ねて置くと認識精度が低下するため、重ね置き禁止のルールを設けているが、うっかり重ねてしまった場合もその商品の高さから重ね置きを検知。ディスプレイにアラートを表示する仕組みになっている。
一方で画像認識AIを運用するためには、事前に商品を撮影して、画像登録する必要がある。「VISION CHECK-OUT」の場合は表や裏、縦と横、袋を変形させるなど、あらゆる角度や様々な形状で撮影するため、1つの商品で24枚の撮影が必要。
その作業時間は1000アイテム(SKU)で以前はほぼ1日かかっていたが、現在ではシステム向上により1時間まで短縮することが可能になった。リー氏は「来年には5枚の撮影で同様の認識精度が実現できると思う」と、さらなる進化が目指せると言う。
同じ商品を販売するチェーン店の場合、画像登録は1か所で行い、その情報をクラウドにアップして共有することが可能。また機器の大きさについても、現状よりも小さいサイズや大きいサイズを展開したいと語った。
省人化DXが急務の日本でいち早く展開
通常、海外進出する場合、自国で成功を収めてから行なうのが一般的だが、Fainders.AIが早々に日本進出した理由についてリー氏は、「日本が深刻な人手不足で、省人化DXが急成長する市場である」ことを述べた。
日本の人口は韓国の約2.5倍。コンビニ市場を比較すると、店舗数はさほど変わらないのに対して、日本のGDPは韓国の約2倍、市場規模と1日売上は日本が韓国の4倍と大きい。
「韓国はコンビニが多すぎて1店舗の収益が少ないため、高品質のソリューションを導入する余裕がない。日本市場の方が伸びしろが大きいので、同時期に展開することにした」とリー氏。
日本では社内や病院、物流センターなどの売店、スタジアムや映画館、スキー場などのレジャー施設を中心に拡大する予定。スタジアムの市場規模についても日本は韓国の約3倍と大きい。
しかも韓国ではデリバリー利用の飲食が多いのに対して、日本では持ち込み禁止のため球場内で購入するため、売店やレストランの収益性が大きく、AI画像認識セルフレジの需要が高いと考える。
現在、北海道では2024年に誕生した北海道日本ハムファイターズの球場「ES CON FIELD HOKKAIDO(エスコンフィールド)」があるFビレッジを拠点に、グローバルスタートアップを誘致して地元の企業や自治体との事業共創を目指すグローバルアクセラレーションプログラム「Hokkaido F Village X」を進行中。
Fainders.AIはその採択企業でもあり、着実に日本での足がかりを拡大している。
体験会に出席したFainders.AIのCEOであるワン・ミンゴン氏は、「私たちはAIの専門性を生かし、社会や産業が抱える問題に取り組んでいきたい。AIと人がお互いに支え合う持続可能な社会を目指して、歩みを続けていきたい」と語った。
完全に無人にすることはできないものの、画像認識AIによる業務効率化によって、レジ作業はAIにまかせて、人はもっと価値ある作業を行なうことができるようになる。これこそがFainders.AIの狙いだ。
今回、実証実験が実施される豊洲セイルパークは、2025年7月24日にオープンした職住遊学が融合する商業スペース。大企業からスタートアップ、大人から子どもまで誰もが参加できるインキュベーション施設「LIFESTYLE LAB“TOYONOMA”」の中にある「HIBI NOMA」に1台、「SHOKU NOMA」に1台が設置される。
これまで販売スペースがなかったそうだが、「VISION CHECK-OUT」が設置されたことでドリンクやスナック、軽食などを手軽に購入できるようになった。
「HIBI NOMA」はコワーキングスペースとして1時間600円(税抜)から利用可能。「SHOKU NOMA」はオープンキッチンを併設したダイニングとテストキッチンがあり、製品開発やポップアップ店舗営業などが行なえる施設だ。豊洲に行った時には新しい取り組みである豊洲セイルパークの「TOYONOMA」を含めて、次世代AIセルフレジを体験してみてほしい。
文/綿谷禎子







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