スペインの原産地の大不作により、オリーブオイルの高騰が続く昨今、改めてオリーブオイルの希少価値を見直したい時期だ。食用はもちろん、コスメ用途においても研究も進められており、多様な付加価値を生み出している。
今回はコスメ用途の研究に焦点を当て、最新知見とオリーブオイルが持つ美肌への可能性を探った。
ビューティーディレクター MICHIRUさんとおくる、連載「Wellbeing Beauty by MICHIRU」。 連載第4回目では、世界一の長寿クリニック…
DHCの新オリーブ発酵液
DHCとオリーブオイルと聞けば、ロングセラーの「オリーブバージンオイル」を思い出す人も多いかもしれない。
同社は長年に渡ってオリーブオイル研究を続けており、近年は独自に酵母と組み合わせた「オリーブ発酵液」を開発した。
オリーブ発酵液は、オリーブの果実から搾油したあとに残るオリーブ果実と果皮を原料として発酵を行ったもので、オリーブの力を余すことなく使用したDHC独自成分だという。肌の老化は酸化によるシミ・シワ・たるみと、カルボニル化によるくすみやカサカサによってもたらされるといわれる。
そこでオリーブ発酵液は抗酸化とカルボニル化抑制効果の両方が期待できることで、肌の老化にアプローチする新成分となる。
今年10月には既存のスキンケアシリーズをリニューアルし、新たにオリーブ発酵液を配合したローションやクリームをリリース。名称も「オリーブウェルシリーズ」として生まれ変わった。
同社のオリーブオイルへのこだわりについて、オリーブウェルシリーズ商品開発担当の兼平奈央子氏にインタビューを行った。
「オリーブにはオレイン酸やビタミンA・E、スクワランなどの美容成分が豊富に含まれているため、当社は他社に先駆けてその美容効果に着目し、1980年に天然100%美容オイル『オリーブバージンオイル』を発売しました。その後もオリーブのさらなる価値開発にも取り組んでいます」
オリーブ発酵液の驚くべき特長
新しいオリーブ発酵液にはどのような特長があるのだろうか。
「まず最初に着目したのが、オリーブの実を搾った後に残る『オリーブポマス』という果実や果皮の部分です。ここに豊富な美容成分が残されていると確信したDHCは、さらに美肌効果を高めるため日本に古くから伝わる発酵の掛け合わせに挑みました。
日本屈指の種麹メーカーで明治43年創業『秋田今野商店』の協力を得てオリジナル酵母による発酵を行い、化粧品原料としての価値を高めました」
オリーブの果実や果皮に着目したこと、日本が誇る発酵技術を活かしたこと。この2つがオリーブオイルのさらなる可能性を生んだ。
井上オリーブ柑橘研究所の「伊予柑オリーブオイル」
日本発のオリーブオイルの最先端をいく小豆島。そこでオリーブと、伊予柑(いよかん)を同時圧搾した「伊予柑オリーブオイル」をもとに、2024年12月スキンケアのブランド「inOli(イノリ)」が生まれた。
「伊予柑オリーブオイル」へのこだわりについて井上オリーブ柑橘研究所の広報 斉藤氏にインタビューを行った。
「こだわりは、日本で唯一、親子4代に渡って代々オリーブと柑橘を育て続けている農家が、こだわりを持ってセレクトしている点です。研究所は80年続く小豆島のオリーブ農家・井上誠耕園から誕生した事業であり、使用しているオリーブは、スペイン・アンダルシア州で親子7代に渡ってオリーブを育てている有機栽培のオリーブ農家・ルケ家が育てているもの。これは一般的に仕入れられている多くの輸入品とは全く異なります。ルケ家は世界のオリーブ三大産地の一つであるスペインを巡って出会った農家。土づくりからこだわって作られており、品質面・安全面どちらも高く、香りや肌なじみがよいのが特長です」
伊予柑とオリーブオイルを一緒に搾る!商品の誕生秘話
特徴的なのが、オリーブと伊予柑を一緒に搾っている点だ。斉藤氏は誕生秘話について次のように語る。
「春夏に大量に実をつける果実を間引く作業『摘果』では果実を捨てざるを得ませんが、農家としては『もったいない』という思いもあります。
そこで園主・井上は『成長するエネルギーを蓄えたこの果実の中には、多くの栄養があるのでは』と気づき、研究機関で試験をしたところ、特に伊予柑の幼果に豊富な栄養が秘められていることが分かったのです。そこから長年育ててきたオリーブと一緒に搾ってみたことが、伊予柑オリーブオイルの始まりでした。
その後、さらに果実の配合比や撹拌時間など研究を重ね、伊予柑が持つ香りや栄養をオリーブオイルに引き出すことに成功し独自の特許製法も取得。量産化のためにルケ家のもとに渡り、伊予柑には愛媛県産の果実を使用することで『伊予柑オリーブオイル』の製品化に至りました」
美容オイルとしても優れた機能を持つという。
「伊予柑オリーブオイルはうるおいを守る力と爽やかな香りを併せ持った他にはない美容オイルであり、その力が『inOli』ブランドの製品の中で存分に発揮されています。オイルの力が優れているからこそ、シンプルで多機能な製品づくりが実現しました」
「ほのかな伊予柑の香りにとても癒される」との消費者の声もあるという。オリーブオイルが持つ可能性と伊予柑の香りがうまくマッチングして日本ならではの美容オイルが生まれた。
まだまだ研究が続くオリーブオイル。その可能性はそんな今に至っても未知数なのかもしれない。今後も新たな発見がなされることに期待したい。
取材・文/石原亜香利







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