心身健康道場のルーツである『西式健康法』や間欠的な断食を取り入れたファスティングバー
消費者の健康や幸せを考える企業は、社員の健康やウェルビーイングに対しても意識が高い。社員が会社でパフォーマンスや価値を発揮するためにも、体調が万全であることは重要になってくる。
口腔と健康と美のケアを行う消費財事業や、四輪、二輪の金属加工部品や接着剤等を扱う生産財事業を行うサンスターグループは、社員の生活習慣の改善のため、心と身体の健康づくりを学びながら体験するための福利厚生施設『サンスター心身健康道場』を大阪・高槻市で運営している。
施設内には講義を受ける部屋の他、玄米菜食や青汁などをいただく食堂、冷水と温水で『冷温交代プログラム』を行うことができる浴場、アクアビクスやトレーニングを行うための温水プール、ドライサウナやウェットサウナなどが整備されている。1927年に西勝造氏が編み出した健康法『西式健康法』が、サンスターの健康づくりのベースとなっている。
またサンスター財団は、「健康な食事・食環境コンソーシアム」が定める「健康な食事・食環境」認証制度の認証事業者「給食部門」として認められており、玄米菜食は栄養バランスの良い食事が選べる外食・中食・事業所給食の『スマートミール認証』を取得。サンスター心身健康道場が開設されたのは1985年。今から40年前に、すでに社員の心身の健康を企業が考えていたのだ。
社員の健康支援こそ「投資」という、サンスター『心身健康道場』に学ぶウェルビーイング経営の本質
働く人々にとって、企業が自身の健康を気にかけてくれるかどうかは重要だ。多忙であればあるほど、健康診断結果のチェックやちょっとした日々の不調も見落としてしまうこと…
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サンスターは心身健康道場のルーツである『西式健康法』で実践される間欠的な断食の考え方を、『ファスティングバー』という形で消費者にも提供している。連載最終回では、サンスターが米国企業と開発した『カラダにおいしいファスティング』の特徴や、同社のウェルビーイングと健康経営を体現する大阪・高槻市の新社屋『コミュニケーションパーク』について紹介する。
「食べないこと」を事業にする矛盾からの脱却
「ファスティング(断食)」と聞くと、「辛い」「我慢が必要」といったイメージがつきまとう。しかし、その健康効果に注目が集まる中、サンスターが「食べるファスティング」という画期的なコンセプトで開発したのが『カラダにおいしいファスティング』だ。
同社が長年運営する福利厚生施設『心身健康道場』の知見と、米国の最新科学を融合させたこの商品は、なぜ「食べてもファスティング」を実現できるのか。
サンスターがファスティングに着目した原点は、1985年に開設した『心身健康道場』のルーツである『西式健康法』だ。この健康法には「生菜食と少食」や「間欠的な断食」の考え方が含まれている。しかし「食べないこと」を食品も販売するメーカーが事業にするのは自己矛盾を抱える。また、「断食=怪しい」という世間のイメージも課題だった。
このジレンマを打ち破ったのが、南カリフォルニア大学のヴァルター・ロンゴ博士が提唱する「FMD(R)(Fasting Mimicking Diet=擬似ファスティング)」理論との出会いだ。これは、特殊な栄養バランスの食事をとることで、体内の老化や生活習慣病に関わるスイッチを「オフ」にし、「食べながらにしてファスティング状態を維持する」という革新的なアプローチだった。
この理論に基づき、サンスターは独自のファスティングバー『カラダにおいしいファスティング』を開発。マーケティング、営業、事務管理、研究開発が一体となり事業化を進めた。商品は2023年に発売され、『日経トレンディ』の『2025年ヒット予測』でベスト5に選出されるなど、大きな注目を集めている。
「食べたのに、体は食べていないと“勘違い”する」科学的根拠
ファスティングバーの最大の特徴は、その特殊な栄養バランスにある。一般的な食事バランスが炭水化物中心であるのに対し、このバーはナッツ由来の良質な植物性脂質がエネルギーの大半を占める「ファスティングサポートPFC」のバランスで設計されている。
サンスターグループ・セールス&プモーション担当の小宮氏はこの「ファスティングサポートPFC」について、「厚生労働省『日本人の食事摂取基準』によると推奨される食事のPFCバランスは、炭水化物が50~65%、タンパク質が約13~20g、残りが脂質というエネルギー構成要素です。しかし『カラダにおいしいファスティング ファスティングバー』は脂質が多いのが特徴になっています」と説明。「ただ脂質を何でもとっていいという訳ではなく、植物性の脂質が豊富なところがポイントです。植物性の脂質で特徴的なPFCバランスの食事を摂取することで、“擬似的にファスティング”ができるというような商品になっております」と語った。
これにより、驚くべき効果がデータで示されている。通常、食事を摂ると血糖値は急上昇するが、このバーを食べた後の血糖値は、水だけを飲んだ場合とほぼ変わらず、ほとんど上昇しない。さらに、脂肪燃焼の指標となるケトン値も、食事を摂ったにもかかわらず、水だけを飲んでファスティングを続けている状態とほぼ同様に維持されることが確認された。
サンスターグループ・ライフケアイノベーション事業部の研究開発チーム チームリーダーで研究開発担当の仁神史生氏は、「食べたのに体が『水しか飲んでいない』と勘違いするような状態を作り出します。ファスティングを邪魔せず、そのままの状態をキープできるのです」と解説する。この特性から、血糖値が気になる人や、大事な会議の前に眠くならず集中力を維持したいビジネスパーソン、食事時間が不規則な美容師など、幅広い層から関心が寄せられているという。
「辛い」から「手軽」へ――ファスティングの常識を変える新習慣
サンスターの調査によると、ファスティングを知っている人は約46%いるものの、実際に継続できている人はわずか2%だという。「辛い」「時間がない」「(飲み会などの)付き合いを断らないといけない」といった障壁が、実践のハードルを上げていた。
ファスティングバーは、この課題を解決するために「16時間ファスティング」を推奨している。例えば朝食をバーに置き換えれば、昼食と夕食は自由に食べることができるため、生活スタイルを大きく変える必要がない。準備食や回復食も不要で、手軽に始められ、継続しやすいのが最大の魅力だ。
商品は1箱12本入りで、箱自体に食べ方のガイドが記載されており、初心者でも安心して取り組める。小宮氏は「このファスティングバーはファスティング中の16時間の中でも食べてもいいというところが特徴で、残りの8時間はなんでも食べてもいい。例えば朝食をバーに置き換えていたら、昼食と夕食は何でも食べてもいいので、習慣化しやすいと思います。辛い修行のようなイメージだったファスティングを、日常生活に取り入れられる手軽な健康習慣として広めていきたいです」と語る。
ファスティングは“体に良い”とされているが、仁神氏は「なぜファスティングが生活習慣病予防やアンチエイジングに関係するかというと、私たちの体の中に“スイッチ”があると想像してみてください。このスイッチは老化や生活習慣病を左右する重要なもので、スイッチオンになると進めてしまう。オフになっていた方が病気になりにくく、老化が進みにくいスイッチだと思ってください」と語る。
「でも、『オンになると最終的に病気になりやすい、老化が進んでしまう』というのは単純な発想です。例えばスイッチをオンにするものがウイルスや悪菌などの外的な物であれば、ワクチンなどで外敵が入らないようにすればいい。でもオンにするものがタンパク質や糖質など、普段我々が体を維持したり育てたり成長させるために摂取する大事な栄養素でもあるのが、ジレンマなのです。『スイッチをオンにしてしまうタンパク質はとらない方がいいじゃないか』と思うかもしれませんが、体を維持したり大きくするためには必要です。でも摂取し過ぎると今度はスイッチがオンになり過ぎて生活習慣病や老化を進めてしまう。0か100ではなくて、『オンに傾くかオフに傾くか』『摂取し過ぎてもいけないし、摂取しなさ過ぎてもいけない』という実態があります」
その上で、「ファスティングの目的というのは、このスイッチをオフにして病気を予防したりアンチエイジングにつなげたりするということ。『食べながらにスイッチオフにする方法はないのか』と考えた時に、結論として方法が見つかったので、『カラダにおいしいファスティング ファスティングバー』につながりました。スイッチがオンではなく『“オフの方”に傾いたまま維持できる』ということを発見したのが、大きなブレイクスルーになります」と語った。
社員のウェルビーイングを育む新社屋「コミュニケーションパーク」
サンスターの健康へのこだわりは、商品開発だけにとどまらない。大阪・高槻市にある新社屋「コミュニケーションパーク」は、同社のウェルビーイング哲学を象徴する空間だ。
創業の地である高槻市に5年前の2020年に建てられた社屋は、1万8000平米の広々した敷地に、部署間の壁を取り払った3階建ての開放的な設計。社員のコミュニケーションを活性化するため、執務スペースは完全フリーアドレス制を導入している。また外観にもこだわりがあり、東側から見ると茶色い建物に、西側から見ると白い建物に見えるようにデザインされている。茶色はアースカラーを、白色は清潔さをイメージしている。
社内には、社員の声から生まれた「歯磨き専用ブース」を設置。社員食堂では『心身健康道場』のレシピを再現した玄米菜食メニューを提供し、「健康な食事・食環境」認証制度の『スマートミール』認証も取得している。
通常メニューを食べたい人向けには、魚や肉を選べる2種類の定食や、麺やパンメニューも用意されている。
また災害時でも事業を継続できるよう、非常用発電機を2階に設置し、電気・ガスが止まっても約400人の社員が3日間過ごせる備蓄を完備するなど、働く人の安全・安心にも配慮が行き届いている。さらに井戸水を汲み上げ、飲料水にも井戸水を使用している。
創業者の「常に人々の健康の増進と生活文化の向上に奉仕する」という想いを胸に、長年の健康哲学と最新科学を融合させて生まれた『カラダにおいしいファスティング ファスティングバー』。そして、働く環境そのもので社員の健康を支える新社屋『コミュニケーションパーク』。サンスターは、社内外におけるウェルビーイングの実現に向け、新たな挑戦を続けている。
取材・文・撮影/コティマム







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