「熱海は儲かりそう」では続かない 地方で“本当に愛される店”の作り方
――海鮮丼やスイーツなどいわゆる王道な観光スポットがある中で、田中さんが『marunowa』として熱海に貢献したいことがあったら教えてください。
田中「僕は、『地元の人が地元のことを知らない』『熱海の価値を知らない』ということが怖いというか、心配なところです。外からいろんな資金力を持った人たちが入ってくるじゃないですか。だからまずは、地元民にローカルの良さを知ってもらいたいですよね。毎日いるから忘れちゃってる気がするんですけど。僕は外に出て気づいたことが多くて、『本当にいいところだな』と思うようになりました。
でも熱海の人はその魅力に気づいていない。だから僕は、地元発信を続けたいと思います。地元の行事を発信して、そこで伝えられることがあると思う。地元の人も、観光の人も、両方いないとやっぱり僕らは成り立たないです。
『marunowa』としては、やっぱり地元の物を使い続けたい。熱海やこの界隈は、『それくらい実力があるところなんだよ』っていうのを知ってもらいたいですよね。ダサい部分もいっぱいあるけど、それが田舎の良さでもあると思うし」
――熱海に戻って5年、幸せやウェルビーイングな生活を感じることはありますか。
田中「東京って、息を吸っているだけでお金がかかるじゃないですか。僕としては、東京は“戦い続ける場所”で、当時はそれが楽しかったんです。東京で家を買って、車に乗って、『いけてるっしょ?』みたいな。でも『別にそんなことないんだな』って、こっちに帰ってきて思っちゃいましたね。東京は1つの目標ではあったけど、『本当にこれが幸せだったのかな』って最近は本当に思います。
この前、同級生と話したんですけど、『ゴルフに行ったり、友達とキャンプに行ったり、子どもと過ごしたり。そういうことがストレス無くできるので、いいんじゃない?』みたいな。だんだん考え方が変わってきたんですよね。
街が狭いので、歩いていてもすぐに出くわしちゃう(笑)。でもそれも何か、相手に『こんにちは』ってし続けるのも熱海なのかなって思うし。歩いていても人自体が少ないから、今の自分の中ではすごく楽なんですよね。たまに東京に行くと、本当に人が多くて疲れちゃう。昔はそうじゃなかったので、ここ数年で求めるものが変わりましたね」
――最後に、もし田中さんのように、熱海で飲食店やお店を開きたいという夢を持った人がいたら、どんな声をかけたいですか。
田中「まず、業態を見誤らないことじゃないですか、単発的に稼ぎたい人もいるだろうし、熱海に住み続けながらやりたい人もいるだろうし。その選択を見誤っちゃうと終わる。何となく『熱海は儲かりそうだな』って入ってくる人は続いていないですね。
思っている以上に、お客さんっていないんですよ。1か月に1回、週に1回外食をする人がいたとしたら、『その人が選ぶ1個』にならないといけない。『寿司屋ならここ。焼肉店ならここ。居酒屋ならここ』という、そういう選択肢の1つになるようなお店を作れないことには続けられない街だと思うんです。だから中途半端に出しているお店は潰れていますね。
だからたぶん、『熱海が好き』が前提にないと頑張れないんですよ。何のためにここでやっているのか』が大事。目的と手段がズレてるいると続かない。『この場所と、ここにいる人たちが好き』という気持ちが一番ですね」
――観光や移住で興味を持っている人にもメッセージをお願いします。
田中「うちにも東京の時の常連さんが来てくれますが、やっぱり『距離が近い』というのを実感してもらうのは大事だと思います。『意外と来れちゃう』みたいなのが分かると、来てくれるんですよね。いきなり移住となるとハードルが高いから、まずは遊びに来て、そのうち好きになって、何かのきっかけでこっちに来るというのでもいいかもしれません」
取材・文/コティマム 撮影/横田紋子(小学館)
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