ムを呼んだカリーナED、CMで大ヒットしたFFジェミニ、「ニュー・スモール」のトゥデイなど、価値高騰前の希少な名車を紹介。程度の良い車両は即キープがマスト!?
目次
今から40年前の1985年は、昭和60年。バブル前夜とも呼べる時期でした。
当時のクルマたちは、欧米諸国の車両性能を追い越したとは言えない状況で、新型車はハンドリングやエンジン出力といった性能の進化を謳うことが主流でした。
しかし、1980年代の日本車は目に見えて性能を上げ、1989年(平成元年)5月に日産「スカイライン GT-R」が誕生したことで、性能面で世界トップレベルになったことが実証されたと言えます。
昭和はクルマの性能が進化した時代でした。
一方、平成以降は環境性能や安全性能、ユーザビリティを高める、クルマの成熟期だったと振り返ることができます。
そんな、クルマが進化した昭和の末期、1985年に登場したクルマの特徴は、「FF(フロントエンジン・フロントドライブ)化」と「バリエーションの拡大」だったと言えるでしょう。
セリカやジェミニといったクルマがFF化され、居住性を高めながらも性能水準を上げていく……一方で、カリーナEDの出現はセダン人気の曲がり角であり、ミニバンやSUV人気の拡大を予言していたようにも思われます。
そんな1985年に登場したクルマから、主だった車種をピックアップしてご紹介します。
初代セリカやスカイライン、フェアレディZ、スープラなどと異なり、まだ中古車価格が高騰して手に負えない状況ではありません。
しかし、程度のよい車両の現存は希少です。
気になったら、即キープが必須といえそうです。
流面形:4代目トヨタ「セリカ」
1985年8月に発売されたトヨタ「セリカ」の4代目は、FFで登場しました。

これに筆者は、かなり驚いた記憶があります。「スポーツカーもFFの時代かぁ」と、少し残念だった思い出があります。
しかし、3代目までのセリカとは一線を画す、スタイリッシュなデザインを採用したことが、4代目セリカデビューで一番の魅力と言えました。

当時のクルマはTV CMの影響が圧倒的でした。4代目セリカもオシャレな映像・音楽と共に「流面形、発見さる。」というキャッチコピーが躍りました。
「流面形? なんだそれ」って思いましたが、確かに空気抵抗の少なそうな滑らかなボディラインは、バブルを予感する派手さがありました。

デビューの翌年には、DOHC16バルブターボエンジンを搭載し、4WDとなった「セリカ GT-FOUR」が登場しました。

同車は世界ラリー選手権(WRC)で大活躍。カルロス・サインツがシリーズチャンピオンに輝くと同時に、日本車メーカー初のWRCタイトルとなりました。
そして、セリカ GT-FOURは映画「私をスキーに連れてって」の劇中車としても注目され、若者人気が爆発。
ルーフキャリアを着けてスキー板を積み、スキー場に向かうリゾートスポーツが大ブームとなり、全国のスキー場も大活況。これもバブルの象徴の1つと言えそうです。
ちなみに、セリカ GT-FOURのTV CMでは「流面形、4駆す。」と謳っていました。
スペック
「GT-R」グレードのスペックは以下です。
サイズ:全長4365×全幅1690×全高1295mm
ホイールベース:2525mm
車両重量:1120kg
エンジン種類:水冷直列4気筒DOHC16バルブ
排気量:1998cc
最高出力:136PS/6400rpm
中古車相場
大手中古車販売サイトで確認しました。4代目セリカ(通称ST165型)の中古車両は3台掲載されていました。
セリカ「GT-R」1987年(昭和62年)式、走行距離10万3000km、白、1998cc、5MT、車両本体価格194万円
セリカ「GT-R」1989年(平成元年)式、走行距離3万7000km、白、1998cc、4AT、車両本体価格178万円
セリカ「ZR」1989年(平成元年)式、走行距離5万4000km、白、1998cc、5MT、車両本体価格138万8000円
となっていました。
プレミアム価格とは言えませんが、徐々に値段は上がっている印象です。上級グレードのGT-Rは200万円を超える価格が今後の相場となっていきそうです。
ちなみに、4代目セリカ GT-FOURは掲載車両がありませんでした……。ちなみに、2025年6月のYahoo!オークションでは、238万円という落札価格が出ています。
また、5代目のセリカ GT-FOURの車両本体価格が286万6000円で大手中古車販売サイトに掲載されており、250〜300万円あたりが、4代目セリカ GT-FOURの中古車価格相場と思われます。
Exciting Dressy:トヨタ「カリーナED」
トヨタは、「マークⅡ」、「チェイサー」、「クレスタ」の「マークⅡ三兄弟」が有名ですが、4代目セリカも三兄弟でした。
それは、「カリーナED」と「コロナ・クーペ」で、4代目セリカ同様、共に1985年8月20日に発売されました。
まずはカリーナEDからご紹介します。

トヨタには1970年から「カリーナ」という車種がありました。「足のいいやつ」というキャッチコピーで人気を博していました。
しかし、こちらのカリーナEDは、カリーナとは別の流れで、4代目セリカの4ドア・ハードトップ版というイメージでした。
TV CMやカタログでは「4ドア新気流。Exciting Dressy」というキャッチコピーが踊りました。

車高が低いピラーレスドアのボディは、後席の居住性は正直高くありません。
しかし、時代はバブルを迎える前夜。華美なデザインは多くのユーザーのハートをわしづかみし、大人気となったのです。

カリーナEDは2LクラスのFF4ドア・ハードトップというジャンルを作りだし、日産からは「プレセア」、三菱は「エメロード」、マツダ「ペルソナ」といった「スペシャリティーカー」を続々と生み出す原動力となりました。
しかし、カリーナEDの人気は4ドアセダンでは飽き足らないという、ユーザーの想いの現れでもありました。
居住性が高く、家族が広々と利用できるミニバンが登場し、セダン人気は低迷。さらに、SUVの登場はスポーツカー人気に釘を刺したと言えます。
ただし、カリーナEDの水平基調のローフォルムは今見ても新鮮です。「後席を使わない4ドア」は、ある意味スポーツカーの役割も担っていた、今振り返ると、そんな思いがします。
スペック
「G-Limited」グレードのスペックは以下です。
サイズ:全長4475×全幅1690×全高1310mm
ホイールベース:2525mm
車両重量:1130kg
エンジン種類:水冷直列4気筒DOHC16バルブ
排気量:1998cc
最高出力:136PS/6400rpm
中古車相場
大手中古車販売サイトで確認しました。初代カリーナEDの中古車両は4台掲載されていました。
カリーナED「X」1986年(昭和61年)式、走行距離3万1000km、薄茶、1832cc、4AT、車両本体価格 応談
カリーナED「G-Limited」1987年(昭和62年)式、走行距離5万6000km、緑、1998cc、4AT、車両本体価格148万円
カリーナED「X」1988年(昭和63年)式、走行距離不明、緑、1998cc、5MT、車両本体価格129万円
カリーナED「X」1988年(昭和63年)式、走行距離9万2000km、白、1998cc、4AT、車両本体価格109万円
新車の販売台数が多かったですが、中古でコンディションが良い個体数は極めて少ないです。価格もプレミアムがつくまでではないので、即買いしなければ次に出会える可能性は低い1台といえそうです。
the STREAM-LINER:トヨタ「コロナ・クーペ」
4台目セリカ三兄弟の一角、「コロナ・クーペ」です。

TV CMでは「the STREAM-LINER」というキャッチコピーが謳われ、CD値=0.32と流れるようなデザインが好評でした。

当時大人気だったトヨタ「ソアラ」と似ていたため、「プアマンズ・ソアラ」などと揶揄されたりしましたが、今見ると、面の張りなどはソアラよりも美しいクーペフォルムだと個人的には思います。
筆者は実際にコロナ・クーペを所有していました。空気抵抗が少なく、高速道路などで滑らかな走りをしてくれた思い出があります。
室内も狭いという印象はありませんでした。まあ、後席に乗ったことはほぼ無いのですが 笑

人気は正直、セリカやカリーナEDの影に隠れていました。しかし、後のセリカ・コンバーチブルのベースになったり、時代を象徴する名車の1つといって過言ではないと思います。
コロナ・クーペは初代のみで販売終了しました。セリカやカリーナEDがモデルチェンジする中、「コロナ EXIV」という、カリーナEDと共通する4ドア・ハードトップに生まれ変わったのでした。

スペック
「GT-R」グレードのスペックは以下です。
サイズ:全長4415×全幅1690×全高1295mm
ホイールベース:2525mm
車両重量:1100kg
エンジン種類:水冷直列4気筒DOHC16バルブ
排気量:1998cc
最高出力:136PS/6400rpm
中古車相場
大手中古車販売サイトで確認しましたが、コロナ・クーペの掲載はありませんでした。
このクルマは本当に台数が少ないので、市場に個体が出ることは滅多にないはずです。あれば即買いでしょう。
街の遊撃手:2代目いすゞ「ジェミニ」
若い世代には、いすゞが乗用車を販売していたことを信じられない方がいることでしょう。
1980年代のいすゞは、ジェミニやピアッツァといった乗用車をラインアップし、かなりの人気を誇っていました。
こちらの「ジェミニ」(通称FFジェミニ)は、1984年に米国向け輸出を開始し、1985年から国内販売を始めたモデルです。

特徴は4代目セリカと同じく、FFになったことでしょう。
ジェミニはFR(フロントエンジン・リアドライブ)の走りに定評があり、FFになったことを残念がる方も多かったのですが、TVのCMがとにかくインパクトがありました。
「街の遊撃手」というシリーズで、フランスのパリなどを中心にカラフルなカラーリングのジェミニが2台、4台、もしくはそれ以上の台数で、クラシックの名曲などをBGMに、まるでアイススケートのダンスのように優雅なアクロバット走行を披露しました。
時には地下鉄の階段を降りてホームを走ったり、また、川を飛び越えたり……そのインパクトは絶大でした。この2代目ジェミニはCM放映後に大ヒットし、街にあふれました。
上の画像のイシェルブルーなどが、まさに「街の遊撃手」といった軽快なイメージを振りまきました。
ボディタイプは3ドアハッチバックのほかにセダンも用意されていました。

デザインはジウジアーロも携わったと言われますが、詳細は不明。
いすゞの車内デザインチームによる手直しがあったなど諸説ありますが、いずれにしても直線基調のスッキリとしたデザインは、当時のジウジアーロデザインの面影があり、シンプルながら洗練されていました。
インテリアも80年代車らしい水平基調のシンプルな形状。嫌味が無くて扱いやすいカジュアルな雰囲気が魅力でした。

ほかにもドイツのイルムシャー社がチューニングしたモデルや、後に英国ロータス社がチューニングした「ジェミニ ZZ handling by LOTUS」モデルなど、走りを重視したモデルも追加されました。



スペック
ベースグレードのスペックは以下です。
サイズ:全長3995×全幅1615×全高1370mm
ホイールベース:2400mm
車両重量:870kg
エンジン種類:水冷直列4気筒
排気量:1471cc
最高出力:73PS(54kW)
中古車相場
大手中古車販売サイトで確認しましたが、とにかく個体数が少なく、相場といえる状況かはわかりませんが、ご案内します。
ジェミニ「C/C」1986年(昭和61年)式、走行距離9万8000km、黒、ディーゼルターボ、5MT、車両本体価格69万9000円
ジェミニ「イルムシャーターボ」1987年(昭和62年)式、走行距離17万4000km、白、1500ターボ、5MT、車両本体価格100万円
2代目FFジェミニのマイナーチェンジ前のモデル掲載は2台でした。まだプレミア価格とまでは至っていないようです。
参考までに、マイナーチェンジ後の2代目「ジェミニ ZZ handling by LOTUS」は、車両本体価格139万9000円〜157万円、「イルムシャ」のDOHCは車両本体価格190万円と、徐々に中古車価格が値上がりしているようです。
こちらも希少車になっているので、入手は早めがおすすめです。
【参考】ジェミニ JT150型
ニュー・スモール:ホンダ「トゥデイ」
最後にご紹介するのは、ホンダの軽自動車、「トゥデイ」です。


独特の丸目と、軽自動車としては珍しいローフォルムは今も新鮮です。ニュー・スモールというキャッチコピーにも納得です。
TV CMには、歌手・女優の今井美樹が出演。「はぐれそうな天使」(当初は来生たかお。後に岡村孝子)という曲が流れ、おしゃれな雰囲気に満ちていました。
このトゥデイは商用登録(4ナンバー)でした。後席はミニマムサイズ。

トランクスペースは広く取られ、

倒すと、商用登録に恥じない荷室空間が広がりました。

軽商用車だからといって、チープなだけではありません。ローフォルムは、今なおスタイリッシュ。

ボクシーでスマートなデザインは、ホンダ車の傑作の1つだと、筆者は思っています。
フロントワイパーがシングルアームだったのも、トゥデイの特徴。

インテリアもシンプルでスマート。実に小粋なクルマでした。

エンジンは、軽量・コンパクトな水冷4サイクル2気筒・水平横置エンジンを採用。

エンジンルームを極力小さくして室内空間を広く取るために、2330mmのロングホイールベースとなっています。

グレードは上級な「G」のほかに、「M」、

よりベーシックな「F」

の3種類が選べました。
車両価格は「F」は54万8000円! 最上級の「G」でも67万円と、今では信じられないようなリーズナブルな価格でした。
1988年には3気筒の新エンジンとなり、また、軽乗用タイプ(5ナンバー)もラインアップ。

より豪華に、そして完成度を高めました。
しかし、トゥデイの魅力は初代モデルで完成していた……今でもそう思っています。
スペック
「G」グレードのスペックは以下です。
サイズ:全長3195×全幅1395×全高1315mm
ホイールベース:2330mm
車両重量:550kg
エンジン種類:水冷直列2気筒OHC
排気量:545cc
最高出力:31PS/5500rpm
中古車相場
大手中古車販売サイトで確認しました。初代トゥデイは2台掲載がありました。
トゥデイ「グレード不明」1987年(昭和62年)式、走行距離不明、赤、545cc、4MT、車両本体価格75万9000円
トゥデイ「グレード不明」1987年(昭和62年)式、走行距離不明、白、545cc、4MT、車両本体価格 応談
660ccとなったトゥデイはそれなりの流通量がありますが、初代は極めて少ないです。価格も上がっている印象です。
【参考】斬新なスタイルで居住性にすぐれた軽商用車「ホンダ・トゥデイ」を発売
まとめ
1985年に登場したクルマをご紹介しました。
登場から40年。時代の流れの中で現存する車両は希少です。
メジャーな旧車とは言えず、プレミアム価格こそついていませんが、今後は台数が減ることはあっても増えることはありません。
もし、当時を思い出したり、今の姿が気に入ったのなら、早めに入手してください。
国産旧車は、突然価格が高騰することがあります。修理などのパーツも入手が難しくなると思います。
メインテナンスの苦労もありますが、それも旧車ならではの魅力として、長く付き合ってもらいたいものです。
※当記事に掲載している価格などのデータは2025年11月時点でのものです。
文/中馬幹弘
ガジェット・MONO・マネー編集/ライター。慶應義塾大学卒業後、野村證券にて勤務。アメリカンカルチャー誌編集長、モノ情報誌編集を歴任。iPhone、iPad登場時よりスマホ実務に携わる







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