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世界のCEO1200人に聞く地政学リスク時代のM&A戦略

2025.11.09

複合的サービスを提供しているプロフェッショナル・サービス・ファームのEYは、世界のCEO1200人(うち日本70人)を対象に地政学リスク下での成長戦略やM&A・JVへの意欲、現地化・地域化の進展などを調査・分析した「CEO Outlook調査(2025年9月期)」を発表した。

これによればグローバルの傾向としてCEOの57%が「不確実性は1年以上続く」と予測しているが、技術力・IPを目的としたM&Aが増加傾向だという。日本企業としては、「不確実性は3年以上続く」と見る割合がグローバル平均を大きく上回り、守りと攻めを両立したリスク分散と成長機会の確保を同時に進める姿勢が浮き彫りになった。

不確実な状況で力強く成長する術を身に付ける

今回の調査では、CEOの57%が地政学的・経済的不確実性は1年以上続くと予想しつつも変動の激しい環境を乗り越える強い自信を示したという。回答者の48%が2025年にM&Aの実施を計画しており、ジョイントベンチャー(JV)や戦略的提携に意欲を示すCEOも73%と急増している。

日本企業のCEOも地政学的・経済的不確実性の長期化を強く認識しており、1年以上続くと予測する割合は77%、3年以上続くと見る割合も46%とグローバル平均を大きく上回っている。M&Aや戦略的提携への意欲も高く、売却・スピンオフ・IPOを計画する企業は76%、JV・提携への関心は96%と積極的なポートフォリオ変革が進んでいるようだ。

今回のCEOコンフィデンス指標(ビジネスの多様な側面にわたる世界のCEOの意識を1~100のスコアで定量化した指標)は83ポイントで、前回(5月)の調査から7ポイント上昇している。

今後12カ月以内にポートフォリオ変革を加速するために投資を拡大する予定と回答したCEOは52%で、39%が過去数年間と同水準の変革を継続する意向を示しており、CEOの間では変化と変革を前向きに受け入れる傾向が強まっている。

加速する世界経済の構造的な変化を踏まえ、対応策として現地化や地域化を進める動きも活性化している。長期的な戦略アプローチは、CEOが進める地域・現地市場での取り組みで具体化されており、38%が現地化を完了、36%が現在実行中であると回答した。地域化については21%が実施済みで35%が現在実行中という。

多くのCEOにとって現地化・地域化は、一時的な動きではなく長期にわたって事業戦略の中核をなす本質的な変革になっているようだ。

さらに規制の不透明さが自社の成長戦略を大きく妨げると考えるCEOはわずか19%にとどまっており、変化するグローバル環境の中でも自社を力強く導いていくための自信と回復力を高めているといえそうだ。

M&A活動は活発だが戦略的提携も新たな選択肢に

M&Aの見通しについては、CEOの約半数の48%が従来型のM&Aを行う予定で、企業が外部資源を活用して成長を目指す動きが広がる中で73%のCEOがJVや戦略的提携へ参加を見込んでいる。

こうした関心の高まりは、変動の激しい環境下で完全買収の複雑さを避けながら柔軟にイノベーションと成長を進められる「アジャイル型の外部成長戦略」への志向が強まっていると分析できる。

M&Aの進出先は、米国が依然としてもっとも多く、カナダ、英国、インド、ドイツがそれに続く。M&Aを進めるCEOの41%が対象企業の技術力や知的財産(IP)に目を向けており、現在の競争環境に技術革新がいかに重要な戦略要素となっているか推察できる。

今後12カ月間の傾向は、特に石油・ガス、保険、ヘルスケアの分野で高い意欲が見られ、一方でメディア・エンターテインメント、銀行、金属・鉱業、テクノロジーの分野はJVや戦略的提携を選択する可能性が高いと予測されるという。

EY GlobalのVice Chair兼EY-ParthenonのGlobal LeaderであるAndrea Guerzoni氏は、次のようにコメントしている。

「先進的なCEOは、変動の激しい環境がもたらす混乱にただ対応するのではなく、その混乱を変革の起点として捉え、自社の成長へとつなげています。今回の調査結果からは、そうした姿勢のもと、事業運営における回復力と機動力を高めるために、現地化・地域化を戦略の中核に据えるという明確な転換が進んでいることが明らかになりました。このような戦略的な考え方が、予測困難な状況下でも機会を捉え、持続的な成長を実現する原動力となっています」

日本企業の動向については、EY Japan EY-Parthenonリーダーの川口宏次氏が次のように分析している。

「日本企業のCEOは、地政学的・経済的不確実性の長期化を強く認識しています。『1年以上続く』と予測する割合は77%、『3年以上続く』と見る割合も46%といずれもグローバル平均を大きく上回ります。

背景には、中国・台湾情勢、海外からの資源依存、円安・インフレなど複合的なリスクがあり、日本企業は慎重な姿勢を強めています。ただし日本のM&A市場の活発さを踏まえると、守り一辺倒ではなく、アクティビスト対応や資本効率改善、ESG対応のプレッシャーを背景にポートフォリオ変革が加速しています。

ノンコア事業の切り離しと成長領域への集中が進む中、今回の調査でも売却・スピンオフ・IPOを計画する企業が76%と高水準で、ジョイントベンチャーや戦略的提携への意欲も96%と突出しています。単独でのリスクテイクよりも、パートナーシップを通じて新市場や新技術へのアクセスを図る姿勢が鮮明です。

さらにサプライチェーン再構築の観点から、日本企業は現地化・地域化を不可逆的な戦略転換と捉えています。現地化を長期戦略と回答した割合は94%、地域化も74%と高く、背景にはトランプ関税や米中対立、台湾情勢、物流コスト高騰などによる圧力があり、グローバル一極集中モデルからの脱却が急務です。日本企業は『守りと攻め』を両立し、リスク分散と成長機会の確保を同時に進める戦略転換を加速させています」

日本企業が地政学的リスクや外的圧力から脱却するためには、M&Aや戦略的提携を進めながら、一極集中を避けて現地化や地域化などで業務効率化していくことが重要といえる。不確実性が続きそうな状況下で、CEOの積極的判断が求められる時代と言えそうだ。

「EY-Parthenon CEO Outlook調査」概要

Financial Times Groupの専門的調査・コンテンツマーケティング部門であるFT Longitudeに委託し、2025年の3月から4月にかけて世界中の大手企業のCEO1200人を対象に匿名のオンライン調査を実施。

回答者は、21か国(ブラジル、カナダ、メキシコ、米国、ベルギー、ルクセンブルク、オランダ、フランス、ドイツ、イタリア、デンマーク、フィンランド、ノルウェー、スウェーデン、英国、オーストラリア、中国、インド、日本、シンガポール、韓国)、5つのセクター(消費財・ヘルスケア、金融サービス、工業・エネルギー、インフラ、TMT〈テクノロジー・メディア&エンターテインメント・テレコム〉)から選ばれている。

調査対象企業の年間の全世界売上高構成は、5億米ドル未満(20%)、5億以上9億9,999万米ドル以下(20%)、10億米ドル以上49億9,999万米ドル以下(30%)、50億米ドル以上(30%)。

https://www.ey.com/ja_jp/newsroom/2025/10/ey-japan-news-release-2025-10-23

構成/KUMU

30年以上暮らした東京から実家に戻った地方在住フリーライター。得意分野は、ゲーム、アニメ、マンガやIT&デジタル関連など。自宅でリモート取材や自宅作業が増えたので、20年以上ぶりにフル自作PCを作成して活用中。最近の取り組みは、実家で発掘したセガマークⅢ以降の昭和から平成のゲーム機が動くか点検すること。

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