企業の意思決定はこれまでにない速さが求められているが、「電子帳簿保存法(電帳法)」対応や内部統制の強化で承認のプロセスには「記録を残す確実さ」が不可欠になっている。
チャットや口頭で即座に了解をもらうスピード感と履歴を残して承認責任を明確にする仕組みの両立は、多くの職場で課題だ。
その意味で業務プロセスを電子化して仕事の流れを効率化するワークフローシステムは、バランスを取るための中核ツールとして注目されている。
『デジタル化の窓口』を運営するクリエイティブバンクは、全国の企業の会社員・経営者を対象に、「申請承認の実態」と「ワークフローシステム導入」に関するアンケート調査を実施して結果を公開した。それによれば業務効率とガバナンスのバランスの取り方が、企業の競争力を左右しはじめている実態が見えてきたという。
申請・承認方法は「ワークフローシステム」が3割超
日常業務の申請・承認方法でもっとも多い回答は「ワークフローシステム」(32.5%)だったが、「書類(紙)」も28.1%と依然として高かった。デジタル化は進みながらも過渡期にあるといえる。
さらに「チャットでの承認」も14.1%で、紙とシステムの間に生まれた“チャット承認”という新しい層も存在していることがわかった。どこまで効率を求めてどこから形式を守るのかという線引きは、企業ごとの文化や意思決定のあり方が反映されているようだ。
7割超が承認スピードは成果に影響すると回答
承認スピードについては、生産性や成果に「影響する」と答えた人は26.5%で「多少影響する」を合わせると73.2%という高い数字になった。
「影響しない」と回答した人は5.3%で、承認の遅れがパフォーマンスを阻む要因として多くの人が感じていた。業務の進行は、意思決定の速さに大きく左右されているようだ。
小規模企業は6割が即日決裁と回答
承認スピードの重要性は実感されていたが、申請から承認の平均日数でみると、1~49人規模の企業が当日から翌日と約6割が回答してもっとも早い。
1000人以上の企業でも約4割が即日決裁と回答しており、承認スピードは、会社の規模間を問わず検討が進んでいるようだ。
中堅企業は“チャット承認”で柔軟さを探る
承認スピードを保つ方法としては、企業の規模によって手段が異なった。1~49人規模では「口頭」が24.2%で「書類(紙)」が42.3%と人の距離の近さでスピードを確保している。
1000人以上の企業では「システム(ワークフロー)」が53.3%で、規模の大きさを補う仕組みで即断を実現している。その中間層である中堅企業では「チャット」が高い傾向もわかった。
ワークフローの導入効果はミス削減とスピード向上
ワークフローシステムの導入による効果でもっとも多かったのは「ミスや漏れが減る」で46.8%だった。それに「業務スピードが上がる」(40.8%)、「業務の見える化」(41.3%)が続く結果になった。
“速さ”と”正確さ”という従来の二択は、いまは対立ではなく共存の段階に入りつつあり、手続きの透明化と可視化が進むことでスピードと精度を同時に高める組織構造が整い始めているともいえそうだ。
“チャット承認”が多いのは社内業務まで
申請・承認の手段を目的別に見ると「交通費・備品購入」ではチャットやメールなどのカジュアル承認が32.1%ともっとも高く、それに「勤怠・休暇」や「社内イベント」など社内完結型の業務に広がっている。社外の取引を伴う「発注・支払い」、「契約」、「外注」などの領域では正式な手続きが6割前後を占めた。
“チャット承認”はスピードを求める現場に根づきつつも金銭や契約が絡む瞬間に正式な手続きに切り替わっている現状があるようだ。これは企業が重視する線引きともいえそうだ。
これからの組織には、ワークフローの整備と現場判断の柔軟さの両立が求められるが、効率化だけを追うのではなく「速さのなかに確実さをどう織り込むか」が重要なポイントになりそうだ。
「「申請承認の実態」と「ワークフローシステム導入」に関するアンケート調査」概要
調査対象:国内在住の会社員・経営者の20代から60代男女
調査期間:2025年10月10日~2025年10月11日
有効回答者数:850名
調査機関:『デジタル化の窓口』(運営元:クリエイティブバンク)
調査方法:インターネットリサーチ(ジャストシステム「Fastask」利用)
出典:『デジタル化の窓口』
構成/KUMU







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