「仕事で落ち込む」「他人の言葉にイラッとする」──そんな時、物事の“見方”を変えるだけで、心は驚くほど軽くなります。 心理学の手法「認知的リフレーミング」は、ネガティブな思考のクセを意識的に書き換え、前向きな感情を育てるトレーニング。 今日からできる実践法をわかりやすく紹介します。
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仕事での小さなミスをいつまでも引きずって落ち込んだり、他人の何気ない一言にイライラしてしまったり…。無意識のうちに物事をネガティブに捉えてしまっている方も多いのでは。
そのネガティブ思考には、“ものの見方”や“考え方のクセ”が関係しています。
そんな考え方のクセを意識的に変えるだけで、心が軽くなり、前向きな気持ちになれるとしたらどうでしょうか。
この記事では、まさにそのための心理学的手法である「認知的リフレーミング」について、初心者にもわかりやすく解説します。
「コップに半分の水」といった有名な例え話から、日常生活や仕事の場面で「またネガティブになっている」と感じた瞬間にすぐに使える具体的な方法までをご紹介します。
認知的リフレーミングとは
認知的リフレーミングとは、ある出来事や状況に対する考え方のクセを意識的に変えることで、それに伴う感情や行動を変化させる心理学的な手法です。ストレスの軽減や、より前向きな適応を促すことを目的として、カウンセリングやセルフケアの分野で広く活用されています。
「コップに半分の水」を見て、あなたはどう考える?
認知的リフレーミングを説明する際によく用いられるのが、「コップに半分の水が入っている」という状況です。これを「もう半分しか残っていない」と捉えるか、「まだ半分も残っている」と捉えるかで、抱く感情は大きく異なります。
・ネガティブな考えのクセ「もう半分しか残っていない」→ 不足感、不安、失望
・ポジティブな考えのクセ「まだ半分も残っている」→ 満足感、希望、安心
このように、出来事そのものは同じでも、どのようなものの見方や考え方のクセでそれを見るかによって、私たちの心の状態は大きく左右されます。認知的リフレーミングは、このものの見方を意識的に、そしてより適応的な方向へとシフトさせるトレーニングと言えます。
考え方のクセはどのように作られるのか
考え方のクセは、生まれつきではなく、日々の経験や学習の積み重ねなどによって作られます。
例えば、幼少期にコップの水をこぼした時、「大丈夫だよ、一緒に拭こう」と言われて育った人は、「失敗は対処可能なものだ」という見方を学びます。一方で、「またこぼして!」と厳しく叱られ続けた人は、「失敗は取り返しのつかない悪いことだ」というクセがつきやすくなります。
また、学校や職場で、自分の意見を発表して「良い視点だね」と褒められた経験が多ければ、「発言することはポジティブなことだ」というクセが強化されます。
このように、親や周囲からの反応、自分自身の体験、所属する環境の常識などが繰り返されるうちに、特定の考え方が自動化され、深く考えなくても瞬時に反応する無意識のクセとして定着していくのです。
ネガティブ思考のクセをリフレーミングする方法
リフレーミングは難しいものではなく、日々の生活の中で意識的に行うことができます。ここでは、誰でもすぐに実践できる代表的な4つのリフレーミング手法を、具体的な例とともにご紹介します。
1.言葉を言い換える
リフレーミングの基本で、最も実践しやすいのが、言葉を言い換えることです。これは、ある出来事や自分の特性を表すネガティブな言葉を、意識的にポジティブな言葉や中立的な言葉に置き換える手法です。
言葉は、自分の感情や自己評価に直接影響を与えます。そのため、言葉を変えることでその出来事や結果への認識自体を変えることができます。
方法の例として、「失敗した」と感じた時に、それを「良い学びになった」や「新しい経験ができた」と言い換えます。また、自分の「頑固」という短所は、「意志が強い」や「信念がある」という長所として捉え直すことができ、「飽きっぽい」は「好奇心旺盛だ」とも表現できます。
このように、事実は変えずに使う言葉を変えるだけで、自分自身や出来事に対する否定的な感情を和らげ、ポジティブな側面に着目できるようになります。
2.視点を変える
1つの物事に捉われてしまう時に有効なのが、視点を変える手法です。これは、今の自分の視点から一旦離れ、別の角度から物事を捉え直すことを指します。
具体的には、他の人の立場に立ってその意図を想像してみたり、時間軸をずらして未来や過去から今を眺めたりすることです。
例えば、「上司に叱られて辛い」と感じた時、相手の視点になって「自分の成長を期待しているのかもしれない」と考えてみてください。あるいは、未来の視点から「1年後には、この悩みも笑い話になっているかもしれない」と想像してみることで、現在の深刻な感情と距離を置くことができます。
3.出来事を分割や解体する
これは、問題が手に負えないほど大きいと感じる時に有効な手法です。あえて問題を小さな要素に分解し、対処可能な部分とそうでない部分を見極めます。
例えば、「仕事が何もかもうまくいかない」と漠然と捉えるのではなく、「この案件は遅れているが、もう1つのタスクは順調だ」というように具体的に分けてみるのです。
こうすることで、「まずは1つの案件の遅れの原因を分析しよう」と次にとるべき行動が明確になり、過度な落ち込みを防ぐことができます。
4.自分に質問を投げかける
ネガティブな感情にとらわれた時、あえて自分自身に質問を投げかける手法も有効です。これは、思考停止になるのを防ぎ、新しい視点や可能性に気づくきっかけを意図的に作ることにつながります。
例えば、仕事で予想外のトラブルが起きたような時に、ただ落ち込むのではなく、「この状況から学べることは何だろう?」と自問することで、次に活かせる学びを探すことができます。
また、「もし親友が同じ状況で落ち込んでいたら、自分は何と声をかけるだろう?」と問いかけることで、自分自身を客観視し、冷静なアドバイスを引き出すことも期待できます。
文・構成/藤野綾子
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