日々の生活を支えるホームセンター。多くはオリジナル商品も取り揃えており、コスパのよさから、お世話になっている方もいらっしゃるだろう。
筆者もそんな生活者の一人である。中でも注目しているのが『カインズ』の「オリジナル食品」だ。価格の手頃さはもちろん、何よりもおいしくて、ハマった商品は切らさぬようオンラインストアでリピート買いしているほど。
筆者のようなファンは少なくないもよう。お店に行けば大容量のカートにたっぷりと買い込む姿を見かけるし、先日お邪魔した『カインズ』の発表会でも食品コーナーに人だかりができていた。
多くの人を惹きつけてやまない『カインズ』オリジナル食品。現在、開発を担当するマーチャンダイザー・上田典明さんに、その背景やヒットの理由を聞いた。
くらしを、よりよく、より便利に
『カインズ』は、1989年に設立し、埼玉県本庄市に拠点を置く。社名は英語の「Kindness(親切心)」をアレンジしたもので、お客様を思いやることを第一に、「くらしDIY」というブランドコンセプトを掲げ、全国に256店舗(2025年2月現在)を展開する人気ホームセンターである。
「私も含めて『カインズ』のメンバー(従業員)、お客様や地域のくらしを、創意工夫で、もっと楽しく豊かにしたいと考えています。だからオリジナル商品は、自分の実体験も含めてお客様が生活する中で困っていることを解決したり、もっと便利になったりするようなものを商品化しています」(以下「」内、すべてマーチャンダイザー・上田典明さん)
熱い想いから生まれたオリジナル食品の第一号は「お米」。『カインズ』ではもともと米の需要が高く、まとめ買いするお客も多かったのだとか。そこで「よりお求めいただきやすく、よい品で、豊かなくらしを提案したい」と、2000年前後に発売。時流に乗って、瞬く間に人気商品の一つになったという。
ホームセンターだからこそ「関連商品」で拡充してゆく
いまではシーズンにもよるが、オリジナル食品だけで約450品目をラインナップ。お酒をはじめとする飲料のバリエーションに自信がある、と続ける。
「飲料は、モンドセレクションを受賞した商品も多いカテゴリー。お米と並んで、お客様からの需要も高いですね。
商品の幅は、お米、お酒と、需要があるものの関連商品を拡充する形で、徐々に広げていきました。たとえば、お酒のおともになるスナックやナッツ類、飲料のお茶請けになるお菓子、そして炊きたてごはんのおともになるおかず、といった具合です」
関連商品を広げていく方法は、「食べ物×食べ物」の組み合わせだけではない。ホームセンターへ行くシーンを思い浮かべると、急に寒くなったから防寒グッズを買いたいとか、年末にお正月飾りが必要だとか、体感や歳時に合わせたものを探しに行くこともあるだろう。そうした「くらしのシーン」に合わせたオリジナル食品にも力を入れているそうだ。
「たとえば冬場なら、お正月飾りと一緒にお餅や鏡餅を並べる。夏場は酷暑に合わせて冷感グッズと一緒に熱中症対策食品を並べる、などといったふうに、くらしのシーンから生まれた季節限定のオリジナル商品も少なくありません。
お客様のくらしをイメージした売り場作りと、お客様の目的に寄り添った関連商品の開発は、食品だけでなく、すべてのオリジナル商品に共通する考え方です。これは企画から販売までを一貫して行う『カインズ』ならではの強みかもしれません」
高品質でコスパのいいオリジナル食品開発のポイント
『カインズ』の顧客は、ファミリー層や高齢者層が多いそうだ。また、お米を発売したころから変わらずまとめ買い需要も高いという。
そこで商品開発では、下記のポイントを意識。高品質でコスパのいいオリジナル食品を生み出している。
1.まずは「トライアル」で知ってもらう
とくに食品は、気になったとしても、味がわからないものに高いお金を出すのは冒険だ。だから商品開発では、「ワンコインで、まずはトライアルしていただくことを大切にしています」とのこと。
たとえば人気商品の『焼き干し芋』は、50g入り×4パック(398円・税込)と50g入り×10パック(880円・税込)でラインナップしているのも、そのため。最初に手に取りやすい4パック入りで試してもらい、気に入ったらよりお得な10パック入りを買ってもらうという流れだ。
「食品の場合は使う価格が限られていて、気軽にトライアルしてもらうためにもワンコイン以下。398円に設定している場合が多いですね。
とはいえ、いくら安くてもおいしくなければいけません。まずは品質第一。厳選した原材料や味わいへのこだわりはもちろん、お客様に手にとってもらえる量は?小分けはどのくらい入っていると満足するのか?などと、一つひとつ気を配って開発していきます」
2.商品開発担当者が足を運び、よりよいものをローコストで
価格と品質に見合った原材料や製法を探すのも、商品開発を担当するマーチャンダイザーの仕事。海外の展示会や国内外の工場にも、積極的に足を運ぶそうだ。
「とくに工場は、直接訪問することでこんなにおもしろいものを作っているんだ!という発見がありますね。工場の方と生産の交渉を行わせていただいたりもします。
開発を担当するマーチャンダイザーが、どんどん足を運んで現場の方と話をするというのは、『カインズ』に根付いた『なんでも自分たちの手で、まずはやってみる』というDIY文化の一つだと思います」
3.「大容量」でまとめ買いしやすく、中身は「小分け」で使いやすく
オリジナル食品の多くが、ひと袋やひと箱あたりの量が多い。一方で、中身は個包装になっていたり食べ切りサイズで分けられていたりと、小分けのものがほとんどだ。
「大容量なことで、よりお得に。そしてそれらを小分けにすることで、小腹を満たしたりお裾分けしたりと、より便利に、楽しく、使いやすくしています。
自分に置き換えても、大容量のものは開封後の品質の劣化が気になりますから、小分けだと助かりますよね。それに、小分けのほうが食べすぎも防げて健康的です(笑)」
4.「健康」意識の高まりに応える
おいしいものは食べたいけれど、なるべく健康的なものを選びたい。近年の健康意識の高まりに応えた食品も増やしている。中でもお菓子は、素材そのものを生かした味わいが人気だ。
「2023年に発売した『ポテトチップス うすしお味』(120g、198円・税込)と2025年に発売した『揚げ餅 塩』(18g×10袋、398円・税込)は、素材をシンプルにすることで健康志向の方からもご好評をいただいています。『ポテトチップス 塩』の原材料は、ジャガイモ・塩・油のみ、『揚げ餅 塩』の場合は、米・塩・油のみ。
どちらも揚げていますし、極論を言えばお菓子は食べないほうが健康かもしれませんが(笑)。お菓子がもたらす心の健康もありますよね。より幸せに、少しでも罪悪感なく食べていただけることも考えています」







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