AIを搭載したソフトウェアはたいていの場合、ネット接続が必要なクラウドサービスが多く、サブスクリプション型で料金を継続的に支払いながら利用するタイプが当たり前になってきた。
そうした中、時代の流れに逆行するかのように、従来主流だった「オフライン・買い切り型」ソフトがぞくぞく登場しており、人気を博している。
主要メーカーへのインタビューのもと、オフライン・買い切り型ソフトのメリットを探る。
オフラインのAI文字起こし・翻訳ソフトでセキュリティ保持
ソースネクスト株式会社は、AI文字起こしソフト「RecText AI」やAI翻訳ソフト「AI本格翻訳」などのAIを活用したソフトを手がけている。これらはいずれも「オフライン・買い切り型」だ。
直近ではいずれもアップデートし、「RecText AI」は英語の文字起こしに対応し、より自然な文章に。「AI本格翻訳」では専門用語辞書の新搭載に加え、新たに6言語での翻訳が可能になった。
どちらも便利そうなソフトだが、オフラインで使えて買い切り型というのはめずらしい。その背景として、ソースネクスト 製品企画担当者は次のように話す。
「2024年にAI処理専用のチップ NPUを搭載したPC(AI PC)が多数登場しました。そこで当社ではオフラインでAIを活用できる環境が増加することを見込み、AI研究開発チーム“ソースネクストAIラボ”において、パソコンのローカル環境で動く高性能かつ、一般的なパソコンで動作できる軽量化を両立したソフトの開発・販売を開始しました。すでに世の中にあるAIサービスに対して『オフラインで使えるものはないか?』というニーズもあったため、それに応えるかたちで製品化したのが『RecText AI』や『AI本格翻訳』です」
●オフラインで使用できるメリット
「RecText AI」と「AI本格翻訳」がオフラインで使えることのメリットにはどんなことがあるだろうか。
「オフラインAIの最大のメリットは機密情報や個人データを外部に送信せずに処理できる点です。例えば会議の文字起こしや契約書、仕様書などの翻訳作業も、パソコン内で完結するので情報漏洩リスクを大幅に低減できます。
また通信環境に左右されず、どこでも安定して使えます。飛行機や新幹線などの通信環境がない、または安定しない移動中でも問題なく使える点もご好評いただいています。そのほか製造現場では通信環境がない中で、海外の開発・技術情報の翻訳などの用途で活用されています」
●買い切り型のメリット
買い切り型であることのメリットも気になるところだ。
「買い切り型は、初期投資は必要ですが、長く使うほどコストパフォーマンスが高くなります。サブスク型のように契約や毎月の支払い、更新手続きの手間がなく、購入後は追加費用なしで使い続けられる安心感があります。また製品改善も続けており、アップデータ配信も行っているので、買い切り型でも遜色なく利用いただけます」
AIを、セキュリティを保ちながら手間なく利用できる点は、“かゆいところに手が届く”意味で重宝しそうだ。
オフライン環境で使える生成AI議事録作成ツール
続いては、AIプロダクト提供やAIコンサルティング・開発サービスなどを行うNishika株式会社が手掛ける、生成AIを利用した「SecureMemo」だ。企業向けのソフトであり、オフライン環境で生成AIが音声文字起こしと議事録作成を行う。
出力されたテキストファイルもローカル環境内で安全に保存されることから、高いセキュリティ要件が求められる企業や自治体、医療機関などでも使いやすい。音声認識AIの精度は96.2%を独自チューニングで実現している。
●オフラインにこだわる理由
同社の執行役員 セールス・マーケティング担当 角本洋介氏は、オフラインにこだわる理由として次のように話す。
「機密性の高い会議音声を社外に出さず、その場で確実に文字起こし・要約まで完結させるためです。役員会議、開発レビュー、医療・法務相談、公共分野の会議などは、録音データのクラウド搬送そのものがむずかしい現場が多くあります。SecureMemoは、PCや社内サーバー上で音声処理を行い、文字起こし・話者分離(誰が話したかの判別)・要約までローカルで完結します。通信障害や外部APIの仕様変更の影響を受けず、環境が限定された形で運用が回るので、監査や情報セキュリティ審査にも乗せやすいなど、“安心して運用できること”を最優先に設計しています」
●反響の声
「導入は官公庁、製造、医療、金融、法務・コーポレート部門、コールセンター等が中心です。多くいただく評価は次のとおりです」
「録音データを社外に出さずに済むのでコンプライアンス上の不安が解消した」
「会議後の議事録作成が“60~90分→10~15分”に短縮。レビューも早くなった」
「端末/社内ストレージ内で権限と監査が完結し、監査対応の説明がしやすい」
企業では業務へのAI利用が活発化しているが、オフラインでAIを利用できる点はセキュリティをはじめとした運用・ガバナンス面で安心感がある。
AI時代だからこそ、「オフライン」や「買い切り」のニーズが新たに生まれているのかもしれない。
取材・文/石原亜香利
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