日産自動車が、家電量販店のノジマに対してサッカーJ1の「横浜F・マリノス」の売却を打診していたことが話題になりました。
その後、横浜市が市内での活動継続を要望したこともあり、日産が筆頭株主として継続的にクラブ運営をすることが決まっています。
ノジマが売却候補に挙がったのはなぜなのでしょうか? 実は傘下に入ってもおかしくない十分な理由がありました。

スポーツを通じて地域の社会貢献に力を入れてきたノジマ
横浜マリノス株式会社は1972年設立の日産自動車サッカー部が源流。1992年に運営会社である日産フットボールクラブ株式会社を設立した後、フューゲルスと合併。フューゲルスにはANAが出資していたため、70%が日産、30%がANAという資本構成になりました。
2014年に「マンチェスター・シティFC」を傘下に持つシティー・フットボール・グループから19.95%の出資を受け入れました。Jリーグのチームに外国資本が入った初めてのケースです。
その後も日産は横浜マリノスの筆頭株主としてチームの活動を支えてきました。
しかし、日産は2025年3月期に6709億円もの純損失を出してしまいます。大胆なコスト構造の見直しに踏み切らざるをえなくなりました。リストラ優先で「日産スタジアム」の名も更新されるか微妙な状況に。契約は2027年2月末で終了します。
山中竹春市長は9月26日の記者会見で、「市民にとって一番良い方法を検討したい」と述べるなど、この件には危機感を覚えている様子が伺えます。横浜市は現在の半額以下の年間5000万円で更新を受け入れる方針でしたが、市議会からは安すぎるとの声も挙がりました。
日産スタジアムの命名権の取得と、横浜マリノスの買収に意欲を見せたのがノジマでした。
ノジマは神奈川県相模原市で創業し、長きにわたって横浜市に本社を置く会社。神奈川県や横浜市にゆかりのある企業です。
そしてスポーツを通じた地域貢献にも積極的。「横浜DeNAベイスターズ」とは2008年にスポンサー契約をしており、コラボ商品の展開もしています。アメリカンフットボールチーム「ノジマ相模原ライズ」の冠スポンサーで、その活動を支えてもきました。
横浜市出身のフィギュアスケート選手・鍵山優真さんのスポンサーでもあります。
エンタメ産業の成長にも尽力中
サッカーチームへの出資は、IT系の会社が知名度を高める手段として活用してきました。楽天の「ヴィッセル神戸」、サイバーエージェントの「FC町田ゼルビア」、MIXIの「FC東京」などです。

新興企業にとってサッカーチームの取得は魅力度が高いのは事実。横浜マリノスを手にしたいと考える若手の経営者も多いでしょう。
日産は売却する意向を取り消し、筆頭株主であり続ける決断を下しました。その声明文の中で、「横浜F・マリノスは日産の伝統と価値観、地元を大切にする姿勢の象徴であり、私たちは今後もチームの目標達成や将来の発展を支援し続けます。」と語っています。
つまり、位置づけとしては地域貢献の意味合いが強く、ノジマと志は同じなのです。
日産は株式の一部売却を検討しているようですが、同じ目的意識を共有するという観点からノジマは連携先として相応しい相手であるように見えます。
また、ノジマが足元でM&Aによる事業の多角化を進めており、エンタメ事業に力を入れている点も見逃せません。
ノジマは2024年にソニー・ピクチャーズエンタテインメントからアニメ専門チャンネル「アニマックス」と、子供向けチャンネル「キッズステーション」を取得していました。
2021年には海外ドラマ専門チャンネル「AXN」「AXNミステリー(現ミステリーチャンネル)」も買収しています。
事業構造上も、スポーツとの相性は良いのです。







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