もしメンタルヘルスによる休職者が出てしまった場合、休職者自身とそれによって職場環境や周囲の意識などはどう変化するのか。社内規程DXサービス『KiteRa Biz(キテ ラビズ)』と社労士向けサービス『KiteRa Pro(キテラプロ)』を展開するKiteRa(キテラ)は、全国のビジネスパーソンを対象とした 「メンタルヘルスに関する実態調査」 を実施した。調査は、 当事者である休職経験者と休職者がいた職場の正社員の二軸で行い、休職の申し出・引き継ぎ・復職といった各局面を横断することで正確な実態把握を狙っている。休職者が発生した時の会社側のフォロー(業務割り振り・規程順守・情報共有の配慮)が足りず、休職者本人、休職者が所属していた部署の正社員両方が不安・不満を持っていることがわかった。
当事者の6割超が休職申出時の会社対応に不満
休職経験者に「休職を申し出た時に会社の対応に不満はありましたか」と質問すると、「はい」が64.9%で「いいえ」が35.1%だった。「はい」と回答した人に複数回答で「どのような対応に不満を感じましたか。あてはまるものをすべてお選びください」という質問をすると、「配置換え(説明不足・不 一致)」(44.1%)、「休職制度・手続き案内の不足」(39.6%)、「退職勧奨」(36.7%)というランキングになった。
休職経験者に「休職前の業務引き継ぎは円滑に行われましたか」 と質問したところ、「はい」が60.3%で「いいえ」が39.7%だった。「休職に入る時に不安はありましたか」という質問では、「はい」が 83.8%で「いいえ」が16.2%という結果だった。
職場側の6割以上は休職者発生後の業務量が増えたと回答
職場側として休職者がいた部署の正社員に、「休職した人が抜けた後、あなたの担当業務量はどう変化しましたか」と質問したところ、「業務量が増えた(大幅に増えた/やや増えた)」が62.5%、「業務量が減った(大幅に減った/やや減った)」が2.2%、「変わらない」が35.3%という結果になった。6割以上が増えたと思っていたが、変わらないと思っている人も一定数は存在した。
休職者に関連する会社側の取り組み、所属部署の正社員で肯定的に評価したのは約4割
職場側である休職者がいた部署の正社員に、休職者に関連する会社側の取り組みについての評価を質問したところ、「休職した人の担当業務は、ほかの社員に過度な負担がかからないよう、適切に割り振られたと思いますか」に対しての肯定(ややそう思う/とてもそう思う)は39.7%、 「休職した人が抜けた組織を会社が積極的にフォロー(支援)している姿勢やその効果を実感しましたか」に対しての肯定(ややそう思う/とてもそう思う)は39.2% 、「休職・復職の規程とその手順は実務でも概ね守られていましたか」に対しての肯定(ややそう思う/とても そう思う)は41.1%、「休職した人についての社内共有は、プライバシーに配慮して適切に行われたと思いますか」に対しての肯定(ややそう思う/とてもそう思う)は42.8%だった。
休職時点での復職意思は65.1%だが実際の復職は68.0%
休職経験者に「休職に入った時点で復職したいと考えていましたか」 という質問では、「はい」が65.1%、「いいえ」が34.9%だった。それに加えて「結果として休職後に復職しましたか」という質問では、「はい」が68.0%、「いいえ」が17.6%、「休職中」が14.3%だった。休職後の復職に不安があったかについては、「はい」が90.9%で「いいえ」が9.1%という結果だった。
復職時の会社のケアを手厚いと感じたのは半数以上
休職経験者であり「結果として休職後に復職した人」に、復職時に会社のケアやサポートを手厚いと感じたかについて質問すると、「はい」が54.3%、 「いいえ」が45.7%だった。復職時に会社からのケアやサポートが手厚いと感じた人に、複数回答で「受けたサポートを教えてください」と質問したところ、もっとも多かったのは「試し出社(リハビリ出社)」が40.2%だった。それに「短時間勤務・段階的時間延長」が37.4%、「リワーク」が37.4%、 「復職支援プログラム(社内・外部)」が37.4%だった。回答の上位は、復職の入口整備が中心で「業務量・責任の段階的調整」(29.0%)や評価保護期間(11.7%)など復職後の運用面の調整は低い傾向だった。
人員不足時の現場対応は既存メンバーで分担が6割以上
休職者がいた部署の正社員に「あなたの部署/チームで休職により人員が不足した際に会社(人事・上長など)が実施したフォロー(支援)をすべてお選びください(複数回答)」と質問したところ、「業務の優先度を明確化」が37.8%と最多だった。それに「施策なし」が30.4%、「バックフィル採用・配置転換」が27.4%、「残業抑制・負荷調整の指示」が26.6%と続いた。
「あなたの部署/チームで休職により人員が不足した際に実際に行った対応をすべてお選びください(複数回答)」という質問に対しは、もっとも多かったのは「既存メンバーで分担」(64.9%)だった。続いて「一時的代替要員の雇用(派遣・アルバイト等)」が32.1%、「他部署の応援」 が19.5%で、「施策なし(各自が対応)」と回答した人は15.6%だった。「復職受け入れ時に実施された支援をすべてお選びください(複数回答)」という質問では、もっとも多かったのは「一時的な業務軽減」が49.0%で、次いで「段階的復職(短時間・短日から 開始)」が31.5%、「在宅・柔軟勤務の活用」が25.2%という結果だった。
休職規程は7割が整備と回答。主な規定項目は「受診勧奨」45.5%など
休職経験者に「勤務先に私傷病による休職規程(就業規則・内規・ガイドラインなど)は設けられていますか」と質問すると、「はい」が70.6%、「いいえ」 が29.4%だった。休職規程が「ある」と回答した人に「休職規程に規定されている項目を教えてください(複数回答)」と質問すると、回答が多い順に「受診勧奨」(45.5%)、「主治医への情報提供依頼に対する協力義務」(44.5%)、「休職の判断基準」(40.3%)、「休職期間(上限期間・延長可否・短縮・中止)」(40.1%)という結果になった。
復職規程は7割が整備。「復職の判断基準」は半数以上
休職経験者に「勤務先に私傷病による復職規程(就業規則・内規・ガイドラインなど)は設けられていますか」と質問したところ、「はい」が70.8%、「いいえ」が 29.2%という結果だった。 復職規程が「ある」と回答した人に「復職規程に規定されている項目を教えてください(複数回答)」と質問すると、もっとも多かったのは半数以上の回答があった「復職の判断基準(医学的所見・勤務要件)」(51.2%)だった。それに「試し出社(目的・期間等労働条件)」(43.7%)、「復職の手続き方法(必要書類・期限)」(41.2%)、「復職後の職務内容(原職復帰/配置転換の基準)」(39.0%)が続いた。
復職後の定着は約6割。退職理由の約3割は体調の再悪化・再休職
休職経験者に「復職後も同じ職場で働き続けていますか(過去5年以内の休職経験者・正社員)」と質問すると、「はい」が62.0%、「いいえ」が38.0%だった。復職後に退職した人の「復職後に退職した主な理由(複数回答)」については、回答が多い順に「体調の再悪化・再休職」(29.9%)、「配慮不足(業務量・残業・通勤等)」(24.8%)、「人間関係の悪化(理解不足・不信感)」(22.6%)、「ハラスメントの継続・再発」(18.2%)というランキングになった。
会社の対応を踏まえた転職・退職意向「考えている」37.8%、
職場側である休職者がいた部署の正社員に、休職者が出た時の会社の対応を踏まえて今後の転職・退職について質問すると、「転職・退職を考えている(やや考えている/強く考えている)」が37.8%、「既に転職・退職した」が4.1%、 「考えていない(あまり考えていない/まったく考えていない)」が25.7%、「どちらともいえない」が32.3%という回答結果になった。4割近くが休職者が出たことで、転職・退職を考えたようだ。
今回の調査では、入口(休職入り83.8%)の不安と出口(復職90.9%)の不安が高く、その背景にある初動設計・現場運用・復帰後運用の連結不足が問題点として推察できた。申出直後から休職入りまでの「安心設計(制度案内、選択肢提示、関与者の役割明確化、合意形成)」を起点に、復帰後の段階的運用(業務・責任・評価の段階設計とモニタリング)までの動線をつなぐことが当事者である休職者の不安を抑えつつ、現場の負荷平準化とエンゲージメント維持に有効といえそうだ。転職・退職の要因にもなりうるので、休職者に対する対応は企業にとって考慮すべきポイントといえるだろう。
「メンタルヘルスに関する実態調査」概要
調査対象:
(1)当事者(休職経験者)/過去5年以内に業務に起因するメンタル不調で休職したことがある18歳~65歳のビジネスパーソン
(2)職場側(求職者がいた部署の正社員)/過去2年以内に業務に起因するメンタル不調により休職した人が所属部署にいた18歳~65歳のビジネスパーソン
調査期間:2025年9月16日~2025年9月19日
調査方法:インターネットによるアンケート調査
調査企画:KiteRa
有効回答:
(1)当事者(休職経験者)への質問/579名
(2)職場側(求職者がいた部署の正社員)への質問/365名
*構成比は小数点第2位を四捨五入
構成/KUMU







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