 
						水族館で優雅に泳ぐ魚たちを『寿司ネタ』というパワーワードで括り、館内の魚を楽しみながら寿司ネタとしての魅力をアピールする展示も行うなど、独創的な企画で話題になっているのが、富山県の魚津水族館だ。
日本最古、112年の歴史を持つ水族館の再起
この水族館、日本で最も古く、その歴史は112年。老朽化や経営難などで何度か閉館するも、その度に富山県民、そして全国のファンの支えにより蘇ってきた。
昨年、改修工事のために実施した「ふるさと納税型クラウドファンディング」では、2000万円の目標に対し、全国から4600万円以上の支援が寄せられたという。
老舗水族館なのに刺激的、且つみんなに愛されている。
現存最古の地方水族館が何度も息を吹き返し、時代を捉えた企画で話題になっているのはなぜなのか?
今回その秘密を探るべく、魚津水族館の飼育研究係長・門田さんに話を聞いた。
――「寿司ネタ見るなら、魚津水族館」というキャッチコピー誕生の経緯を教えてください
「富山県では「寿司といえば、富山」というブランディングプロジェクトを実施しており、そんな中で市内の企業様から「寿司ネタ見るなら、魚津水族館」というコピーを授かったのがきっかけです」
「また、プロジェクトの一環で寿司ネタの写真を使った『寿司ネタ入館券』もありますし、館内の魚たちを寿司ネタとして紹介している『寿司マップ』も作成しています」
11月まで開催中の寿司を前面に押し出した「寿司展」では、寿司の歴史や職人の技など、飼育員が直接取材した内容をパネルや映像でまとめて紹介。さらに、、、
「通常では寿司ネタにならない魚の展示やその魚の食レポも公開しています。コンセプトは『大人も楽しめる企画展』です」
正直これまで、水族館の魚を見て「あれ美味しそうだな」と思うことは不謹慎だと思っていた。だが、ここまで振り切っている水族館には魅力しか感じない。
そして飼育員の皆さんも、そう思われることが誇りだという。
「生物が美味しそうに見えるということは魚たちが健康な証拠なので、食の目線でも常設展を楽しんでもらえることに期待しております」
「展示生物を「美味しそう」と言ってくれることは飼育員にとって誉め言葉なんです。「かわいい」だけでなく「食べたい」と思える魚を探しながら楽しんでもらえることに我々は期待しています」
海の幸と直結する魚津水族館にとってはそれこそが至福の極み。積極的に寿司をピックアップすることで、たくさんの魚の魅力を拡めている。
――魚津水族館の推し魚を教えてください
「富山湾大水槽にいるコバンザメの「バンちゃん」。まるまると太って入館者に福福感を振りまいています。同じく大水槽のホシエイもおすすめです。裏面が顔に見えるため大変人気があります」
そんな魚津水族館は、全国から4600万円以上の支援が寄せられ、先頃新しく生まれ変わったのだが、地方の小さな水族館がいつまでも愛される理由は何なのか?深堀りしていく。
富山にこだわり、生き物にこだわる水族館の新しいカタチ
一風変わったイベントを開催して話題になっている魚津水族館では、毎年話題になっているテーマに沿って企画展を行っているという。
平成14年にも「食」にスポットをあてた企画展として、全国で珍しい海産動物の食を紹介した「びっくり!!海の幸」展を開催。これも好評だった。
そして今回は寿司にまつわる企画を展開しているわけだが、お客さんの反応は?
「一般的に博物館、特に水族館というと入場してから「すごい」「きれい」「かわいい」などのイメージが強いと思われますが、そんな中、「面白い」「美味しそう」という声が多く、いろんな方に楽しんでもらえていると実感しています」
「館内を紹介する“寿司マップ”を見ながら楽しまれる方も多く、これまでとまた違った視点で展示内容に興味を抱いてもらえているような気がします」
他の水族館では味わえない魚津水族館ならではの魅力。さらにこんな特長も。
「春先には、県の魚となっている「ブリ、ホタルイカ、シロエビ」を全て見ることができるのは当館だけです。また、生物展示だけではなく、パネルや映像を通じて最新の研究紹介や飼育スタッフから生物の魅力を聞くことができるイベントも実施しています」
昨年、老朽化が進んだ施設の改修工事を行い、今年3月にリニューアルオープンした。
1981年に作られた日本初の全面アクリル製の水中トンネルも健在。リニューアルに合わせて登場した「田んぼの生物多様性コーナー」では実際に稲穂も実り、キタノメダカやアカハライモリなどが元気に暮らしている。
目標の2.3倍の支援金が集まったクラファンの支えを始め、県内外のお客さんの熱い応援が老舗水族館の力となっている。
これからも魅力的なスポットとして成長していくために必要なことはなんなのか?今後の展望を聞きたい。
「当館は、「富山にこだわった展示」を中心に行っているので、今後も富山の特異な地形にスポットをあてていきたいですね」
「飼育だけではなく、深海生物や発光生物の調査・研究、また、「富山の食」に関する展示、イベントも積極的に行っていきたいと思っています」
取材協力
魚津水族館
魚津水族館 公式X @uozuaquarium
魚津水族館 公式インスタグラム @uozuaquarium_official
文/太田ポーシャ
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