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3年間無休で働き、デートは現場、新婚旅行はキャンセル、エリアリンク鈴木社長36歳のがむしゃらすぎる成功哲学

2025.10.27

コロナ後、テレワークが普及して自宅で過ごす時間が増え、室内の整理・収納スペースへの需要が高まっている。都市部では住宅の平均床面積が縮小傾向にあり、収納スペース不足は大きな課題となってきた。さらに、大量消費時代が終わり、自分が気に入った少数のモノを大切に使いたいという機運が高まるなか、トランクルーム需要は右肩上がりで伸びている。

今回は日本最大級のレンタルトランクルーム「ハローストレージ」を運営するエリアリンク社長鈴木貴佳さんに、ストレージ事業の可能性や、36歳で代表取締役社長に任命されるまでの働きぶりについてインタビューしてみた。

超氷河期時代の就職活動

――学生時代に熱中していたことと、就職活動について教えてください。

鈴木社長 父が新潟大学の教授で競技スキー部の顧問だった影響もあり、大学時代はスキー漬けで、年間百日以上滑っていました。でも、世界で戦うようなトップスキーヤーは子供のころからスキーを履いて通学するぐらいの環境で育ち、幼いころから熱心に取り組んでいるので、とても敵わなかったです。就職してからはキッパリ辞めました。

就職活動は、ちょうどリーマンショックの直撃を受けた就職氷河期で、エントリーしても面接まで進めない。最初はだれもが知るような一流企業にエントリーしていましたが、どんどん落ちていって(笑い)。たまたまエリアリンクの募集を見つけて、内定をいただきましたが、全く乗り気じゃなくて、最初は自分を落とした会社に転職しようと思っていたぐらいでした。

でも、林尚道会長が期待して、愛情をかけて育ててくれました。林会長は「結果を出し続ける人にはいくらでも給料をやる」と言い、実際、結果に応じて給料はきちんと上げてくれました。それに応える形で、3年間で部長になる目標で、がむしゃらにやっているうちに、入社5年で執行役員になり、2023年に社長に就任しました。

――社長に就任して1)会長から引き継いだ文化と、2)新しく作り上げた企業文化について教えてください。

鈴木社長 林会長は仕事に真剣で全力なので、社内ではともかく厳しかった。特に言い訳が許せない。やっぱり上場企業をゼロから作り上げる人って普通じゃない(笑い)。トランクルームというこれまで日本になかった、全く新しいサービスを定着させて売り上げを上げていく、そのパワーは尋常じゃなかったです。

ただ、急成長したので、社内組織は成熟しておらず、全部、トップが指示するやり方でした。しかし、売り上げが拡大して従業員が定着するようになり、組織のフェーズが変わってきた中で、これまでは積極的に行ってきた社内研修など過去は必要だったものでもそうでなくなってきたものがあちこちに出てきました。そこで今の体制に合わせたルールに変えて行ったのです。

――トランクルームも身近になってきました。

鈴木社長 エリアリンクは不動産活用を中心とした事業を展開し、トランクルームの「ハローストレージ」が売上の8割を占めています。

日本最大級の店舗数を展開し、認知度が高まり、市場が拡大して、地主さん達の間でも理解されるようになってきました。成長率は毎年3~5%と延びている中で仕事ができることはありがたいです。小さなパイを取り合うのではなく、常に前向きなマインドで仕事ができます。

特にトランクルームが普及しているアメリカでは日本の数十倍の規模があります。アメリカのパブリックストレージ社の時価総額では、7兆円規模で、日本の12倍、イギリスも日本より約5倍と多く、海外ではよく見るとストレージだらけの地域もあります。日本での市場拡大も期待できる状態です。

――ストレージサービスの質はどのように差別化されるのでしょうか?

鈴木社長 いろいろありますが、物件の設備が良いことや、コンテナの状態もあります。地面が砂利のまま貸し出すところもありますから。また、夜間の照明が無かったり、防犯面で問題があったり、空調設備、駐車場の有無、決済の簡便性もサービスの質に関連します。

とはいえ、なかなか差別化ができない面があるのも現状で、設備を向上させれば、コストが上がってしまう。それでもワインや金庫など、設備が整っているところを求めるお客様もいらっしゃいます。私どもでは現場が清掃されているか、現場が使いやすいかどうか、導線がどうなっているかなど、出店するときにはかなり細かく精査します。

――エリアリンクではさまざまな業界初を実現させてきましたが、簡単に解説してください。

鈴木社長 主に4つの業界初があります。1)トランクルームの不動産小口化商品「ハローAct」の提供を開始、2)トランクルーム「ハローストレージ」の12万室突破、3)47都道府県への出店を達成、4)トランクルーム事業者の運営サポート「パートナー制度」確立を実現させてきました。

最初に小口化商品の「ハローAct」ですが、相続で小口に所有権が分かれている土地でも、トランクルームとして活用していただけるサービスです。人気がありますが、それぞれに同意が必要であるなど、ストレージ側ではやりにくい面もあり、これまであまりやられていなかったサービスでした。

2)「ハローストレージ」の12万室突破は3)の日本全国47都道府県への出店を達成にも関連していて、僕が入社した時は関東一都三県、東海エリアで愛知、三重ぐらいで、東北は仙台を除き地方はほとんどなかった。事業の拡大を目標に、積極進出して、2023年に全国制覇しました。

現状として、今、地方の不動産屋さんが、長年お付き合いのある地主さんと作るトランクルームは多いのですが、そういうところは地元で雇用創出をしたいので、われわれが東京から行ってもなかなか進出しにくいのです。全国出店が難しい業態ではあります。

とはいえ、基本的にトランクルームは無人運営なので、事務所が無くても増やすのは可能です。最後、沖縄への出店が特に難しかったです。

――業界初の4つ目、トランクルーム事業者の運営サポート「パートナー制度」に力を入れています。

鈴木社長 パートナー制度はトランクルームに関わる運営や管理、集金などをハローストレージで代行するサービスです。パートナー契約した賃貸オーナーさんは運営管理の負担が無く、集客などもエリアリンクが引き受けるので、稼働率向上が実現し、収益の増加が期待できます。

これまであまり積極的ではなかったのですが、数が増えてきてニーズあることがわかり、昨年から特に力を入れています。

最近では、大手電鉄関連企業様にもパートナー制度を導入いただき、ご好評をいただいております。これまで人的リソースが避けずに、稼働率が下がっていたトランクルームについて、豊富な運営実績を持つエリアリンクが、集客から契約・解約、清掃、トラブル対応までを一括で担うことで、安定的な収益化が可能となりました。

少数精鋭で最低年収2000万円を目指す

――新卒者の給与を40万円まで引き上げ、2027年度 新卒採用から月給43万円を給付するという目標を立てていますが、従業員エンゲージメントアップについての考え方を教えてください。

鈴木社長 会社では「少ない人数で高い利益」という考え方を貫く方針で、給与もその方針にのっとって、設定しました。僕自身も若い頃はお金を稼ぎたくてがんばっていた面もあり、成果に応じてきちんと給与を上げてもらってきたので、僕も同じようにしていきます。もちろん、お金が人生のすべてじゃないけれど、人生においてお金で変えられることは多いと思っています。将来的には平均年収で2000万円という目標もあって、水準を上げることにこだわりたいです。

社員数が少ないので、給与を伸ばせる余地はたくさんあります。特にトランクルームはビジネスモデルがシンプルなので、「どれぐらいの土地で、いくらかかって、収益はどれぐらい上げられるか」を見通すことができます。だからこそ、目標や自分たちの目指すところを明確にし、計画を立て、確実に実行することが大切なのです。

先ほど企業文化という話が出ましたが、うちの会社のすごいところは、決めた目標や約束は、徹底して守り切るところにあります。全員、絶対にそれだけは守って仕事をしていて、「未達成では何も残らない」という共通認識があり、つらくても確実に達成させる。達成すればすべて報われる。これは林会長が作り上げてきた社風や文化で、今後もずっと変えません。

――鈴木社長自身、達成が危ういと感じたシーンはありましたか?

鈴木社長 3年目の時に部署の目標が危なかったので、新婚旅行を直前キャンセルしました。未達の危機なのにプライベートを優先するのは、自分で嫌だったのです。もちろんその後、家族を連れてハワイに行くなど、挽回していますよ。

――今、ワークライフバランスが叫ばれていますが、鈴木社長の考え方と、働き方のアドバイスがあれば教えてください。

鈴木社長 僕自身は入社後、約3年は一日も休まなかった。婚約時代のデートでは、トランクルームを一緒に見に行っていました。

確かにワークライフバランスは大切な要素ですし、時短が叫ばれているのも承知の上で、働き方についてアドバイスしたいのですが、大切なのは自分自身がどうなりたいか、どうしたいか、どんな人生を送りたいか、それを考えた働き方を選択することだと、僕は思います。

良い悪いじゃなくて、自分が夢見ることをどう実現させるか。本当に最優先すべきことは何かを知ることが大事だと思います。そうなると、それを叶えるためにはお金が必要だったり、家族を犠牲にしても、働かないといけない場面もあるでしょう。

家族を大切にしながら仕事も全力投球は、どうしたって難しいし、どちらかを最優先にしなければならない。そこがきちんと定まっていないからブレたり、仕事に身が入らない。

自分がどうしたいか、それを叶える働き方を、自分の中できちんと選択すべきだと思います。現実的に、公務員になって億万長者を目指すことはできないし、常にプライベートを優先していたら人よりも大きな収入は得られませんから。

――ありがとうございました。

エリアリンク 代表取締役社長 鈴木貴佳さん
新潟県出身、東京理科大学卒業後、2011年エリアリンク入社、2016年、取締役ストレージ本部長。2023年3月28日より代表取締役社長に就任。

文/柿川鮎子

Author
明治大学政経学部卒業後、経済系新聞社で自動車、ISOなどの担当記者に。退社後5年間、動物病院に勤務した経験から、飼い主さんの気持ちに寄り添ったペット記事を執筆中。 得意なテーマは 1)生産性向上などのマネジメント関連と、 2)犬猫やエキゾチックを含 めた飼育動物全般、の2つ。 作家として小説「犬にまたたび猫に骨」(講談社刊)、「極楽お不妊物語」(河出書房新社)を発刊。ノンフィクションでは小学館刊「全国から飼い 主が駆けつける!犬の名医さん100人データブック」、文春新書「動物病院119番」、ほか多数。趣味は野鳥観察、現在、2羽のオカメインコを溺愛中。

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