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「ABM」とは何か?B to Bマーケティングを変える新たな概念とメリット

2025.12.29

ABM(Account Based Marketing)の基本概念から、実践的な運用の手順まで解説しています。また、導入時のメリット・デメリットも確認しましょう。

BtoBマーケティングの世界で注目を集めるABMとは、どのような概念なのでしょうか?まずは、基本概念から活用法まで詳しく解説していきます。

ABMの基本概念と注目される理由

■ABM(Account Based Marketing)の定義と仕組み

ABM(Account Based Marketing:アカウントベースドマーケティング)は、自社にとって価値の高い特定の企業を『アカウント』として定義し、その企業の課題・意思決定構造に合わせた最適な提案を行うBtoBマーケティング戦略です。

従来の大量リード獲得型マーケティングとは異なり、限られたターゲット企業にリソースを集中し、営業部門とマーケティング部門が一体となって長期的な関係構築を重視します。この方法により、顧客企業ごとの収益向上や受注確度の最大化を図ることが可能です。 

■デマンドジェネレーションとの違いと使い分け

ABMとデマンドジェネレーションは、BtoBマーケティングにおいて相互に補完し合う戦略です。

デマンドジェネレーションは、幅広い潜在・顕在層に向けた、認知拡大とリード育成を図る『需要創出型』のアプローチを指します。

対して、ABMは事前に選定した特定の企業(アカウント)へ焦点を当て、組織全体の課題に合わせてパーソナライズされた提案を行う『重点ターゲット型』手法です。

両者を組み合わせることで、広い市場認知から高精度な営業接点の形成まで、BtoBの成果最大化を狙う統合型マーケティング戦略が実現します。

ABM実施の具体的手順とプロセス

パソコンを操作する手元
(出典) pixta.jp

ABM実施には、いくつかの具体的なプロセスが不可欠です。ここでは、実践的なABMの実施手順を解説するので、マーケティングを始める前に確認しておきましょう。

■ターゲットアカウントの選定方法と評価基準

ABMを効果的に進めるためには、戦略性とデータ精度を両立させたターゲットアカウント選定が不可欠です。このプロセスでは、将来的なLTV(顧客生涯価値)や投資意欲、業界・企業規模・地域などの複数指標をもとにスコアリングを行い、優先度の高い企業を『Tier1』、次点を『Tier2』として整理します。

さらに、CRMや既存顧客データから成功パターンを分析し、共通点を抽出することで狙うべき企業像を明確化しましょう。公開データだけでなく、営業現場で得られる一次情報(商談ヒアリング・顧客フィードバックなど)を組み合わせることで、選定精度が大幅に向上します。

とりわけ、営業・マーケティング双方の責任者が、協働して検証する仕組みを全社で設けることが、実用的で再現性の高いターゲットリスト構築につながります。

■パーソナライズされたコンテンツ戦略の立案

ターゲットアカウントを選定した後は、企業ごとの課題や業界動向を踏まえ、パーソナライズされたコンテンツ戦略を立案します。

ABMの効果的なコンテンツ戦略は、明確な目標設定と成果指標の定義から始まり、ターゲット企業の意思決定構造・ニーズを深く理解することが不可欠です。その上で、営業・マーケティング・制作チームの役割を整理し、チャネル設計・コンテンツテーマ・タイミングを一貫して構築します。

高い成果を狙う場合、AIによるデータ分析と人の創造的発想を融合した『ハイブリッド型コンテンツ設計』が効果的です。ターゲット企業に高い確度で響くコンテンツを提供し、ABM全体のROIを最大化できます。

■マルチチャネルでのアプローチ実行方法

ABMを成功に導くためには、顧客との接点を最適化したマルチチャネルアプローチの設計が欠かせません。

まず、顧客にとって使いやすいチャネルを選択することが基本です。市場調査やデータ分析を通じて、ターゲット企業がどのようなチャネルを好むか把握しましょう。

次に重視すべきは、各チャネルでの発信に一貫性を持たせることです。異なるチャネルでも統一したブランドイメージやメッセージを維持することで、顧客が自社を単一のブランドとして認識できるようになります。

マルチチャネル戦略では、オンライン施策(SNS・Web広告・メール)とオフライン活動(展示会・営業訪問)を統合し、顧客接点全体での一貫したエンゲージメントを設計します。

ABM導入で得られる主なメリット

企画会議
(出典) pixta.jp

ABMのメリットは非常に幅広く、ROIの向上や営業効率の最適化、さらには顧客ロイヤルティの強化まで多岐にわたります。ここでは、BtoB企業が成果を最大化する上で特に重要な要素に焦点を当て、その効果と実践方法を詳しく紹介します。

各メリットを正しく理解し、自社の戦略に組み込むことで、ABMの持つ本来の価値を最大限に発揮できるようになるでしょう。

■ROI向上と営業効率の大幅改善

ABM導入の最大のメリットは、ROI(投資対効果)を高めながら営業活動の効率を飛躍的に改善できることです。従来のリード獲得中心のマーケティングから脱却し、営業リソースをROIの高いアカウントに集中させることで、生産性の高い営業環境を構築できます。

特に、成約見込みの高いターゲット企業のみに絞ったアプローチは、無駄な営業活動を削減し、商談の精度とスピードを同時に向上させます。

さらに、企業別の課題・ニーズを把握した上で、最適化されたパーソナライズコンテンツを提供することで、顧客の共感と信頼を得やすくなり、受注確度を大幅に向上させることが可能です。

■営業とマーケティング部門の連携強化

ABMは、営業とマーケティングの分断を解消し、双方の連携を強化するための実践的な仕組みです。従来のリード中心型マーケティングでは、マーケティングが『リード数』、営業が『売上』に焦点を当てる構造が分業を生み、全体最適が困難でした。

しかし、ABMでは特定のターゲットアカウントを基準に、両部門が共通のKPIと意思決定軸を共有することで、組織全体が同じ方向に向かって動く一体型体制を構築できます。

この仕組みを定着させるには、CRM・SFA・MAツールを連携させてアカウント単位のデータを統合し、段階ごとのプロセスをテンプレート化して再現性を高めることが重要です。

誰が担当しても同水準の成果を再現できる運用基盤を確立することが、ABMを企業文化として根付かせる最初のステップになります。

■顧客体験向上による長期的関係構築

ABMでは、企業ごとの課題・業界特性に合わせたパーソナライズされたアプローチを通じて、顧客体験を最適化し、信頼に基づく長期的な関係を築くことができます。

顧客ごとに最適化されたメッセージ・提案を行うことで、「自社を深く理解してくれている」という安心感を生み出します。その結果、双方の関係は単なる取引相手から、戦略的パートナーシップへと発展するでしょう。

また、顧客の成功を支援する継続的なサポートや体験価値の提供により、ロイヤルティを高め、顧客生涯価値(LTV)の向上を実現します。

さらに、定期的なフィードバック収集や顧客コミュニティ、限定プログラムの展開によって、ブランドとの深いつながりを強化し、長期にわたる信頼関係と支持基盤を確立できます。

ABM導入時の課題とデメリット

予算を立てる
(出典) pixta.jp

ABMの導入にはメリットがある一方で、いくつかの課題・デメリットも存在します。課題を事前に把握し適切な対策を講じることで、ABMの効果を最大化し、持続可能な戦略として定着させることができるでしょう。

■初期投資コストと予算設計の課題

ABMの導入には多大なメリットがありますが、初期投資コストと予算設計は慎重に検討する必要があります。ツール導入費や顧客データ整備、社内体制構築には一定の初期投資が必要であり、特に中小企業では導入コストが大きな障壁となる場合があります。

費用対効果を最大化するためには、短期的な費用回収ではなく、顧客生涯価値(LTV)の観点から中長期的なROIを評価することが重要です。ABMは、特定の企業との信頼関係を長期的に構築し、将来的な収益を生み出す戦略であるため、継続的な投資として設計する必要があります。

また、自社の営業規模やリソースに応じて段階的に導入規模を設定し、費用体系が自社に適したABMツールを選定することが欠かせません。予算設計段階では初期費用に加えて、運用人件費・ツール維持コストを含めた総費用を試算し、持続可能な運用を前提に戦略を組み立てましょう。

■専門人材の確保と組織体制整備の困難さ

ABMを成功させるには、専門性を持つ人材の確保と組織体制の最適化が不可欠です。

マーケティング部門にはデータ分析力・リサーチスキル・高度なコンテンツ制作力が求められ、営業部門には課題解決型提案力・経営層とのコミュニケーションスキルが必要です。両部門に共通して、成果を統合的に管理するプロジェクトマネジメント能力も欠かせません。

しかし現実には、これらのスキルを兼ね備えた人材は市場でも希少で、多くの企業ではABM専任チームを構築できないのが実情です。この課題に対しては、スモールスタートによる社内人材育成、外部パートナーやABM支援企業の専門知見の活用、そしてテクノロジー(MA・CRM)の導入による自動化が有効です。

ABMの成果を最大化するためには、戦略やツールだけでなく、それを実践できる人と組織を持続的に育成することが求められます。これにより、ノウハウが社内に蓄積され、長期的なマーケティング基盤の強化につながります。

ABMの導入は基本概念や課題の把握が重要

マーケティング会議
(出典) pixta.jp

ABMは、取引先企業に対する営業を行うときに効果的な、マーケティング手法です。各企業に合わせたマーケティングを取り入れられるため、高い効果が期待できます。

メリットも多い手法ですが、企業の体制・予算によってはデメリットもあるため、導入前に検討が必要です。運用の手順や基本的な概念を把握した上で、自社に合うかを考えてみましょう。

構成/編集部

Author
IT系専門学校を卒業後、事務職やコールセンターのオペレーター勤務を経て2016年よりライター業を開始。 主な趣味はポイ活・投資・読書・競馬鑑賞など。 時間があればポイントサイトの比較やチェックをしている。

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