2人のバリスタ監修による、まったく異なる2種類の味
MC-SVD40Aが他社コーヒーメーカーと異なる点はもうひとつある。それが「コーヒーにあわせてドリッパーとノズルを変更できる」という仕様だ。
コーヒーの世界には、大きく分けて浅煎りのスペシャルティコーヒーと、深煎りで苦味を活かしたクラシックな喫茶店風スタイルがある。
MC-SVD40Aはこの両方に対応するため、2種類のノズルとドリッパーを付属。さらに、それぞれのモードにコーヒー界の第一人者を監修につけるという贅沢な特徴を持っている。
たとえば、コーヒーの濃厚な味わいと深いコクが好きなら、深煎りの豆に向いた「クラシック」モード。このモードを監修したのは、世界中にファンがいる渋谷の喫茶店「茶亭 羽當」の天野大氏だ。
昔ながらの深煎りコーヒーを得意とする天野氏の流儀を再現するため、ノズルには2つ穴構造を採用。さらにドリッパーはお湯がゆっくり落ちやすい台形型を採用し、じっくりと豆の旨みを抽出する。
一方、フレッシュな味わいの浅煎り豆が好きに向いているのが「ニューウェーブ」モードだ。監修したのは東京・代々木の「Brewman Tokyo」の小野光氏で、日本を代表するコーヒーの大会ジャパン ブリューワーズ カップの優勝経験を持つバリスタでもある。小野氏が得意とする浅煎り豆の香りや酸味を引き出すため、ノズルは3つ穴構造で勢いよく注ぐ設計。ドリッパーも抽出速度が比較的早い円錐形を採用している。
実際にコーヒーを試飲すると、その違いがよくわかる。クラシックモードで淹れた深煎りのコーヒーは、しっかりとした苦味と厚みのあるコクがありつつも、後味は意外なほど澄んでいる。
一方、ニューウェーブモードで抽出した浅煎りのコーヒーは、コーヒーの香ばしさとともにフルーティな香りと酸味の軽やかで華やかな味。
酸味が苦手な人には少々シャープに感じられるかもしれないが、スペシャルティコーヒーを好む人にはたまらない仕上がりになっている。
手軽さよりも“本物の味”を選んだ、ダイニチらしい真面目なマシン
最近のコーヒーマシンは、美味しさとともに小型化や時短を競う製品も多い。そんななか、MC-SVD40Aはお湯を沸かすのにボイラー式を採用。ボイラー式なのでお湯が沸くまで抽出がスタートせずボタンを押してから抽出が終わるまでには約4分~10分(杯数・モードによって変動)とやや長め。しかし、これも「美味しいコーヒーを抽出するには安定した湯温が必要」という理由から選ばれた方式という。
動く注湯ノズルやモードごとに交換が必要なドリッパーなど、MC-SVD40Aは効率や小型化よりも「バリスタの美味しさを真正面から物理的に再現」することにこだわった、ダイニチらしい意欲的な製品だ。これだけのこだわりを盛り込みつつ、実売価格が5万円以下という点も評価できる。ここまで本格的な仕様ながら、ユーザーが粉量以外の微調整ができない点はやや残念に感じるが、コーヒー好きなら一度味を確認してほしいと思わせてくれる、ほかにはない一台だといえる。
文/倉本春







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