「チャットで絵文字を使う?」「ラリーは何往復まで?」組織のテキストコミュニケーション課題を解決するには
そんな課題の解決策として、佐藤氏は次の行動を勧める。
●コミュニケーションの基準を作る
「曖昧さをなくし、共通言語を作るために『コミュニケーションの基準』を設けます」
・チャットで「!」や絵文字を使うかどうかのルールを明確にする
・ラリーが3往復以上続きそうなら、チャットをやめて電話や対面に切り替える
・テキストの“温度感”について共通認識を持つ
●AIは校正や補助に使う
「AIはあくまでもテキストの校正や補助に使うことです。AIに全て丸投げしてしまうと、“AIが作った文章”になってしまいます。AIに作らせないルールを作ることも必要ではないでしょうか」
●「伝え方」の学び直し
「AIは点検・補強してくれる相棒であって、最終的にコミュニケーションを成立させるのは人間です。だからこそ今、人間としての伝え方と対話のしかたを学び直すことが必要になっています。例えば弊社が提供する研修は、単なる知識のインプットではなく、“体験”によってコミュニケーション力そのものを鍛える設計になっているのが特徴です」
組織やチームに属するビジネスパーソンは、このような対策をヒントにするのもおすすめだ。
専門家が指南!ありがちなNGなテキストコミュニケーション3選
今後、ビジネスパーソン個人が自身のテキストコミュニケーションをよりよくするなら、テクニックを心得ておこう。
都内のITコンサルティング会社にてコンサルタントのスキル向上に取り組む担当者に、AI時代にありがちなNGコミュニケーションと解決策を聞いた。
1.情報過多で要点不明
「生成AIで作成した文章は情報量が多く、何を伝えたいのかが不明瞭になりがちです。なすべき行動が分からず対応漏れや遅れにつながります」
【解決策】
「文章の冒頭に『何をしてほしいのか』『いつまでに必要か』を簡潔に明示することで、相手の行動を促しやすくなります。単なる情報共有であれば『対応不要』と記載する、質問文には『?』を乱用せず、回答が必要な箇所だけに絞るなどしましょう」
2.冷たい印象を与える表現
「『修正してください』『明日でお願いします』などの事務的な表現は、怒っているように受け取られることがあります。特にお互いの人となりを十分に知り合っていない関係性では相手に『怒ってる?』と確認することもできないため、相手が気を遣い、コミュニケーションを控えるようになってしまうこともあります」
【解決策】
「まずは『共有ありがとうございます』などのポジティブな一言を添え、歓迎している態度を明示。関係性に応じて『!』や絵文字を使うのも有効です。『ありがとうございます!』と一文加えるだけで、緊張感が和らぎ、協力的な関係が築きやすくなります」
3.返信の遅延による不安
「チャットやメールが氾濫する昨今、誰もが優先順位をつけて返信していますが、放置すると相手は『無視された?』と不安になります。既読機能があるチャットでは特に『意図的に無視している』と誤解され信頼関係が揺らぎます。チャットはメールと比べて即答を求めるケースで利用されやすいため、質問者のタスクが遅れてしまう可能性もあります」
【解決策】
「すぐに対応できない場合でも『今日中に確認します』などと一次回答を入れることで、相手の不安を解消できますし、回答タイミングに対する期待のズレも予防できます。またチーム内で『いいね』スタンプは『当日中に回答する』の意味であるなどのルールを設けると、効率的で安心感も生まれるでしょう」
要点を冒頭で明確に伝える、記号や絵文字をうまく利用する、一言添えるなどちょっとしたことで無機質な感じを低減できる。AIが介在する現代だからこそ、改めて意識したい。
取材・文/石原亜香利