
世界情勢と経済状況の不透明感からアジア各国の企業は、優秀な人材の獲得の最適解を求めている。人材紹介などを提供するヘイズ・スペシャリスト・リクルートメント・ジャパン(ヘイズ・ジャパン)は、アジア6か国・地域(中国、香港特別行政区、日本、シンガポール、マレーシア、タイ)の給与期待値や転職意向などの調査を2024年秋に実施し、2025年6月にその追跡調査を行った『追跡調査レポート~採用現場の最前線~』を発表した。
それによれば日本の調査回答者の65%は、2025年に昇給済みおよび昇給予定と回答。これは東南アジアの高水準に続く数字で、昨秋の予測値を上回る数字だった。
日本の昇給実施率は昨秋の予測を超える
日本で働く人材に2025年の昇給予測について質問すると、2024年秋の調査では58%が昇給を見込んでいたが、昇給済みまたは昇給見込みと答えた割合は65%まで上昇しており、昨秋の予測値を上回る昇給実施率だった。これは高水準であるタイ(87%)、マレーシア(79%)、シンガポール(69%)といった東南アジアに続く数字で、香港(64%)と中国(54%)を上回った。アジア全体では、昇給見込みが75%だったのに対して実際に昇給した人は40%にとどまっており、年内に昇給予定と回答した人も22%だった。
給与減額については、それを見込む日本の企業は4%で、香港(7%)やタイ(5%)よりも低く、もっとも高かった中国(18%)とも大きな差があった。アジア全体では6%の企業が給与減額を実施しており、12%の企業が今年後半に給与削減を予定している。ヘイズ・ジャパンのマネージング・ディレクターであるグラント・トレンズ氏は、「世界経済が回復基調にある中で、日本企業が昇給を維持しているのは、優秀な人材を確保する強い意思の表れです」とコメントしている。
日本で現職に留まる理由の1位は「給与待遇」、アジア全域では「ワークライフバランス」
この調査では、日本の回答者の23%が2025年にすでに転職しており、47%が今年中の転職を検討していると回答。約7割が転職するか検討している中で、日本で現職に留まる理由については、1位は給与待遇(45%)で2位以下は企業理念・文化への共感(43%)、同僚との良好な関係(42%)、ワークライフバランス(39%)という結果だった。アジア全域では「ワークライフバランス」(41%)がトップで2位が「給与」(36%)だった。
調査からは、雇用の安定性にも大きな懸念が浮上していることが見て取れた。日本で働く人材では、雇用の安定性を重視する人の割合が2024年秋の8%から17%へと上昇。グラント氏は「雇用不安の高まりは日本で特に顕著で、調査回答者の36%が自身の職務に不安を感じていると答えています。この数値は中国に次いで2番目に高い水準です。ただし、雇用の安定性に対する懸念が転職を後押しすることはあっても、それが現職に留まる主な理由にはなっていないのが現状です。人材が定着する要因は明確であり、もっとも重視されているのは給与です。企業は従業員の満足度を維持するために給与面での対応を強化しています」とコメントしている。
一方でチームとの相性や文化的なフィット感や帰属意識といった日本企業が従来から大切にしてきた価値観は、いまも多くの企業が重視している。今後のキャリアを模索するプロフェッショナル人材にとっては、自分に何がもっとも重視すべき要素なのか明確にすることは大切なことだ。優先順位を自分自身で把握することで賢いキャリア判断ができるだろう。
「レポート『追跡調査レポート~採用現場の最前線~』」調査概要
『2025年ヘイズ アジア給与ガイド』の調査結果との比較を目的として、2025年6月に実施された追跡調査をもとに作成。レポートではアジア6か国・地域の約2000名の回答を収録し、調査結果および分析を公開。
調査期間:2025年6月
調査方法:オンラインアンケート調査
調査機関:ヘイズ調査
有効回答数(サンプル数): 約2000回答
https://www.hays.co.jp/
https://www.hays.co.jp/the-pulse-of-recruitment-japan?utm_source=Press&utm_medium=PRTimes&utm_campaign=PSR-JPJP
構成/KUMU