こんにちは。
弁護士の林 孝匡です。
宇宙イチわかりやすい法律解説を目指しています。
本当にあった裁判を解説します。
「女性の水着はビキニがいいね」
「ゴルフウェアはミニスカートがいいね」
上司から女性社員へのセクハラ発言です。
このオッサン、さらにはガールズバーで暴君と化します。
こうした愚行に対して、女性社員が「セクハラです!」と訴えました。
裁判所が認めた慰謝料は?3ケタいくか!?
以下、わかりやすく解説します。
※ 実際の判決を基に構成
※ 判決の本質を損なわないようフランクな会話に変換
※ 争いを一部抜粋して簡略化
当事者
▼ Xさん(女性)
・エンジニアとして採用される
・32歳くらい(入社当時)
・6か月の有期雇用
▼ 上司Y
・Xさんを採用する時に条件交渉をした
・支社長
どんな事件か
■ この上司に認められなきゃ
Xさんは「この上司に認められなきゃ」という感じだったんだと思います。上司YはXさんに対して強い影響力を持っていたんです。というのも、上司Yの支社で働き始めてから6か月間の能力いかんで、正社員になれるかどうかが決定されることになっていたからです。
では、順番にセクハラ・パワハラを見ていきましょう。
■ セクハラ1
会社で雑談していた時のことです。上司と従業員何人かが話していました。上司Yは船を持っていました。金持ちですね。
上司は「夏、私の船に乗りに行くか?」と提案し、いろいろと雑談する中でセクハラ発言!
上司が【Xさんに対して】
「でも水着は、もっさい格好より夏って感じで女性はビキニがいいね」
―― はい、セクハラ~。
上司Y
「今度入社予定の●●さんは、昔、海の話をしていた時に『逆にビキニじゃない水着ってあるの』って笑いながら言っていたよ。もちろん彼女のジョークだろうし、海外生活が長い彼女ならではの感覚だろうけどね」
―― こずるっ!自分の意見のくせに他人の意見でカモフラージュするヤツですね。裁判官、どうですか?
裁判官
「セクハラですね。ことさら肌の露出を求めるという趣旨でXさんに性的な不快感を与えているからです」
■ セクハラ2
上司YがXさんを社内のゴルフコンペに誘った時のこと。
上司Y
「女性はミニスカートのウェアがいいね。ゴルフは男性も派手な格好をしているし、華やかに賑やかにプレーすると楽しいよね。何なら買い物に付き合うよ。○○さんも買わないといけないらしいから、一緒にどう?」
行かねーよバーカ。
―― 裁判官、どうですか?
裁判官
「これもセクハラですね。理由は先ほどと同じです。ことさら肌の露出を求めるという趣旨でXさんに性的な不快感を与えてますので」
■ セクハラ3
セクシースタイルで接客するガールズバーでの出来事。こんなガールズバーでした。
〈服装〉
・上は下着をつけないままワイシャツ
・下は超ミニスカ
× 禁止事項
・おさわり
○ OK事項
・コインの口渡し
「コインの口渡し」とは、500円より少し大きいコインを男性客が口にくわえ、これをドリンク代として女性従業員が口で受け取る余興です。
セクハラ上司は、このコイン口渡しをXさんに提案したんです。
上司
「女性同士であれば、コインなしでもいいし、ちょっと触ってもいいんだよ」
「良かったらトライしてみたら? あ、無理にすることはないよ。お楽しみみたいなものだから」
空気的にXさんは断れなかったんでしょう。内心は抵抗感を抱きながらも、この上司からの評価も得たいと思っていたようです。この上司の采配で6か月雇用が延長されるかどうかが決まると感じていたようです。
Xさんは口渡しを実行。すると上司は「もうちょっとだね~」と焚きつけます。
Xさんは再び実行し、さらにディープキスまで至りました。
さらに上司Yの悪ノリは続きます。
上司Y
「3Pやってみよう」
3Pとは、Xさんが2枚のコインを口にくわえ、同時に2名の女性スタッフが口渡しを受けるというものです。Xさんはそれも実行。
このオッサンは、まだまだ止まりません。
上司Y
「女性スタッフは下着を着けてないよ」
「たしかめてみる? 女性同士はタッチしてもOKですから、どうぞ」
Xさんと女性スタッフはお互いの体を触り合いました。上司Yはそれを見ており、Xさんが女性スタッフの胸を触った時のリアクションを見て「触るよりエッチだな」と発言しました。
―― 裁判官!これはヤバすぎやしやせんか!
裁判官
「明らかにセクシャルハラスメントであり、Xさんの上司で、その雇用関係に強い影響力を持っている者の行為として是認できないものであって、Xさんに耐え難い精神的苦痛を与えたものとして非難を免れない」
■ セクハラ4
上司Yがナゾの牽制を。Xさんが入社したころ、上司Yは以前の職場にいた女性社員を引き合いに出しつつ……。
上司Y
「Xさんがセクハラ・パワハラを強調する人物ではなく安心しました」
―― なにホッとしてんだよ!裁判官!こいつセクパワ、やる気マンマンですやん!
裁判官
「ハラスメントとまでは言えません」
う~ん、ギリで合法って感じですね。裁判官が違えば「これもう口封じじゃん!ハラスメントだろうが!」と認定される可能性はあります。
■ 慰謝料の金額
地方裁判所 50万円
↓
高等裁判所 150万円
高裁で跳ね上がりましたね。理由は、上司Yのセクハラなどが原因で【就労不能になった】と認定されたからです。
今回は以上です。「こんな解説してほしいな~」があれば下記URLからポストしてください。また次の記事でお会いしましょう!
取材・文/林 孝匡







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