2024年11月に「フリーランス法」が施行されてからもうすぐ1年が経つ。急速に進む物価高などフリーランスとして働く人たちの労働環境は急速に変化しつつある。
そこで日本労働組合総連合会(略称:連合)は、この度、フリーランスとして働く人の意識と実態を把握するため、「フリーランスとして働く人の意識・実態調査2025」を2025年6月27日~7月1日の5日間でインターネットリサーチにより実施。
全国の20歳以上の男女でフリーランスとして働く人1,000名の有効サンプル(※)を集計したので注目のポイントをピックアップして紹介しよう(調査協力機関:ネットエイジア株式会社)。
※フリーランスを本業として仕事をしている人を対象、仕事内容は「文化・芸能・芸術関連」と「その他」で6割以上を占める結果となっている。
フリーランスとしての働き方に満足している人の割合「プライベートとの両立」では66.8%、「収入」では26.0%にとどまる
「仕事内容・質」では『満足している(計)』は60.9%、「労働時間」では『満足している(計)』は58.0%と、いずれも約6割の人が満足していることがわかった。
他方、「収入」では『満足している(計)』は26.0%、『満足していない(計)』は46.8%となり、半数近くが収入に満足できていない実態が明らかに。
「働きがい・やりがい」では『満足している(計)』は61.0%、「プライベートとの両立」では『満足している(計)』は66.8%と、いずれも満足している人が多数となった。
フリーランスとしての働き方についての将来への展望「ない」が30.4%、クリエイティブ関連では「ない」が38.1%
フリーランスとしての働き方について、将来への展望はどのくらいあるか聞いたところ、「とてもある」が10.2%、「少しある」が16.8%で合計した『ある(計)』は27.0%、「全くない」が10.9%、「あまりない」が19.5%で合計した『ない(計)』は30.4%という結果に。
世代別にみると、将来への展望があると回答した人の割合が最も高くなったのは20代(42.9%)、ないと回答した人の割合が最も高くなったのは40代(36.9%)。
仕事内容別にみると、将来への展望がないと回答した人の割合は、クリエイティブ関連(38.1%)では4割近くとなった。
昨年の調査結果と世代別に比較すると、将来への展望があると回答した人の割合は、20代から40代では上昇し、20代では12.9ポイント上昇している(2024年30.0%、2025年42.9%)。
他方、50代以上では下降し、60代以上では9.9ポイントの下降(2024年33.6%、2025年23.7%)となった。
「発注者からの仕事の依頼を断ることができない」フリーランスの24.1%、クリエイティブ関連では29.8%
全回答者(1,000名)に、それぞれの働き方について質問した。
「発注者からの仕事の依頼を断ることができない」では、「よくある」は9.0%、「時々ある」は15.1%で、合計した『ある(計)』は24.1%、「全くない」は16.7%、「ほとんどない」は24.6%で、合計した『ない(計)』は41.3%となった。
仕事内容別にみると、『ある(計)』と回答した人の割合は、クリエイティブ関連では29.8%と、他の層と比べて高くなっている。
「発注者からの仕事を行う期間中、もしくは契約期間終了後、他の企業等の仕事を受けないように求められたことがある」では、『ある(計)』は8.4%、『ない(計)』は61.9%と、求められたことがない人が多数であった。
近年の物価上昇による影響で「生活が苦しくなった」45.7%、「業務に必要なコストが上昇した」27.8%
全回答者(1,000名)に、近年の物価上昇による影響を聞いたところ、「生活が苦しくなった」は33.4%、「業務に必要なコストが上昇した」は15.5%、「生活が苦しくなって、業務コストも上昇した」は12.3%で、『生活が苦しくなった(計)』は45.7%、『業務コストが上昇した(計)』は27.8%となった。また、「特に影響はない」は38.8%という結果に。
世代別にみると、『生活が苦しくなった(計)』と回答した人の割合は、40代(52.7%)が最も高くなり、半数を超えた。また、『業務コストが上昇した(計)』と回答した人の割合は、60代以上(31.5%)が最も高くなっている。
仕事内容別にみると、『生活が苦しくなった(計)』と回答した人の割合は、クリエイティブ関連(66.7%)が最も高くなり、『業務コストが上昇した(計)』と回答した人の割合は、文化・芸能・芸術関連(32.4%)が最も高い。
「報酬が引き上げられていない」フリーランスは89.8%、「引き上げられた」人はIT関連では16.2%
全回答者(1,000名)に、今年1月から5月までの間に、昨年の12月以前と比較して報酬は引き上げられたか聞いたところ、『引き上げられた(計)』(「引き上げられた」「やや引き上げられた」の合計)は10.2%、『引き上げられていない(計)』(「引き下げられた」「やや引き下げられた」「変わらない」の合計)は89.8%となった。
仕事内容別にみると、『引き上げられた(計)』の割合は、IT関連(16.2%)が最も高くなった一方、事務・ビジネス関連(4.4%)やクリエイティブ関連(4.8%)、からだ・健康関連(5.3%)では、5%前後と低くなっている。
「引き上げられた」、「やや引き上げられた」と回答した人の引き上げられた理由をみると、「生活が苦しいから作品の値段を上げざるを得なかった(男性/30代/文化・芸能・芸術関連)」、「物価高を理由に自分から提案した(女性/30代/その他)」、「物価高を考慮した報酬の提示をしてくれる発注元が少し増えた(男性/40代/IT関連)」、「仕事のクオリティが高くなったから(女性/20代/クリエイティブ関連)」といった回答がみられた。
理解率は39.0%!フリーランス法の浸透度合いと実効性について
全回答者(1,000名)に、2024年11月に施行されたフリーランス法(「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」)を知っているか聞いたところ、「フリーランス法を知っていて、法律の内容もよく理解している」は9.6%、「フリーランス法を知っていて、法律の内容を少し理解している」は29.4%で、『理解率(計)』は39.0%となった。
「フリーランス法を聞いたことはあるが、法律の内容は理解していない」は33.8%、「フリーランス法を知らない」は27.2%。
仕事内容別にみると、「フリーランス法を知らない」と回答した人の割合は、からだ・健康関連では35.1%と、3人に1人が知らないという結果に。
フリーランス法を理解している人(390名)に、フリーランス法についてどのようにして知り、学んだか聞いたところ、「テレビ・ラジオ・新聞報道」(39.7%)、「公的機関のWebサイト、SNS、動画など」(36.4%)、「公的機関以外のWebサイト、SNS、動画など」(34.1%)、「同業者・フリーランス仲間からの情報」(31.5%)に回答が多く集まっていた。
世代別にみると、30代では「同業者・フリーランス仲間からの情報」(44.2%)が最も高く、40代では「公的機関のWebサイト、SNS、動画など」(41.8%)が最も高くなっている。60代以上では「テレビ・ラジオ・新聞報道」(54.2%)が半数を超えた。
フリーランス法では、期間が6カ月以上の業務委託について、フリーランスで仕事をしている人が育児や介護などと業務を両立できるよう、フリーランスの申し出に応じて配慮をしなくてはならないと定められている。
期間が6カ月以上の業務を受託している人(620名)に、6カ月以上の期間で行う業務委託について、発注者との取引で問題があったか聞いた。
「自身の申し出に応じて、育児介護等と業務を両立できるような発注者からの配慮がない」では「もともと問題がない」は63.4%、「問題があった」は36.6%、「発注者が契約の解除や不更新をしようとする場合、やむを得ない場合を除いて30日前までにその旨を予告しない」では「もともと問題がない」は65.2%、「問題があった」は34.8%という結果に。
それぞれの問題があった人に、フリーランス法が施行された2024年11月前後に、問題が改善されたか聞いたところ、「自身の申し出に応じて、育児介護等と業務を両立できるような発注者からの配慮がない」問題がある人(227名)では『改善された(計)』は29.5%、『改善されていない(計)』は70.5%で、大半が改善されていないことが判明。
「発注者が契約の解除や不更新をしようとする場合、やむを得ない場合を除いて30日前までにその旨を予告しない」問題がある人(216名)では『改善された(計)』は36.6%、『改善されていない(計)』は63.4%であった。
“労災保険の特別加入制度”の加入対象拡大、認知率は27.8%、事務・ビジネス関連の人では44.1%
“労災保険の特別加入制度”とは、従来では労災保険への加入が認められなかった労働者以外の人のうち、業務の実態や災害の発生状況からみて、労働者に準じて保護することがふさわしいとみなされる人に、一定の要件のもとに労災保険に加入することを認めている制度だ。
フリーランスの人では、一部の業種・職種のみ加入が認められていたが、2024年1月の制度改正によって、加入対象が拡大され、業種・職種を問わず加入することができるようになった。
全回答者(1,000名)に、“労災保険の特別加入制度”の加入対象が拡大されたことを知っているか聞いたところ、「知っている」と回答した人の割合は27.8%。
仕事内容別にみると、「知っている」と回答した人の割合は、事務・ビジネス関連(44.1%)で4割を上回った一方、多くの業種で3割を下回る結果となった。
“労災保険の特別加入制度”を利用したいと思うか聞いたところ、「すでに保険に加入している・利用したいと思う」は20.3%、「利用したいと思わない」は39.1%、「分からない」は40.6%。
仕事内容別にみると、事務・ビジネス関連では、加入対象の拡大の認知率(44.1%)は最も高くなった一方、「すでに保険に加入している・利用したいと思う」(8.8%)は1割未満にとどまり、「利用したいと思わない」(54.4%)は半数を超えた。
労災保険の特別加入制度の利用について“利用したいと思わない”“分からない”と回答した人(797名)に、そのように回答した理由を聞いたところ、上位3つは「金銭的な余裕がないから」(26.7%)、「制度がよく分からないから」(26.6%)、「健康保険証があるから」(25.0%)で、いずれも2割を上回っている。
次いで、「自分には関係ないから」(17.4%)、「加入等の手続きが面倒そう・苦手だから」(15.7%)となった。
世代別にみると、20代と60代以上では「健康保険証があるから」(順に33.3%、32.8%)が1位に。また、30代・40代では「制度がよく分からないから」(順に31.9%、31.2%)が3割以上であった。
仕事内容別にみると、クリエイティブ関連と暮らし・学び関連では「金銭的な余裕がないから」(順に41.4%、48.4%)がいずれも4割を上回り、突出して高い結果に。事務・ビジネス関連では「健康保険証があるから」(38.7%)が1位であった。
フリーランスの仕事に関する悩みの相談相手TOP3「フリーランス仲間」「同業者」「友人」一方で「相談する相手がいない」人は43.3%
全回答者(1,000名)に、普段、仕事に関する悩みについて誰に相談しているか聞いたところ、相談相手では、1位「フリーランス仲間」(26.6%)、2位「同業者」(19.6%)、3位「友人」(16.7%)という結果に。
一方で、回答が最も多く集まったのは「相談する相手がいない」(43.3%)で、半数近くが普段、仕事に関する悩みを相談できていないことが判明。世代別にみると、20代では、「家族」(22.9%)が他の世代と比べて高くなっていた。
仕事内容別にみると、文化・芸能・芸術関連では、「フリーランス仲間」(34.6%)が全体と比べて5ポイント以上高い。
また、事務・ビジネス関連では、「弁護士等の専門家」(10.3%)が他の仕事と比べて高く、1割となった。からだ・健康関連では、「フリーランス仲間」「家族」(いずれも28.1%)が同率で1位に。
2023年、アメリカでは、Netflix等の巨大プラットフォームに対して、俳優や歌唱、声優、ダンサー、宣伝業務に携わる人などで結成された全米映画俳優組合が労働条件の改善や、AIの使用に関する保護措置などを求める長期のデモを通じて、権利を獲得したことが日本でも大きく報じられた。
このように、個人では解決できない問題に対するために、フリーランス同士でつながりたいと思うか聞いたところ、「つながりたいと思う」は27.9%、「つながりたいと思わない」は33.8%、「分からない」は38.3%であった。
世代別にみると、「つながりたいと思う」と回答した人の割合は、20代では38.6%と、突出して高くなっていた。他方、「つながりたいと思わない」と回答した人の割合は、30代では40.3%と、他の世代と比べて高くなっている。
仕事内容別にみると、「つながりたいと思う」と回答した人の割合は、からだ・健康関連(36.8%)で最も高くなった。また、「つながりたいと思わない」と回答した人の割合は、事務・ビジネス関連では41.2%と、全体と比べて5ポイント以上高いことが判明。
調査概要
調査タイトル:フリーランスとして働く人の意識・実態調査2025
調査対象:ネットエイジアリサーチのモニター会員を母集団とする全国の20歳以上の男女でフリーランス(※)として働く人
※フリーランスを本業として仕事をしている人を対象
調査期間:2025年6月27日~7月1日
調査方法:インターネット調査
調査地域:全国
有効回答数:1,000サンプル
実施機関:ネットエイジア株式会社
※連合調べ
関連情報
https://www.jtuc-rengo.or.jp/
構成/Ara







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