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結局のところ、現在の社会は「能力ゲー」なのか?

2025.10.20

「現代社会は個人の能力が問われる『能力ゲー』だ」という認識は、一見すると正しいと捉えられがちです。もちろん個人には職業選択の自由がありますが、組織の一員としては、会社や社会から求められる役割を遂行してこそ評価されるのが現実だからです。

したがって、現代を生き抜く上で重要なのは、「能力の高さ」そのものではありません。「自らが所属する組織のなかで、求められる役割と責任を正しく認識し、それを着実に果たせること」こそが、評価と成長の鍵を握るのです。本稿では、この視点に基づき、「専門特化」か「バランス型」かという古くからの問いを再定義し、個人が取るべき具体的な行動を論じます。

1. なぜ「能力ゲー」という“誤解”が生まれるのか

多くの人が「能力ゲー」と感じてしまうのは、評価の基準が曖昧な環境に身を置いているからに他なりません。例えば、上司が「成長意欲」や「頑張り」といった曖昧な要素で部下を評価すると、部下は「自分の能力が足りないのではないか」「もっと自分の得意なことをアピールすべきか」といった、結果とは無関係な思考に陥ります。

「篩にかけられている」という感覚の正体 これは、明確なゴールやルールが示されないまま、漠然とした「優秀さ」を求められることで生じる錯覚です。サッカーで例えるなら、監督が「とにかく頑張ってこい!」とだけ指示し、選手は「ドリブルが上手い方が評価されるのか?」「パスの正確性か?」と迷いながらプレーするようなものです。これでは正しい成長は望めません。

組織における個人の価値は、その人が持つ先天的な「能力」や「得意なこと」で決まるのではなく、自分の求められる位置(ポジション)で求められる役割を果たすことで決まります。

2. 伸ばすべきは「得意な事」ではなく「求められる成果」を出す力

この前提に立つと、「得意な事を伸ばす専門特化」と「不得意をなくすバランス型」という問いそのものが、論点がずれていることがわかります。

現在、自分がいる「位置」で求められている「役割」(責任)を果たすために、不足している能力を最短で身につける」ことです。

専門特化か、バランス型かは「位置」が決める あなたの“位置”が、特定の技術領域で競合他社を凌駕する製品開発を求められているのであれば、その技術を深く追求する「専門特化」が必須です。この時、「コミュニケーション能力もバランス良く…」などと考えることは、責任から逃げていることと同義です。 一方で、あなたが複数の専門家を束ねるプロジェクトマネージャーという“位置”にいるのであれば、各分野の専門家と正しくコミュニケーションを取り、プロジェクト全体を前に進めるための幅広い知識、すなわち「バランス型」の能力が求められます。この時、特定の技術を深掘りすることに固執すれば、それはマネージャーとしての責任放棄になります。

つまり、伸ばすべき能力は、自分の「得意・不得意」や「好き・嫌い」から出発するのではなく、完全に外部、すなわち会社や上司から与えられた「役割と責任」によって定義されるのです。自分の「得意なこと」が、たまたまその位置で求められる結果に直結している場合にのみ、それを伸ばすことが正解となります。

3. 個人が取るべき具体的な行動

では、この「能力ゲー」という誤解から脱却し、正しく成長していくために、個人は何をすべきでしょうか。識学が提示する行動指針は極めてシンプルです。

(1) 現在、求められていることの正しい認識

最初のステップは、全ての土台となる最も重要なプロセスです。「頑張ります」「良い感じに進めます」といった曖昧な言葉の往来は、後の評価のズレや「言った・言わない」問題の温床となります。ここで重要なのは「目標の認識を合わせる」ことです。

上司に「私に求められている結果(目標)は何ですか?」と問う際には、以下の要素を明確にする必要があります。

• 状態、基準: 何をどのくらいするのか。
(例:「新規顧客から500万円の受注」「処理速度を50%向上させる」)

• 期限: いつまでに達成するのか。
(例:「**第3クォーター末(12月31日)までに」)

これらを組み合わせ、「12月31日までに、新規顧客から500万円の受注を達成する」というように、誰が聞いても同じ解釈しかできないレベルまで目標を具体化します。上司からの指示が曖昧であれば、自ら具体的な目標を提案し、承認を得るという主体的な行動が不可欠です。

(2) 結果とのギャップの直視

目標が明確に定義されて初めて、現在地との「差」を客観的に測定できます。このステップで陥りがちな罠は、「できそうだ」「無理かもしれない」といった感情や主観でギャップを捉えてしまうことです。

ここで行うべきは、あくまで事実に基づいた冷静な分析です。

• 目標: 新規受注 500万円
• 現状: 見込み案件 200万円
• ギャップ: 不足 300万円

さらに、このギャップを埋めるための行動量にまで分解します。

• 過去の実績: 10件の商談で100万円の受注(受注率10%)
• 必要な行動量: 不足300万円を達成するには、新たに30件の商談が必要。

このように、ギャップを具体的な「数値」や「量」にまで落とし込むことで、「自分の能力では無理だ」という精神論ではなく、「あと30件の商談機会をどう創出するか」という解決可能な課題として捉え直すことができます。

(3) ギャップを埋めるための行動に集中(タスクの取捨選択)

ギャップが具体的な行動量として見えたら、次はその行動量を確保するためだけに時間とリソースを集中させます。多くの人が成果を出せない原因は、この**「集中」と「取捨選択」**ができないことにあります。

「30件の商談機会を創出する」という課題に対し、取るべき行動は以下のようになります。

• 有効な行動の例:
o 過去の顧客リストに再度アプローチする
o 業界セミナーに参加して名刺を交換する
o 1日20件のテレアポをスケジュールに組み込む

一方で、以下のような行動は**「ギャップを埋めることに直接貢献しない行動」**として、優先順位を徹底的に下げるか、やめるべきです。

• 貢献しない行動の例:
o 直接的な成果に繋がらない社内会議への参加
o 提案書の見た目を延々と修正する
o いつか役立つかもしれないという理由での情報収集

自分の「得意なこと」や「やりたいこと」でタスクを選ぶのではなく、「その行動は、設定した目標とのギャップを1ミリでも埋めるか?」という問いを常に自問し、冷徹にタスクを仕分ける姿勢が求められます。

(4) 上司の正しい評価を受ける(結果責任の完遂)

最終ステップは、プロセス全体の責任を完遂する上で不可欠です。行動の結果、目標が達成できたか否かを判断するのは、自分自身ではありません。ゴールを設定した上司です。

ここで重要なのは、プロセスや努力を評価の対象にしないことです。仮に目標が未達だった場合、「あれだけ頑張ったのに」「予期せぬトラブルが…」といった言い訳は、自身の成長機会を放棄する行為に他なりません。

• 目標達成時: なぜ達成できたのかを客観的に振り返り、成功要因を次の目標達成に活かす。
• 目標未達時: なぜ未達だったのか、どの行動が不足していたのかを上司と共に分析し、次のサイクルのための改善点とする。
この「結果に対する評価を素直に受け入れる」という姿勢が、上司との信頼関係を築き、あなたを「言い訳をせず、結果に対して責任を持つプロフェッショナル」として成長させます。このサイクルを通じてのみ、個人の成長と組織の成長が正しく連動していくのです。

【結論・まとめ】

本稿で論じたように、現代社会を「能力ゲー」と捉えるのは、評価基準が曖昧な環境が生む誤解に過ぎません。個人の真の価値は、生まれ持った能力や「得意なこと」で決まるのではなく、組織から与えられた「位置」で求められる「役割と責任」を果たせるか否かで決まります。

この前提に立てば、「専門特化かバランス型か」という問いも、個人の好みで選択するものではないことが分かります。開発者には専門性が、管理者にはバランス感覚が求められるように、伸ばすべき能力はあなたの「位置」がすべてを決定します。

したがって、私たちが取るべき行動は極めて明確です。まず、上司と「求められる結果」を具体的かつ完全に合意する。次に、その目標と現状とのギャップを客観的に認識し、その差を埋めるための行動にのみ集中する。そして、その結果に対する上司からの評価を真摯に受け入れること。

このサイクルを愚直に回し続けることこそが、「能力ゲー」という幻想から抜け出し、確かな評価と成長を手にするための唯一の道筋なのです。

文/株式会社識学 金希恩

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