幼少期から社会に出るまでを思い返してみた時、知らず知らずに親や先生から設定される目標は徐々に高くなってきたのではないでしょうか。
しかし、一人一人の成長に合わせた目標設定がなされていれば、「限界」を感じる事は回数としては少なかったはずです。
では、親や先生から余程の過大な期待をかけられない限り、感じる事が少なかった「限界」をなぜ社会人になった今、感じてしまうのか。
それは、目標に対する考え方に原因があると考えます。
社会で生きる中で、目標は達成すべきものであり、一切の感情を挟まないものです。目標がどんどん上がっていく状況は、組織が成長し、より高いレベルを目指している証拠と捉えられます。しかし、個人が「もう限界だ」と感じるのは、目標設定のプロセスや、目標に対する認識にズレがあると考えます。
まずは、子供の時や学生時代と、組織の中で生きる社会人とでは大きく違ってくるポイントが2つある事を認識しましょう。
2つのポイントを認識出来れば、個人の不満や感情は軽減されるでしょう。
1.【組織は成長し続けなければならないという事実】
組織を取り巻く市場は成長し続けています。組織はその市場から売上や利益を享受している事で成立している以上、組織が市場から求められるレベルも上がり続けるという事になります。もし、その時々に市場から求められるレベルに応える事が出来なければ、その組織は市場からの退出を無機質に通告されてしまうからです。
当然、市場から求められるレベルは一人一人の成長に合わせてはくれないという事になります。
但し、この市場から求められるレベルに応えなければならないという恐怖感は、市場に一番近いところにいる組織のトップであれば常に感じる事が出来ますが、組織が大きくなればなるほど社長・部長・課長・社員といった階層は深くなりますので、市場からの距離が遠くなる階層の下位になるほど市場から求められるレベルは感じ辛いものになっていきます。
では組織に属する個人はどのようにすればよいのか?
(1)目標という仕組への理解
目標設定の仕組みを理解することが重要です。
まずは市場から求められるレベルに応える為の目標設定が組織全体になされた後、個々の目標は組織の目標からブレイクダウンされたものという事実を認識する事になります。そして、一人一人が目標を達成する事で組織の目標も達成出来る様になるという構図です。ですので、一人が目標未達になってしまうと、誰か他のメンバーが目標を超過達成しなければ組織の目標は達成出来なくなってしまいます。
(2)自らの役割の明確化
自分が担っている役割は何か、その役割が組織全体の目標にどう貢献しているかを客観的に捉えることです。
ポイントは以下です。
・責任範囲と非責任範囲の明確化
・数字や期限で誰が見ても同じに認識できる具体的な状態で責任範囲を認識する
本来求められていない事まで、自身の責任範囲であると錯覚して余計な時間を割いてしまっていないか。果たした役割が結果的に達成か未達成か、誰が見ても認識のズレない形で示されているかを確認しましょう。
2.【頑張りを評価して欲しいという錯覚】

自分は頑張っているんだという自己肯定は時に必要であり、モチベーションの維持には必要な時もあるでしょう。また、精神的にも未熟な幼少期には頑張りを誉める事で少しでも前に進ませてあげるといった周りの大人の配慮は必要です。
但し、今は社会の中にいます。社会の中に属している組織を、市場は組織に対して頑張りで評価してくれるでしょうか。
してくれません。
市場が組織を評価する時は、頑張っているといった経過ではなく、結果で評価します。
では組織の結果は何で構成されているかというと、個人の結果の集合体になります。
にも関わらず経過で評価がされてしまうと、良い経過を見せた人が評価されてしまいますので、いい結果を出した人が割を食いかねません。
また、そういった経過を評価する組織には、いい結果を出す事よりも、経過をよく見せようとする「頑張ってますアピール」が横行し、結果、そのような人ばかりの組織は衰退していく事でしょう。
では組織に属する個人はどのように認識を改めればよいのか
(1)求められている結果にのみ意識を集中する
重要なのは、目標達成という「結果」のみであると認識を改めることです。どれだけ努力したか、どれだけ苦労したかは、目標達成には関係ありません。
感情や努力の過程を切り離し、一旦「結果」にフォーカスすることで、次に何をすべきか、より効率的な方法はないか、という視点に切り替えることができます。
(2)モチベーションを与えられる事を組織に求めない
「やりがい」や「楽しさ」といった感情的な報酬をモチベーションの中心にしない事です。
「やりがい」は結果の後についてくるものであり、モチベーションの源泉ではないと考えます。目標達成の喜びや、組織への貢献を実感することが「やりがい」を生み出します。
まずは目の前の目標を淡々と達成することに集中し、その結果として得られる達成感や組織からの評価をモチベーションに変えていくことが大切です。
モチベーション(Motivation)の和訳は「動機付け」です。得られた達成感や組織から受けた評価が、「更に上を目指したい」という次への「動機付け」になるのであり、自身から内発的に発生するものであり、発生させる事が真のモチベーションと言えるのです。
【具体的な行動ステップ】
1. 感情の切り離し: まず、「もう限界だ」という感情を一旦脇に置きます。
2. 目標の再確認: 今、自分に求められている具体的な目標(数値や期日)を上司と再度確認します。曖昧な目標は、具体的な数値目標に落とし込んでもらいましょう。
3. 目標達成に向けた行動計画の策定: 目標達成のために、今日から何をすべきかを具体的にリストアップします。
4. 上司への「正しい報告」: 計画を実行し、その進捗(結果)のみを上司に報告します。「頑張っています」「努力しています」といった感情的な報告は不要です。
【まとめ】
感情や努力の過程を排除し、結果にフォーカスすることで、組織と個人の健全な成長に繋がります。目標がどんどん上がっていく状況は、組織がより高いステージに進んでいる証拠であり、それに合わせて自分自身も成長するチャンスと捉えられます。
感情的な壁にぶつかった時は、「なぜ、自分はそう感じるのか」と客観的に問い直し、目標達成という事実のみに集中することで、状況を打開する道が開けます。
文/識学コンサルタント







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