
Instagramは今年10月、ローンチから15周年を迎えた。気軽に写真を投稿できるアプリの登場は、新鮮だった。進歩しながら躍進を続けるInstagramは、今後、何を目指して、どこへ行くのか。このほどMeta 東京オフィスで行われたラウンドテーブルから、Meta 日本法人 Facebook Japan 代表取締役味澤将宏さんの発言をベースに、Instagramの今後を紐解いてみよう。
写真から動画重視のInstagramに
InstagramはiOS版が2010年10月にローンチすると、その24時間後にはAppStoreで1位を獲得。その後、2012年に Facebookの傘下に入り、2013年には動画投稿がスタート。2017年には「インスタ映え」が流行語になり、2018年にはショッピング機能が付き、2023年にはテキスト中心のアプリとしてThreadsもローンチした。
機能を付加させながら進化してきたInstagramの月間アクティブユーザーは世界で現在30億を突破。現在の世界のネットの人口が約55億なので、半数以上が利用していることになる。日本の利用者数も継続して伸び続けている。
日本はInstagramにとっては重要な市場で、2019年には当時日本に設置していたプロダクトエンジニアリングチームが開発したQRコードを発表している。また、検索利用が多く、旅行やレストラン情報などを地図上で検索できるシステムも日本から始まった。
Meta日本法人 Facebook Japan代表取締役味澤将宏さんによると、現在、Instagramの成長を牽引しているのがReels(リール:短い動画)と、DMなどのメッセージ機能だという。「利用時間のうちリールが占める割合が50%を越えています。特に新しい傾向として、動画をDMなどでリシェアする人が多く、一日の回数は45億回。現在もInstagramで動画を視聴する時間は、前年比20%以上伸びています。単にリールをプラットフォーム上に投稿するのではなく、一対一やグループでシェアする動きが広がり、その結果、リールのリシェアが延びています」という。
さらにiPad専用のアプリでは、開くと最初にリールを表示したり、モバイルアプリではリールとDMにアクセスしやすいデザインの変更を検討していると言う。モバイルアプリのデザイン変更に関しては、「数週間のうちにテストをスタートする予定で、その後正式導入します」と使いやすさを追求している。
InstagramもAiで進化
・リコメンデーション機能
さらに、今後のInstagramの戦略の中心はAIだと味澤さんは言う。「MetaはAIに大規模投資をしています。MetaAIなど力を入れていますが、InstagramもAIでさらに体験を向上させます。特にユーザーが興味を持っているコンテンツをAIで分析し、好みに合った提案をするリコメンデーション機能をさらに強化します」(味澤さん)。
・検索機能アップ
さらに、AIを活用して管理しやすくなる取り組みにも力を入れ、おすすめや検索の精度を向上させていく。その人に合ったトピックを表示してくれて、それに対して利用者が自分で興味をフィードバックしていく。「まずは、リールのタブでこの機能を生かしていく予定です」(味澤さん)。
さらに日本では特に検索が使われているため、MetaAIにより、さらにその機能を強化していく。すでに一部の英語圏の国ではMetaAIを検索に取り入れて検索精度を上げている。進化した検索では、回答に対してさらにエージェントに質問が可能になるなど、対話型となる計画もある。
・広告効果の改善
「AIを活用することで広告効果の改善を行い、ビジネスの成長に貢献します」(味澤さん)。Metaの提供するテクノロジーに投資した $1.00あたりの広告費用対効果(ROAS)は$3.71である。つまり、企業はInstagramを使い、投資に対して3倍強の売上や利益が見込まれることになる。
キャンペーンも効果絶大で、2024年12月に実施したAdvantage+ キャンペーンを活用した結果、獲得単価(顧客一人を獲得するための費用)の改善率は9%もアップした。企業はもうInstagramを無視できない状況になっている。
今後のInstagramはクリエイティビティの可能性を広げる
「今後のInstagramはクリエイティビティを最大限発揮できるように、開発を進めていきます」と味澤さん。例えばRestyleと呼ばれるMetaAIを活用した動画編集機能をInstagramストーリーズなどで利用できるようにすることで、ボールを犬に変化させたり、庭で撮った動画を水中動画にワンタップで編集できるようになっている。
Meta AI Voice Translationsは動画の音声翻訳機能で、例えば英語で話している動画を自然にスペイン語で話しているように翻訳できる。唇の動きなども再現され、英語がスペイン語に変換されても音声のトーンが変わらず再現できる。これら二つの機能は、時期は未定だがいずれ、日本でも導入していく予定である。
Instagramとコラボしたプリ機が新登場
さらにInstagramでは15周年を迎え、フリュー(本社東京都渋谷区、榎本雅仁代表)が展開しているプリントシール機「EVERFILM(エバーフィルム)」とのコラボを今月から来年1月5日まで、実施する。プリントシールとのコラボは今回が初めてで、デザインは若年層に大人気のイラストレーターREDFISHさんの描き下ろしとなっている。
EVERFILMで「Instagram15周年」を選択するとコラボデザインで撮影できる仕組みで、プロジェクターフォトの背景は2種類。撮影したプリにワンタッチで落書きができる「想い出自動落書き」が2種類選択でき、シールデザインも3種類から選べる。
今回、コラボに至った経緯について、フリューの代表取締役社長榎本雅仁さんは、プリはInstagramの進化とともに、Instagramを意識した開発をしてきたと語っている。「例えば、Instagramを意識して写真の周囲に白い枠を入れたり、シールが半透明になっていて、写真をかざすと空を透かして見ることができるような機能などです。今回のEVERFILMの中でも携帯をおける棚を用意していて、プリを撮っている姿を動画などで撮影できるようにしています」。
「弊社が実施しているインタビュー調査によると、最近ではプリを撮ると約8割がInstagramのストーリーズにあげていますが、オープンでなく、親しい友達機能などを使ってクローズドで共有する傾向が高くなっています。人によっては3つぐらいアカウントもっていて、オフィシャルや推し活など、それぞれに応じて使い分けているようですね」と、若年層にとって、Instagramは大きなツールとなっている。
15年前、写真共有アプリとしてスタートしたInstagram。クリエイティビティをコアの価値として、リールとDM機能に特化しながら、AIの活用も進めていくということは、インフルエンサーなど編集スキルの高い人がユーザーの中心になっていく可能性も高い。「写真」から「動画」への大転換は、ユーザーにどんな新しいエンゲージメントを私たちにもたらしてくれるのか。今後も目が離せない。