
およそ1年前から米不足というワードが世間を飛び交い、米価格が高騰。政府による備蓄米の放出効果により、価格も安定するかに見えたが、昨年と比べてもまだ1000円ほど高い状況にあるという。
「令和のコメ騒動」は相変わらず続いているように見えるのだが、そんな不安を一掃してくれそうな救世主がSNSにいた。
米農家の傍らヴィジュアル系バンド「曇りのち、」のドラムスとして活動
米不足というワードからは想像できない鮮やかなピンク髪で新米を収穫する彼は、米農家の傍らヴィジュアル系バンド「曇りのち、」のドラムスとして活動している魅影(みかげ)さん。
農家なのにヴィジュアル系、バンドやってるけど米農家、そんな異端すぎる彼の投稿がつい先日、大バズりして話題になった。
ド派手なルックスとパフォーマンスでファンを魅了する若きV系米農家は現状をどう思っているのか?そして、どんな日常を過ごしながら、米と音楽を育んでいるのか?
今回、あまりにも気になったので本人を直撃した。
――まずは、魅影さんのプロフィールをお聞きしたいのですが…
「性別;男、趣味;映画鑑賞(特に昔の『男はつらいよ』『兵隊やくざ』など)。年齢はごめんなさい」
――音楽を始めたきっかけは?
「中学生の時、友人にV系の音楽を勧められて興味をもち、高校に進学した時に軽音楽部に加入。そこでドラムを始めたのがきっかけです。バンド活動も10年程しています!」
個人的にV系の方に取材するのは初めてなので、どこまで話を聞いていいのか勝手がわからないのだが、日本の未来の希望「若き米農家」に、本音を伺いたい。
そもそもなぜヴィジュアル系で米農家なのか?
「父を若くして亡くし、長男ということもあって実家の米農家を継ぐ決断をしました。基本的には一人で農作業をやっているので心折れそうになることもありますが、米作り歴は10年になります!」
ただ、米農家とバンド活動は時間帯が真逆。時間がいくらあっても足りないという。
「夜はライブをやって早朝から農家として仕事をしてるので、日々、寝不足気味なのが正直大変です(笑)苗の管理が大事な時期にツアーが入ると昼に飛行機で向かい、ライブ終わったらすぐに新幹線で帰るといったハードスケジュールになる事も、、、」
そんなハードな日々を長年続けてきた魅影さん。かつては、家族の迷惑にならないように田んぼの近くでドラムの練習をしていたこともあった。
奇しくも、音楽で作物を育てる音響栽培のように「ドラム育成米」に取り組んでいたわけだが、はたから見ればかなり怪しい行動でしかない。当時は職務質問を受け、家族ともども事情聴取を受けたとか。
しかしそれは音楽にも米作りにも本気という証。
「苗の管理には一番気をつけています。そこでその年のお米が決まるという考えなので、移植後はどこの農家さんとも変わらないと思います」
その結果生まれたのが、自らの名を冠する「魅影米(コシヒカリ)」。先のバズりも大きく影響し、多くの注文が寄せられている。
若きミュージシャンであり、若き米農家の魅影さんは、昨今の米不足をどう感じているのか?V系米農家のリアルな感情も聞いた。
目指すは日本武道館とバンドマンにもやさしい農業
今年秋を迎えても、米価格は依然として高いままだ。
農林水産省によると、米の平均価格は今年6月以降備蓄米の流通により低下したものの、8月以降は新米の出回りや備蓄米の販売がピーク時に比べ減少したことにより上昇。その後、横ばいが続いているという。
ちなみに、令和7年9月29日の週の平均価格は、5kg4205円だった。
参考:https://www.maff.go.jp/j/syouan/keikaku/soukatu/ksppos.pdf
価格を下げて欲しいといくら叫ぼうが、備蓄米が出てこようが、お米はなかなか我々に歩み寄ってくれない。
現在の米の値上がりを解消するために必要なことについて魅影さんは、
「現実的ではないですが、お米の価格を生産者、消費者の納得のいく値段で固定できればいいのではないかと思います」
「今は高くなってそればかりが話題になっていますが、コロナ禍の時なんて30kg4500円だったことも。当時はあまりの安さに、流石に農業を続けられないかもしれないと不安になりました。そういう時期に辞めてしまった農家さんも多いと思います。辞めてしまう人を増やさないためにも、米離れを阻止するためにも、正しいお米の値段で固定化できればいいのかなと」
「海外から輸入したりするのが手っ取り早く解消できる案かもしれませんが、折角日本で美味しいお米が作られてるのにそれは悔しいです」
価格高騰、そして米不足…さらに大きな不安もある。
「米不足については昨年の異常気象による不作も原因の一つかもしれませんが、農家を辞めちゃう人が増えてきているのも事実なんです。同級生もみんな町を出てしまっていますし…」
若き米農家のリアルな声。問題の解決は一筋縄ではいかない。
ただ、応援してくれる人が沢山いることも事実だ。
魅影さんが丹精込めて作った2025年度「魅影米」には注文が殺到。SNSでは「これからはずっと魅影米!」、「本当に今まで食べた米で一番美味しい!」と絶賛する声が多く寄せられている。
そしてそれは、ミュージシャンとしての活動にも大きな追い風に。
「なにより覚えてもらいやすいのがありがたいかなと。バンドをやりつつ米農家をやってると『あ、お米の人だ』って言ってもらえたり(笑)」
「稲刈り動画やひとり農業の投稿が思った以上にバズって、驚きとともにバンドもお米も広く知ってもらえたのでとても嬉しかったですね」
ではここで改めて、魅影さんが所属するバンド「曇りのち、」の魅力、音楽へのこだわりを伝えておこう。
「耳に残るメロディ、哀愁漂う世界観、思わず世界に入り込んでしまう歌詞。1曲1曲何度も話し合って色々なフレーズ試して作っているので聴けば聴くほど好きになれるはずです」
――「曇りのち、」が目指す未来は?
「バンドを組む時に決めたのは、メンバー誰かが死ぬまで続けられて、愛されるバンドにしよ
う!でした。なので健康には気をつけます(笑)あとは誰しもが知るバンドになりたいです。日本のバンドといったら曇りのち、!頑張ります!!」
最後に、魅影さん自身の夢を聞いた。
「音楽に関しては日本だけではなく、海外にも発信して行きたいです。まずは「曇りのち、」ファンの皆様と魅影米ファンの皆様と日本武道館目指します!」
「農業に関しては土地を拡大し会社にして、バンドマンでも働けるシフト自由、髪色自由な職場を作りたいです!バンドも農業もどちらも実現させるので応援よろしくお願い致します!」
魅影さん X @K_N_mikage
曇りのち、公式X @kumorinochiinfo
曇りのち、公式YouTube
文/太田ポーシャ