
元法務教官という経歴を活かして事件の解説を中心に活動し、特化型VTuberの最前線を走る「犯罪学教室のかなえ先生」。2020年9月に活動を始め、このたび活動5周年を迎えた。YouTubeチャンネルは登録者数30万人を超え、コラボカフェは満員御礼、出版した書籍も重版を重ねるなど華々しい実績を誇る。一見順風満帆そうに見えるが、その裏には数々の苦難と出会い、そして別れの物語が隠れている。
活動開始のきっかけは〝友人の志〟とニコ生の思い出
VTuberという活動スタイルはすでに広く定着し、ゲーム配信や雑談にとどまらず、活動の幅は多様化している。その一つが「特化型VTuber」だ。自身の知識や経験を活かし、専門領域の〝語り部〟として活動するVTuberを指すが、その第一人者として真っ先に名前が挙がるのが、犯罪学教室のかなえ先生だろう。
元法務教官という異色の経歴を持ち、犯罪心理学や教育犯罪学の知見から話題のニュースを深堀りして解説。深い知識量や洞察眼、さらに軽快なトークセンスを兼ね備え、ラジオ感覚でも楽しめるのが特徴だ。

2020年9月に活動を始め、今や登録者数30万人を超える存在となったが、そのスタートは意外なきっかけからだった。
「友人にライブ配信者がいたのですが、とある事情で活動を続けられなくなって……それが記憶にあったのと、当時、世の中はコロナ禍真っ只中で、会社でも新しいことをしようとなっていたときに、1から新しいことで何かを成し遂げたいと思い、元少年院教官の経験は他と差別化できそうと考えてネットやSNSの活動を始めようと考えました」
活動スタイルを模索する中で思い浮かんだのは、少年院勤務時代の夜勤明けに観ていた「ニコニコ生放送(ニコ生)」のライブ配信だ。
「夜勤明けに暗いニュース見るのしんどかった時期があって、そんなときにニコ生はいつも誰かが配信していて、それがすごく居心地良かった記憶があります。あと、配信ならば、動画編集スキルが皆無でも発信できると思ったし、立場上、顔出しや名前を出せないのもVTuberならクリアできてしまいます。VTuberをちゃんと認知するようになったのは、キズナアイさんがテレビでタレントさんと対等に喋っているのを見たときだったかも?」
活動する上で、YouTubeを拠点とすることは決めていたという。
「まず、YouTubeは単なる動画プラットフォームではなく、世界を股にかけたインフラだと思っています。ありとあらゆる情報が流れているし、官公庁もチャンネルを作るほどには投資しているわけです。そう簡単になくなることはない。だからこそ、YouTubeで『●●といったら◯◯』と言われる椅子を獲得することには大きな意味があると思ったんです」
反骨心で壁を乗り越え、繋がりが飛躍を支える
活動を始めた当初は知名度が中々伸びない日が続いた。心無い言葉を投げかけられることもあった。
「『VTuberらしくないから、名乗るな』なんて言われました。僕も負けず嫌いなんで、逆に火がついちゃって、『絶対に1年で登録者数1万人になるから、見届けてくれ』って配信で宣言したんです」
それ以降、配信頻度を週2回からほぼ毎日に増やし、イベントやコラボ配信の機会も重ねながら知名度を拡大。宣言どおり、1年後に登録者1万人を達成した。
「〝1年で1万人宣言〟の配信を見てくれていた4人の視聴者は、今でもイベントに駆けつけてくれるんですよ。本当にありがたい存在ですね」
人との巡り合いも大きな転機をもたらした。
「懲役太郎※1さんとは長く一緒に活動していますが、近い領域を扱う2人が対立ではなく、同盟を組んで活動するという前例を作れたのではないでしょうか。最近は犬山たまきさん※2とコラボする機会が増えましたね。彼はいわゆる〝王道〟のVTuber。その輪の中に畑違いの自分も入れるんだって分かったのは、大きな自身になりました」
※1:元暴力団員を自称し、反社会的勢力に関する情報発信を主に行なっているVTuber。
※2:漫画家の佃煮のりおさんがプロデュースしている「男の娘バーチャルYouTuber」。

こうした取り組みが実を結び、現在では登録者数32万人を突破。23年と24年に出版した書籍は重版され、25年8月に実施したコラボカフェはチケットも完売。池袋でのポップアップストアではぬいぐるみが売り切れるなど、活動の広がりを実感している。
「コラボカフェにお客様がたくさん来てくださったのは、特に嬉しかったですね。意識していたわけではないのですが、気づけばタレント性のようなものもついてきて、正直ちょっと戸惑っています(笑)あまり人に好かれる活動スタイルではないと自認しているので」

戦友との別れ、そこから生まれた覚悟
勢いを増し続ける一方で、活動をやめようと考えた瞬間もあった。そのきっかけは、25年5月に突然訪れた、かなえ先生のキャラクターモデルの制作者である夢乃とわさんとの別れだった。
「急性骨髄性白血病でのご逝去でした。活動開始前からの出会いで、『世界一のクリエイターになりたい』という夢を持った方でした。その言葉に共感して、モデル制作だけでなく活動方針や日々の悩みまで支え合う、まさに〝戦友〟のような存在でした」
失意の中で再び立ち上がる力をくれたのも、人とのつながりだった。
「夢乃とわさんのご家族から応援の言葉をいただきましたし、活動のきっかけになった友人や、とわさん自身の夢もあった。2人の夢を背負うことが自分の役目だと考え、覚悟を決めましたね。もう行けるところまで進んでやろうって感じです」

出会いと別れを紡ぎながら、5年間を駆け抜けてきたかなえ先生。今後は登録者数40万人を目標に、さらにその先を見据えている。
「いずれは自分のプラットフォームを持ちたいと考えています。SNSだとどうしても外部の成約に縛られるので、自由に活動できる場所が欲しい。今後10年ほどで必ずそうした流れが加速すると思うので、先行者として取り組みたい。そのためにも、まずはYouTubeで知名度を高めたいですね。あとファンとの交流も増やしていきたいと考えています」
仲間の夢を背負い、多くの人の応援を背に、かなえ先生の挑戦は、5周年を超えて新たなステージへと続いていく。
書籍2冊が重版出来!
かなえ先生の書籍『人生がクソゲーだと思ったら読む本 ~生きづらい世の中の突破術~』『世の中の8割はどうでもいい。~頑張ってもうまくいかない人生を変える思考術~』がおかげさまで重版となりました!
『人生がクソゲーだと思ったら読む本』は、多くの人が抱える悩みや生きづらさを、コントロールできない「他人軸」と努力で変えられる「自分軸」に切り分ける思考のきっかけを教えてくれます。『世の中の8割はどうでもいい』からは、SNSで人と人との距離が近くなりすぎてしまった世の中との上手な付き合い方、そこから生まれるストレスとの向き合い方について学べます。
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取材・文/桑元康平(すいのこ)