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発売1週間で1000万本突破!新感覚飲料「お~いお茶 PURE」が若者に刺さった理由

2025.10.23

■連載/ヒット商品開発秘話

海外のトレンドから着想を得て、日本茶の新たなスタイルを提案するべく開発された無糖緑茶飲料が、話題を集めている。伊藤園が2025年3月に発売した『お~いお茶 PURE』シリーズのことだ。

『お~いお茶 PURE』シリーズは、お茶の伝統を引き継ぎつつグローバルで日本の茶文化を伝播させる『お~いお茶』の新シリーズ。飲んだ瞬間にはっとする香りとまろやかな口あたりが楽しめる〝PURE GREEN〟と、レモンの爽やかな香りとお茶の甘みが楽しめる〝LEMON GREEN〟の2フレーバーを発売したところ、発売から1週間で出荷本数が1000万本を突破した。

『お~いお茶 PURE』シリーズから発売された〝PURE GREEN〟。火入れを極力抑えることで清々しい香りを引き出すとともに、じっくりと抽出することで苦みや渋みを抑えながらお茶のあまみを引き出した。600ml入ペットボトルと2L入ペットボトル、ティーバッグ(10袋)を用意

海外のトレンドを取り入れ若年層を開拓

広く海外でも親しまれるようになった緑茶だが、『お~いお茶 PURE』シリーズの開発背景には、日本以外の国では新しい飲み方やアレンジが浸透していることがあった。

「『お~いお茶』は発売から36年目になりますが、新しいお客様を開拓して商品を届けることに課題を感じていました。とくに若年層や女性にカジュアルに飲んでもらえる新しい緑茶を届けたいという想いから、新商品を開発することにしました」

このように話すのは、マーケティング本部緑茶ブランドグループ ブランドマネジャーの吉田達也氏。若年層獲得を目的として直近では、2023年5月に『お~いお茶 ◯やか(まろやか)』シリーズを発売しているが、『お~いお茶 PURE』シリーズの開発に当たっては海外で親しまれているフレーバーをプラスしたアレンジにも着目した。外国人は緑茶の苦み、渋みを苦手に感じる人が多く、日本でも若い世代では同様の傾向があるからであった。吉田氏は次のように話す。

「中国や北米がそうなのですが、海外は緑茶に別のフレーバーをプラスして楽しむ飲み方が一般的です。ブームになっている抹茶の使い方も、海外ではフルーツをつけたり別のフレーバーをプラスしたりと、日本人では思いつかないようなアレンジが盛んです」

伊藤園
マーケティング本部緑茶ブラングループ
ブランドマネジャー
吉田達也氏

緑茶にプラスするフレーバーはライムのような柑橘系、ベリー系、ココナッツなど、甘いものから酸っぱいものまで多種多様。アジア圏で無糖茶を飲む習慣がないところは砂糖を入れて飲むところもある。中国では緑茶飲料を提供するティースタンドがコーヒーチェーンをしのぐほど営業しており、有糖の緑茶のほか、フルーツジュースと合わせたものやラテといったアレンジした緑茶が好まれている。

すっきりしつつ飲みごたえのある味わいの実現

〝PURE GREEN〟は苦みや渋みを抑えて若葉のようなお茶の香りと爽やかな風味を引き出しており、〝LEMON GREEN〟はレモンの爽やかな香りとお茶のまろやかな甘みを特長としている。レモンと緑茶の組み合わせは、あらゆる香りと組み合わせて検証する中で、柑橘系との相性が良かったことから採用された。『お~いお茶 ◯やか』シリーズでも2024年6月に季節限定で〝氷水出し檸檬緑茶〟を販売しており、評判が良くかなりの反響を集めたことから、香りや味わいには自信があった。

フレーバーが引き立つようにするためにも、緑茶はすっきりとした味わいにすることが不可欠だったといってもいい。しかし、すっきりさせると「薄い」と受け止められかねない。吉田氏は次のように話す。

「すっきりと薄いは紙一重なところがあります。薄いと思われないようにしつつ、すっきりでありながら飲みごたえのあるものにするため試作検証で右往左往しました」

〝LEMON GREEN〟に関しては過去にレモンフレーバーの緑茶をつくったことがあるといはえ、レモンとお茶の香りを両立させることは簡単ではなかった。「うまくいかないと、お茶の渋みとレモンの苦みが喧嘩します。レモンのどのあたりを使うか、産地はどこにするか、といったことは試作検証を進めて決めていきました」と吉田氏は明かす。

〝PURE GREEN〟と同時に発売された〝LEMON GREEN〟。心地よい爽やかなレモンの香りと相性の良い茶葉を選定し、じっくりと低温抽出することで苦みや渋みを抑えながらお茶の甘みを引き出した。後述するアメリカでの発売開始に合わせ、9月に味わいとパッケージがリニューアルされた。容量は600ml

ベースの緑茶は、すっきりと甘さが感じられる抽出を実行。茶葉の産地のほか、火入れ、焙煎も、これまでの『お~いお茶』から変更している。

試作検証は、企画担当者レベルでも300回程度は実施している。『お~いお茶PURE』シリーズが特別多いわけではなく、同社の商品開発では普段からこの程度の試作検証は当たり前に行なっているという。吉田氏は次のように話す。

「マーケティング部のメンバーは、茶畑に行ってつくりたい商品を考えてくる環境の中で育てられます。レモンフレーバーのお茶がつくりたいと考えたら、自分でレモンに合うお茶を見つけ、レモンの搾り汁やレモン果汁を入れたり乾燥レモンを粉末にして溶かしたりと、自ら理想とする味わいのものをつくって開発に飲んでもらうことをします。遠回りかもしれませんが、言葉だけだとなかなか伝わらないので、理想とするものをつくって飲んでもらい目標とする品質を共有しているわけです。この後、開発部門が開発に着手して何百回も試作評価を繰り返しながら、目標品質への到達を目指していきます。マーケがつくりたいものの理想形を現物で示してからが、開発部との味づくりのスタートです」

7:3の割合で男性より女性の方が多く購入

『お~いお茶 PURE』シリーズの売れ行きは同社の予想以上で、現時点で計画の2倍以上売れている。吉田氏によれば、過去数年間に発売された同社の商品の中でここまで動きのいいものはないという。

狙い通り若年層が多く購入しているが、特徴は男性よりも女性の購入が多いこと。一般的な緑茶飲料の購入比率は7:3で男性の方が多いが、『お~いお茶PURE』シリーズ購入者の男女比は7:3で女性の方が多い。

アイテム別の売れ行きを見ると、〝PURE GREEN〟の方が売れている。〝LEMON GREEN〟の売れ行きは、日本ではフレーバー緑茶が定着していないことの影響も受けているが、「味の面では〝LEMON GREEN〟はお客様から高い評価を得ています。『すっきりゴクゴク飲める』といった声が多いです」と吉田氏。今後配荷が進み販売店舗が拡大していけばもっと伸びていくと同社は見ている。

キャッチコピーは「お茶の常識、すてましょう。」

商品のプロモーションは発売開始直後から、『お~いお茶』のグローバルアンバサダー契約を結んでいるロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手をフル活用。テレビCMをメインに、東京ドームで開催された2025年シーズンのドジャースの開幕戦に合わせ3月14日から19日の間、東京ドームシティ内にある広告メディア全9か所に大谷選手を起用したCMやキービジュアルを掲出するなどした。

大谷選手を起用した最新のキービジュアル。手に持っているのは後述する9月に発売されたばかりの〝YUZU HOJI〟
2025年3月にドジャースが東京ドームで今シーズンの開幕を迎えた際、東京ドームシティ内にある広告メディア全9か所に大谷選手を起用したCMやキービジュアルを掲出した様子

キャッチコピーは「お茶の常識、すてましょう。」テレビCMで話題になった大谷選手がサッカーのリフティングを見せるシーンも、常識を捨てることを表現したものだが、お茶の伊藤園が「お茶の常識、すてましょう。」と言うことに関しては社内で揉めに揉めたところだった。吉田氏はこう振り返る。

「伊藤園がこういう言い方をすることに疑問を呈する声はありました。ただ、われわれとしてはとにかく、伝統的な日本茶の良さを大切にしつつも、新しいお茶の価値を提供したかったので、何としてもこのキャッチコピーでやらせてほしいという想いがありました。いままでの商品では届かなかったお客様に届けるのが『お~いお茶 PURE』シリーズの使命でしたので、何とか社内を説得してキャッチコピーを使うことができました」

また、6月に〝COLD BREW LEMON GREEN〟の限定発売を記念して、全国の量販店で『コールドブリューティーフェス』を開催。全国430の量販店で『お~いお茶PURE』シリーズのほか、リーフ(茶葉)を水出しした緑茶やフレーバーティー、粉茶を水で溶いたものにマンゴージュースなどフルーツジュースを注いでつくったセパレートティーなどの試飲会を実施した。お茶の新しい楽しみ方を伝えるためにフレーバーティーを実際に飲んでもらい、試飲できるものの1つとして『お~いお茶 PURE』シリーズを用意した形だ。

6月に夏季限定で発売された〝COLD BREW LEMON GREEN〟。氷水出し緑茶の甘みにレモンの爽快感が楽しめる味わいに仕立てた。容量は600ml
『コールドブリューティーフェス』実施時の様子

今後は新フレーバーを季節限定品などの形で適宜発売していきたい考え。9月にシリーズ初のほうじ茶〝YUZU HOJI〟を期間限定で発売した。さわやかで自然な甘みの国産ゆずと、ゆずの爽快感を引き立てる香ばしい香りと軽やかな飲み心地を引き出す国産ほうじ茶により、秋らしい味わいに仕上がった。

9月に限定発売されたばかりの〝YUZU HOJI〟。ゆずの爽やかな香りとほうじ茶の香ばしさがマッチ。隠し味にやさしい風味の国産しょうがエキスをブレンドし、すっきりとした飲み口を際立たせている。600ml入ペットボトルとティーバッグ(6袋入)を用意

取材からわかった『お~いお茶 PURE』シリーズのヒット要因3

1.海外のトレンドを取り入れユーザーを拡大

いままでの商品では届けられなかった新しいユーザーにリーチするには、関心を持ってもらえる新しい飲み方の提案が不可欠。そういう意味から言うと、海外で支持されているフレーバー緑茶は日本では新規性が高く、新しいユーザーを開拓する上で関心を持ってもらいやすかった。

2.緑茶の飲み方の幅を広げた

ベースとなる緑茶は苦み、渋みを抑えたすっきりした味わい。苦み、渋みが苦手な若年層の支持を獲得したが、同時に緑茶も気分や状況に応じて飲み分けられる提案を可能にし、緑茶の飲み方の幅を広げることができた。

3.刺激的で攻めたキャッチコピー

キャッチコーピーは「お茶の常識、すてましょう。」。これまで正当派の緑茶飲料を送り出してきた伊藤園とは思えないほど刺激的で攻めたキャッチコピーだが、注目を集めるのに十分で、トライアルの獲得には効果的だった。

「すっきり」は「薄い」と紙一重だが、「薄い」という反応はほぼ聞かれないという。苦み、渋みを抑えつつも緑茶らしい味わいはしっかり感じ取ってもらえているようだ。

〝LEMON GREEN〟は9月末からアメリカでも順次販売が始まっている。フレーバー緑茶に関しては日本より先を行き親しまれている海外で、日本のフレーバー緑茶がどう評価されるかが楽しみである。

製品情報
https://www.itoen.jp/oiocha/pure/

取材・文/大沢裕司

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