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「静かな退職者」がいると職場全体の幸福感が低くなる傾向

2025.10.10

近年、国内外で頻繁に取り上げられている「静かな退職(Quiet Quitting)」は、仕事に必要な最低限のことだけを行い、それ以上は行わないという状態を指す。このような働き方は決して新しいものではなく、どの時代・どの組織にも一定数存在していたと考えられる。しかし、労働人口の減少・技術革新といった外部環境の変化が進む中、これまで以上に許容されづらくなっているのかもしれない。

実際、今年に入ってから日本国内でも「静かな退職」をめぐる報道が目立つようになり、その存在をどう受け止めるべきか、社会全体で議論が始まっている。

こうした中でリクルートマネジメントソリューションズは昨年度に続き、今年度も従業員規模が50名以上の企業に勤める25歳~59歳の正社員7,105名に対して、「働く人の本音調査2025」を実施し、その結果を発表した。第2弾となる今回は、近年国内外で注目を集める「静かな退職(Quiet Quitting)」に関する分析結果を公開した。

Topic 1:4人に1人が「職場に『静かな退職者』がいる」と回答

「同僚や上司に静かな退職をしている人がいる」と感じるかを尋ねたところ、27.7%が「あてはまる」「どちらかといえばあてはまる」と回答し、回答者の約4人に1人が“静かな退職者の存在”を職場で認識していることが明らかになった。自分は「静かな退職」をしなかったとしても、そうした状態にある人と関わる可能性は大いにあることがわかる。

図表1:「自分の同僚や上司に『静かな退職』をしている人がいると感じる」の回答結果

Topic 2:職場に「静かな退職者」がいると、周囲の幸福感は低い

「静かな退職者」は周囲に影響をもたらすのだろうか。必要最低限の業務を遂行していれば大きな影響はないとも考えられるが、本調査の結果は異なった。「自分の同僚や上司に『静かな退職』をしている人がいる」人とそうでない人の心理状態を、「主観的幸福感」(「非常に幸福」を10点、「非常に不幸」を0点として聴取)を用いて確認したところ、周囲に静かな退職者がいると感じている人は、いると感じない人に比べて統計的に有意に幸福感が低いことが確認された。

図表2:「自分の同僚や上司に『静かな退職』をしている人がいる」と感じるかどうかによる主観的幸福感の違い


■「同僚や上司の『静かな退職』によって、恩恵を感じたことがある」人も存在―15.1%が実感

「同僚や上司に『静かな退職』をしている人がいる」と回答した人を対象に、その影響について尋ねた結果、「不利益を被ったことがある」と回答した人は半数を超えて55.1%に上った。一方で、「恩恵を受けたことがある」と回答した人も15.1%存在しており、恩恵を受けたと感じたことがある人も一定数いることが明らかになった。

図表3:(「自分の同僚や上司に『静かな退職』をしている人がいる」に「あてはまる」「どちらかといえばあてはまる」と回答した人のみ)「自分の同僚や上司に『静かな退職』をしている人がいることで、不利益を被ったと感じたことがある」「自分の同僚や上司に『静かな退職』をしている人がいることで、恩恵を受けたと感じたことがある」の回答結果

Topic 3:20代は同僚や上司の「静かな退職」に恩恵を感じる割合が他の年代よりも高い

世代別に見ると、30・40代では同僚や上司の「静かな退職」に不利益を感じた人が相対的に多く、20代では恩恵を感じた人が相対的に多いという結果が出た。

図表4:(「自分の同僚や上司に『静かな退職』をしている人がいる」に「あてはまる」「どちらかといえばあてはまる」と回答した人のみ)「自分の同僚や上司に『静かな退職』をしている人がいることで、不利益を被ったと感じたことがある」「自分の同僚や上司に『静かな退職』をしている人がいることで、恩恵を受けたと感じたことがある」の年代別の回答結果

Topic 4:不利益の最大の理由は“仕事量増加”、恩恵は“相対的評価上昇”

上記の背景を探るべく、静かな退職者が周囲にいることで生じた不利益や恩恵について、選択肢式および自由記述式で具体的に尋ねたところ、不利益の理由として最も多かったのは「仕事量が増えた」(47.7%)となった。

自由記述回答を確認すると、背景には「増えた仕事が給与や評価に十分に反映されない」という不公平感があるようだ。つまり、業務量そのものよりも、処遇の公正性に欠けると捉えた場合に不利益を被ったと感じてしまうのかもしれない。

また、他の自由記述回答からは「静かな退職者を部下にもつ上司としての負担」「静かな退職者を上司にもつ部下としての負担」の双方が挙げられた。特に上司としての不利益が目立っており、「静かな退職」による不利益が管理職や管理職候補者の不足の一因となっている可能性も示唆された。

図表5:(「自分の同僚や上司に『静かな退職』をしている人がいる」に「あてはまる」「どちらかといえばあてはまる」と回答した人のみ)「自分の同僚や上司に「静かな退職」をしている人がいることで生じた不利益はありましたか。以下からひとつカテゴリーを選択したうえで、具体的に教えてください。」の回答結果 ※未回答については図表から割愛

不利益を受けたと感じたことがある理由

不利益の理由<自由記述から抜粋>

一方で、恩恵を受けたと感じた理由として最も多かったのは「相対的に自分の評価が上がった」(12.5%)となった。自由記述回答では、主に同僚として「静かな退職者」と働く場合の恩恵が目立った。加えて、業務の効率化や組織風土の変化といった、職場全体にもたらされる恩恵を挙げる回答も確認された。

図表6:(「自分の同僚や上司に『静かな退職』をしている人がいる」に「あてはまる」「どちらかといえばあてはまる」と回答した人のみ)「自分の同僚や上司に「静かな退職」をしている人がいることで生じた恩恵はありましたか。以下からひとつカテゴリーを選択したうえで、具体的に教えてください。」の回答結果 ※未回答については図表から割愛

恩恵を受けたと感じたことがある理由

恩恵の理由<自由記述から抜粋>

Topic 5:周囲に「静かな退職者」がいても、成長支援や正当評価の実感があれば幸福感は高い

「静かな退職者」が周囲にいると主観的幸福感が低い傾向にある一方、不利益を感じる場合も、恩恵を感じる場合もあることがわかった。では、「静かな退職者」が組織にいるなかで健やかに働き続けるため
の条件はあるのだろうか。

本調査で明らかになった条件とは、第一に「成長支援感」だ。周囲に静かな退職者がいると答えた人のうち、「会社は、従業員の成長の支援をしてくれている」という実感が高い人((「あてはまる」「どちらかといえばあてはまる」)を選択した人。以下、「成長支援感高群」)は、そうでない人(「あてはまらない」「どちらかといえばあてはまらない」を選択した人。以下、「成長支援感低群」)と比べて主観的幸福感が統計的に有意に高く、その差分は1.57となった。

さらに「周囲に静かな退職者がいるが、成長支援の実感がある」人は、「周囲に静かな退職者がいない」人よりも主観的幸福感が高い結果を示し(差分は0.49)、成長支援が主観的幸福感を支えている可能性が示唆された。

図表7:(「自分の同僚や上司に『静かな退職』をしている人がいる」に「あてはまる」「どちらかといえばあてはまる」と回答した人のみ)成長支援感の高低による主観的幸福感の違い

第2の条件は「正当評価感」だ。周囲に静かな退職者がいると回答した人のうち、「会社は、従業員を正当に評価している」という実感が高い人(「あてはまる」「どちらかといえばあてはまる」)を選択した人。以下、「正当評価感高群」)は、そうでない人(「あてはまらない」「どちらかといえばあてはまらない」を選択した人。以下、「正当評価感低群」)と比べて主観的幸福感が有意に高く、その差分は1.62となった。

さらに、「周囲に静かな退職者がいるが、正当に評価されている実感がある」人は、「周囲に静かな退職者がいない」人よりも幸福感が高く、その差分は0.67となった。

これらの結果から、静かな退職者が周囲に存在しても、会社や上司からの成長支援感・正当評価感を感じられている人は主観的幸福感が高いことがわかる。特に正当評価感については、不利益の理由に関する自由記述回答(図表5)でも「(静かな退職者と)給料があまり変わらないことに不公平感がある」「自分より職群が上の人が仕事をしていないところを見ると人事評価が不当に感じ、やる気が下がった」などと述べられていたこととも符合し、評価や処遇の公正性が重要であることを裏付ける結果となった。

図表8:(「自分の同僚や上司に『静かな退職』をしている人がいる」に「あてはまる」「どちらかといえばあてはまる」と回答した人のみ)正当評価感の高低による主観的幸福感の違い

本レポートにおいては、「静かな退職」をする人と共に働くことについて考察した。前提として、組織との距離感をどの程度取るかは個人の自由であり、上司や人事がスタンスを強制できるものではない。組織と一定の距離を保つ権利は誰にでもある、ともいえるだろう。

そもそも「静かな退職」という現象自体は、以前から存在していたと考えられる。「働きアリの法則」*などに示されるように、どの集団にも一定生じる自然な状態であり、必ずしも排除や防止を目指すべき対象ではないのかもしれない。

*一定の割合(2:6:2と言われることが多い)でよく働くアリ、普通に働くアリ、働かないアリがいるという法則。なお、よく働くアリのみを抽出しても、同じ割合で働かないアリが生じるとされている。

本調査の結果からは、周囲に「静かな退職」をしている人がいると不利益を感じる人が少なくない一方で、恩恵を感じる人も一定数存在することがわかった。そのような実態をふまえ、本人の同僚や上司は、静かな退職をしている人が周囲にいるということと、どう向き合えばいいのだろうか。

今回、その手掛かりが「成長の支援」や「正当な評価」にある可能性が示された。これらは一朝一夕に実現できるものではないが、制度の整備や日々のコミュニケーションの積み重ねによって形づくられていくものと考えられる。

また、働く個人も、成長を支援する制度や1on1のようなコミュニケーションの機会を積極的に活用することが重要だ。制度や機会が存在していても十分に活用されていない企業は少なくないが、一歩踏み出してそれらを利用してみることが、静かな退職者の有無といった周囲の状況に過度に影響されず、自身の幸福感を保つことにつながるかもしれない。

<調査概要>

出典元:リクルートマネジメントソリューションズ

構成/こじへい

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