
40代から50代のミドル世代による転職活動が活発化しているという。民間調査であるリクルートの「ミドル世代の転職動向」によれば、2024年までの10年間で転職者の総数は約3倍に増えており、40代と50代の転職者は約6倍で、50代に限れば12倍に増えているという。
40代および50代の中途入社の現職社員の口コミを分析
企業側の構造的な人手不足を背景に、経験豊富で専門性を持ったミドル世代に採用ターゲットが拡大しているようだ。それに加えて大企業による早期退職制度や役職定年などを控えて、キャリアを見直す40代以上の求職者が増えていることも背景にある。
採用する側である経営者や人事責任者を対象としたプロフェッショナルバンクの「45歳~50代のミドル・シニア人材の採用に関する意識調査」では、ミドル世代採用時の不安要素として「給与や待遇面における他社員とのバランス」が最多という結果も出ている。
そこで働き甲斐向上のためにさまざまな視点から調査をする「OpenWork 働きがい研究所」は、40代および50代の中途入社の現職社員による2022年以降の『OpenWork』上の投稿を集計して、「待遇面の満足度」と「人事評価の適正感」(各5点満点)の合計スコアから企業ランキングを作成して発表した。対象企業数4293社からランクインした企業の特徴からミドル世代が活躍しやすい環境がみえてきたという。
ランキングは、1位は日本マイクロソフト、2位は電通、3位はセールスフォース・ジャパンという結果だった。業界別では「メーカー・商社」、「IT・通信・インターネット」、「コンサルティング」が20社以上を占めており、特に上位10社の半数がIT企業だった。ランクイン企業のクチコミからは、成果が評価や待遇に直結して、スキルやノウハウ、人脈を携えて入社するミドル人材が活躍できる土壌があることが想像できる。
ほかにも「中途社員が多い」、「業界内外から多様な人材が集まっている」というクチコミも多数あり、中途入社者を受け入れる体制が整っており、さまざまなバックグラウンドを持つ社員が個性を発揮し合いながら働く様子が推察できるという。
ランクイン企業の社員が『OpenWork』に投稿したクチコミ
「成果重視のインセンティブになっているため、やる気のある人には素晴らしい環境です。仕事も裁量をもって大型の案件をけん引でき、専門性とリーダーシップを伸ばす環境が整っています。柔軟なリモート制度や研修資源もあるため、自分で成長をつかみ取ろうとすればチャンスが与えられる環境でもあります」(営業、日本マイクロソフト)
「プロジェクトごとにチームを組むため、体育会系で年功序列な要素が強かったが、ダイバーシティや成果主義の考え方が広まり、その文化は少しずつ変化していると感じた」(営業、電通)
「中途社員中心で即戦力が何より求められる実力主義の会社。成果を上げられる社員への待遇は非常に手厚く、報酬面でも最高クラスの金額が用意されています」(営業、セールスフォース・ジャパン)
変革マインドの強さやフラットな社風もカギ
ミドル世代の転職者には、前職での経験を生かして管理職として中途入社するケースも少なくない。管理職としての転職は、既存社員の信頼獲得や企業文化の相性などからスキルや経験以外の要素で難しさを感じることもありそうだ。
ランクインした企業の社風や組織文化に関するクチコミでは、新しい挑戦を受け入れる柔軟さや常に進化し続ける組織風土があり、上下関係なくフラットにコミュニケーションできている様子がうかがえたという。上位30社の「風通しの良さ」スコア(5点満点)は全体平均と比較して0.57ポイントも高く、こうした特徴の企業は新しく加わった管理職層に対しても受け入れ基盤が整っており、ミドル世代がスムーズに活躍できる環境が構築できていると思われる。
ランクインした企業の社員がOpenWorkに投稿したクチコミでは、「企業文化としては、イノベーションを重視する姿勢が目立つ。AWSは常に新しいアイデアを歓迎し、既存の枠組みにとらわれない挑戦を推奨している。これはAmazon全体の理念である『Day 1』(スタートアップのような姿勢を維持する)に基づいており、日々変化を受け入れ成長を目指す文化が根付いている。
また、各チームや個人に大きな自主性が与えられる一方で、その分成果に対する強い責任が求められる」(エンジニア、アマゾン ウェブ サービス ジャパン)や「新しい年度毎に体制が変わるなど日々変化がある環境。組織図を見ると半年前のものでも古く感じる時がある程に人の入れ替わりが多い」(コンサルタント、日本マイクロソフト)といったコメントがあった。
今後も人材不足を補うために、ミドル世代の受け入れは多くなるはずだ。そういった転職者を受け入れて成功するには、待遇に直結する成果主義や多様な中途入社者を受け入れるフレキシブルな環境作りが重要なポイントになりそうだ。
https://hatarakigai.openwork.jp
構成/KUMU