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地図のゼンリンがなぜトレカを?完売続出の「Map Design GALLERY CARD」開発秘話

2025.10.05

2025年7月、地図会社のゼンリンがトレーディングカード市場に参入した。テーマに選んだのは「有人離島」。後発、かつニッチなジャンルでありながら、発売直後から完売が続出する大ヒット商品となっている。

今回は、株式会社ゼンリン ビジネス企画室 企画担当 高橋圭佑さん、デザイン担当 長縄樹里さんに、開発のきっかけや商品へのこだわり、ヒットの要因についてお話を伺った。

左)長縄樹里さん、右)高橋圭佑さん

*本稿はVoicyで配信中の音声コンテンツ「DIMEヒット商品総研」から一部の内容を要約、抜粋したものです。全内容はVoicyから聴くことができます。

「ゼンリンにしかできない」で勝負。後発だからこそ生まれたニッチ戦略

地図情報をトレーディングカード化した「Map Design GALLERY CARD」。今回「有人離島」というニッチなテーマに取り組んだ理由について、高橋さんは次のように説明する。

「トレーディングカード市場には多くの商品が出回っており、ゼンリンは後発組として参入する立場にありました。そのため、まずは『ゼンリンにしかできないこと』を軸に企画を練りました。結果として選んだテーマが、有人離島です」(高橋さん)

「有人島」の中で離島振興法をはじめとした法律の対象である全 306 島から、

一般の人の立ち入りが制限されている硫黄島と南鳥島を除いた304島を選定基準とし、その中から70島を厳選した。

「カード化の対象となる304島の中から、日本全国にバランス良く分布するように選んでいます。離島がある都道府県からは、最低1~2島は必ず収録しました。また、カードには『レアリティ』があり、その枚数も考慮して選定しています。基準はシンプルに“人口”で、一桁なら『レア(R)』、二桁なら『アンコモン(U)』、三桁以上なら『コモン(C)』の3段階になっています」(長縄さん)

高橋さんは、「カードの開発を通じて、離島に興味を持つ人が増えていると感じる」と話す。

「カードを手に離島を訪れ、SNSに投稿してくださる方がいて。私も触発され、先日ついに島へ行き、カードと現地の看板を一緒に撮影してきました。社内でも同じように楽しむ社員が増えてきており、この輪がもっと広がるといいなと思っています」(高橋さん)

長縄さんも、この開発に携わったことで離島に興味を持ち始めたという。

「正直、離島に行ったことは一度もなく、企画当初はさほど興味がありませんでした。ただ、これまで地図雑貨をデザインする中で、離島を上手く表現しきれないことへのもどかしさがあり、ずっと心に引っかかっていたんです。だからこそ、今回ようやく『島』に着目できると思いました。調べていくうちにどんどん面白くなり、今ではすっかりハマっています。私もカードを持って島へ行き、写真を撮りたいと考えています」(長縄さん)

大人を魅了する離島トレカの“二刀流”戦略

“ゼンリンらしさ”が存分に溢れている、Map Design GALLERY CARD 有人離島。高橋さんは、商品の楽しみ方について次のように説明する。

「まずは、コレクションアイテムとして集めて楽しんでいただきたいです。カードには人口や面積、位置情報などの情報が分かりやすく載っているので、『こんな島があるんだ』と知るきっかけになれば嬉しいですね。興味が湧いたら、さらにご自身で調べていただき、最終的にはカードを手に現地を訪れてもらうのが理想的な楽しみ方です。ちなみに、カード裏面のシルエットを見て、島名を当てるクイズも楽しめます」(高橋さん)

商品開発にあたり、こだわりを詰め込んだのが「デザイン」と「情報の取り方」。デザインにおいては、「トレーディングカードらしさを出しつつ、落ち着いた雰囲気を持たせたかった」と長縄さんは話す。

「トレーディングカードをデザインするのは初めてだったので、まずは市場にあるさまざまなカードを研究し、“トレカらしさ”を追求するところから始めました。レアリティ表記や情報欄の配置といった基本的なレイアウトは、既存のカードを参考にしています。その上で、メインターゲットの大人の方に受け入れやすいよう、落ち着いた雰囲気を重視しました。自然物を思わせるテクスチャーのフレームで、全体的に渋みのあるデザインに仕上げています」(長縄さん)

情報の取り方については、整合性を持たせるため、公的なデータを参考にした。

「離島の情報は毎年変動しますが、カードを毎年更新するのは現実的ではありません。そこで、どの時点のデータかを明確にする必要がありました。基準を『国勢調査』に定め、カードにも出典元を明記することで、情報の正確性と信頼性を担保しています」(高橋さん)

想像を超える反響!お客様の声から広がる新たな可能性

本商品の開発期間は、わずか半年。スピード感のある開発ができた背景には、「ゼンリンらしさ」という軸があったからだと高橋さんは話す。

「企画の出発点は、近年のトレーディングカード市場の盛り上がりにありました。市場調査の結果、対戦ゲームができるカードが人気な一方、コレクション要素の強いカードにも需要があると分かり、じゃあゼンリンらしさが出せる『有人離島』でいこうと。軸が明確だったからこそ、企画から発売まで約半年というスピードで進められたのだと思います」(高橋さん)

ニッチなテーマであるにもかかわらず、販売直後から2度も完売している本商品。取材依頼が殺到したり、YouTubeで話題になったりと「反響は想像以上だった」と高橋さんは話す。

「当初は、トレーディングカードの特性から30代~50代の男性をターゲットに想定していました。地図が好きな方は一定数いらっしゃると分かっていたので、“その層に刺さる商品を”と企画したんです。実際の反響を見ても、想定していた地図好きな男性層にしっかり届いていると感じています」(高橋さん)

一方で、思いがけない形で新たな可能性も見えてきたと続ける。

「企画段階では、離島に興味を持ってもらうこと以上の目的は考えていませんでした。ところが、社会科の先生から『子どもたちの教材にしたい』とお声がけいただいたり、離島の方から『こういう商品を出してくれて嬉しい』という言葉をいただいたりすることがあったんです。お客様の声に後押しされ、私たちも新たな期待を抱いています」(高橋さん)

ゼンリンが目指す「地図から広がる、人と場所の“繋がり”」

商品の開発にあたり、嬉しかったエピソードについて二人はこう話す。

「離島のかたちって面白いものが多くて、“何か”に見えるときがあるんです。例えば熊本県の牧島は、どうしても鳥にしか見えなくて。そうしたら、カードを手にしたお客様がSNSで『牧島が鳥のかたちに見える』と投稿してくれたんです。共感してくれる人がいたことが嬉しかったですね」(長縄さん)

「カードをきっかけに離島へ行かれた方に触発され、私も20年ぶりに地元に近い島(小豆島)を訪れてみたんです。すると、当時は気づかなかった島の魅力や、地元の良さを再認識できました。カードが新しい発見のきっかけになっていると実感できることが、何よりの喜びです」(高橋さん)

お二人が共通して感じるヒットの要因は「ゼンリンらしさ」にあると話す。

「トレーディングカード市場の中で埋もれないよう、『ゼンリンにしかできないこと』を突き詰めた結果が、離島の地図情報を載せるアイデアでした。ニッチなテーマが上手く差別化に繋がり、興味を持ってくださるお客様にしっかり届いたのだと思います」(高橋さん)

「やはり『ゼンリンらしさ』に尽きると思います。整備された地図データという基盤があったからこそ、本商品を開発できました。そしてもう一つ、嬉しい発見だったのが、離島出身の方からの反響が大きかったことです。デザインの制約上、なかなか光を当てられなかった離島にスポットを当てられた。この辺りも、ユーザーさんに受け入れられた理由ではないかと考えています」(長縄さん)

「有人離島」シリーズは、対象となる全304島のカード化を目指し、すでに第2弾の企画が進行中。地図から読み取れる情報の楽しさを伝えるべく、さらなる広がりが期待される。

「『Map Design GALLERY CARD 有人離島』をきっかけに、日本の離島に興味を持っていただけたら嬉しいです。コンプリートボックスは現在品切れ中ですが、1パックからでも気軽に楽しめますので、ぜひ一度手に取ってみてください。また『Map Design GALLERY』では、都道府県の形をモチーフにした雑貨など、土地にちなんだアイテムを多数展開しています。こちらも合わせてご覧ください」(高橋さん)

「私たちのブランド『Map Design GALLERY』は、『地図から始まる繋がり』をコンセプトにしています。このカードも、ただ集めるだけでなく、友人と交換したり、カードを手に離島を訪れたりすることで、人と人、人と場所を繋ぐきっかけになれば嬉しいです」(長縄さん)

文・撮影/久我裕紀 取材/DIME編集部

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