
単なる便利なツールという枠を超え、今や多くの人にとって公私に渡る頼れるパートナーとなりつつある生成AI。では実際のところ、仕事で活用しているビジネスパーソンはどれくらいいるのだろうか?
アデコはこのほど、全国のX世代・Y世代・Z世代の働き手2,050人(X世代750人、Y世代800人、Z世代500人)を対象に、仕事における生成AIの利用状況や、今後の仕事および生活への影響、生成AIの利用がもたらす仕事への効果などについて、意識調査を実施し、その結果を発表した。
本調査では、調査実施時点で45歳~59歳(1965年から1979年の間に生まれた世代)を「X世代」、29歳~44歳(1980年から1995年の間に生まれた世代)を「Y世代(ミレニアル世代)」、18歳~28歳(1996年から2012年の間に生まれた世代)を「Z世代」と定義して調査を行っている。
1. 仕事で生成AIを使っていると回答した働き手は、全体の3割未満にとどまった。生成AIの利用率がもっとも高いのはZ世代だった
全国のX世代・Y世代・Z世代の働き手2,050人(X世代750人、Y世代850人、Z世代500人)に対し、「現在の仕事で生成AIを使っているか」という質問をしたところ、「使っている」と回答したのは27.4%(561人)となった。
仕事で生成AIを利用していると回答した働き手がもっとも多かったのはZ世代で、36.6%が「使っている」と回答した。一方、もっとも少なかったのはX世代で、「使っている」と回答したのは19.9%のみとなった。
2-1. 生成AIを利用している働き手ほど、生成AIの進化によって人間にしかできない仕事が増えると考えている
全国のX世代・Y世代・Z世代の働き手2,050人(X世代750人、Y世代850人、Z世代500人)に対し、生成AIの進化がもたらすと思われる様々な変化についての考えを質問した。
生成AIの進化により、「人間にしかできない仕事が増えると思うか」という質問をしたところ、仕事で生成AIを利用している働き手の56.8%が、「そう思う」(非常にそう思う 10.5%、どちらかと言えばそう思う 46.3%)と回答した。一方、生成AIを利用していない働き手で「そう思う」と回答したのは40.3%(非常にそう思う 6.8%、どちらかと言えばそう思う 33.5%)で、生成AIの利用者ほど、人間にしかできない仕事が増えると考えていることがわかった。
2-2. 生成AIを利用している働き手ほど、生成AIの利用がワークライフバランスと給与・報酬に良い影響をもたらすと考えている
続いて、生成AIの進化により、「ワークライフバランスが向上すると思うか」という質問をしたところ、仕事で生成AIを利用している働き手の67.7%が、「そう思う」(非常にそう思う 14.8%、どちらかと言えばそう思う 52.9%)と回答した。一方、生成AIを利用していない働き手で「そう思う」と回答したのは、51.9%(非常にそう思う 7.0%、どちらかと言えばそう思う 44.9%)となった。
また、生成AIの進化により、「給与・報酬が上がると思うか」という質問をしたところ、仕事で生成AIを利用している働き手の42.1%が「そう思う」(非常にそう思う 10.2%、どちらかと言えばそう思う 31.9%)と回答したのに対し、生成AIを利用していない働き手で「そう思う」と回答したのは、27.6%(非常にそう思う 3.9%、どちらかと言えばそう思う 23.7%)となった。
3. 生成AIを利用している働き手の9割が、1年前と比べて生成AIの利用頻度が高くなったと回答。利用頻度がもっとも高かったのは、Z世代だった
仕事で生成AIを利用していると回答した全国のX世代・Y世代・Z世代の働き手561人(X世代149人、Y世代229人、Z世代183人)に対し、「1年前に比べて、生成AIを使う頻度はどのように変わったか」という質問をしたところ、90.0%が「高くなった」(非常に高くなった 38.1%、どちらかと言えば高くなった 51.9%)と回答した。
また、「どれくらいの頻度で利用しているか」という質問をしたところ、利用頻度がもっとも高かったのは、Z世代で、36.6%が「ほぼ毎日」と回答した。
4. Z世代の働き手は、他の世代の働き手よりも、仕事で生成AIを利用することによる効果を強く感じていた
仕事で生成AIを利用していると回答した全国のX世代・Y世代・Z世代の働き手561人(X世代149人、Y世代229人、Z世代183人)に対し、仕事で生成AIを利用することにより、「仕事のクオリティ」、「生産性」、「仕事に対するモチベーション」、「上司・同僚とのコミュニケーション」、そして「自身のキャリアへの意識」という5つの項目について、それぞれどのような効果があったかを質問した。
その結果、Z世代の働き手は、すべての項目において、他の世代よりも仕事で生成AIを利用することの効果を感じていることがわかった。また、世代が上がるほど、効果を感じている働き手の割合が少なくなったこともわかった。
5. 仕事での生成AIの利用用途としてもっとも多かったのは、「文章や資料の作成・推敲」だった
仕事で生成AIを利用していると回答した全国のX世代・Y世代・Z世代の働き手561人に対し、「どのような用途で生成AIを使っているか」という質問をしたところ、もっとも多かった用途は、「文章や資料の作成・推敲」(58.5%)となった。
6. 生成AIを利用していない働き手が、利用してない理由としてもっとも多く挙げていたのは、「自分の業務内容に合わないから」だった
仕事で生成AIを利用してないと回答した全国のX世代・Y世代・Z世代の働き手1,380人に対し、利用していない理由を尋ねたところ、その理由としてもっとも多かったのは、「自分の業務内容に合わないから」(32.8%)となった。
調査結果についてのコメント
今回の調査の結果について、アデコ株式会社 取締役 兼 Country President, LHH Japanの板倉 啓一郎氏は、次のように話している。
「生成AIはこの数年間で飛躍的な進化を遂げ、仕事や生活において活用する場面も大きく増えました。今回、我々は、現在の働き手の世代をX世代、Y世代(ミレニアル世代)、Z世代の3つの世代に分けたうえで、仕事における生成AIの利用状況や、今後の仕事および生活への影響、生成AIの利用による仕事への効果などについて、意識調査を行いました。
仕事における生成AIの利用状況に関する質問では、生成AIを使っていると回答したのは全体の3割未満という結果となりました。報道やSNSなどで連日話題となっている生成AIですが、実際の職場ではまだ十分に浸透しているとは言い難い状況のようです。仕事で生成AIを利用していない理由としてもっとも多く挙げられたのは、『自分の業務内容に合わないから』でした。
しかしながら、このような働き手の多くが、生成AIを使う前に合わないものと判断していたり、適切な用途で利用する前に使うのをやめてしまっている可能性があります。特に、デスクワーク以外の職種ではその傾向が顕著であると考えられます。一方で、生成AIを利用している働き手はその効果を十分に感じており、利用頻度も非常に高まっています。企業は、生産性の向上だけでなく持続的な成長を実現するためにも、外部の専門家の助言などを取り入れながら、従業員に対し生成AIの有用性を伝え、適切な活用方法を周知することが必要です。
今回の調査で特に注目すべき結果は、生成AIを利用している働き手ほど、今後『人間にしかできない仕事が増える』と考えている点です。これまで、生成AIをはじめとするAI技術は、雇用に対する脅威であると捉えられることも少なくありませんでした。しかし、実施に生成AIを業務に取り入れている働き手の多くが、AIの進化によってむしろ人間ならではの価値が高まると感じていることは、非常に興味深い傾向でした。
世代別の比較では、Z世代の働き手ほど仕事で生成AIを活用しており、その効果も強く感じていることが明らかになりました。デジタルネイティブと呼ばれるZ世代は、新しいテクノロジーへの適応力が高く、それが業務における活用に繋っているものと考えられます。生成AIを、実際に役立つツールとして認識している点も、他の世代と比較し際立っています今後は、こうした若手世代の知見や経験を、他の世代の働き手が積極的に学び、組織全体で生成AIの活用を進めていくことが求められます」
アデコ株式会社 取締役 兼 Country President, LHH Japan
板倉 啓一郎
1963年生まれ。慶應義塾⼤学理⼯学部卒。大学卒業後、伊藤忠商事株式会社に入社。ケリーサービスジャパン代表取締役社長、テンプスタッフ株式会社の海外事業部VPを経て、2014年に転職支援・人材紹介事業の日本責任者としてアデコ株式会社に入社。23年4月より現職。
<調査概要>
調査対象:日本全国の勤続1年以上の会社員および公務員・団体職員
サンプル数:20代~50代の男女2,050人(各年齢男女25人ずつ)
調査方法:インターネット調査
実施時期:2025年6月27日~30日
調査実施会社:楽天インサイト株式会社
出典元:アデコ株式会社調べ
構成/こじへい