
働き方の多様化とコミュニケーションツールのデジタル化が進むにつれ、社内での雑談機会が減り、チームの一体感に課題を抱える管理職は少なくない。@DIME読者の皆さんで、管理職に就いている人なら、心当たりはないだろうか?
本記事では、その解決策を意外な場所、ゲーマーたちの熱狂的なコミュニティを生み出すコミュニケーションツール「Discord」に求める。
趣味や共通点で自律的に繋がる彼らのやり方は、DX時代のチームマネジメントにきっと役立つ。
「ゲーマー御用達」ツールの域を超え、ローカルSNSな雰囲気に
オンラインゲームユーザー同士のコミュニケーション空間としてはもちろん、「サーバー」というコミュニティ内で、チャット、音声通話などが飛び交う。ビジネス利用に使っているユーザーもおり、共通点を持つ人同士で深く繋がれる世界観が特長だ。
なぜ今、部下や同僚との雑談は、重要なのに難しくなってしまったのか?
リモートワークが少しでも導入されている企業なら、TeamsやSLACK、Google Chatなどのツールを活用し、生産性の向上を実感しているだろう。
しかし、その一方で組織内の信頼関係が深まらないと感じるなら、それは“雑談”の減少が原因かもしれない。
仕事は最終的には人と人との共同作業であるが、ビジネスツール上のコミュニケーションが業務連絡に終始すれば、相手を「役割」や「機能」としてしか見なくなり、問題解決の初動が遅れる事態になりかねない。
雑談の機会をいかに創出するかは、現代のマネージャーにとって喫緊の課題である。Discordの話題に入る前に、課題背景をまとめておこう。
雑談の機会を阻害する2つの背景
(1)リモートワークでオフィスにいないと「偶然の接点」が無い
オフィス内の休憩スペースや、ランチでの他愛のない会話がなくなり、公式な会議では議題に上がらないような、他部署の動向や業界の小ネタ、個人の持つノウハウなどが伝播しなくなってしまった。
「実は〇〇で困っていて…」という何気ない会話が、その場に居合わせた詳しい人から「ああ、それならこの方式で解決できますよ」となり、課題解決に至った経験はあるだろう。
偶然の接点から生まれる人間関係の円滑化や課題解決の実現は「ウォータークーラー効果」という。
(2)ハラスメント懸念や価値観の多様化で雑談のネタ振りが難しく
ミドル世代にとってはゴルフや野球、サッカーの話題が必修科目的な位置づけかもしれないが、Z世代などの若者世代や部下との共通言語にはなり得なくなってしまった。
さらに、プライベートな話題に踏み込みすぎれば、例えば、休日にどのようなことをして遊んでいるか?についてTeamsやSLACKの中で話すだけでも、ハラスメントと受け取られかねない。
マネージャー側も萎縮してしまい、雑談を難しくしている。
テレワーク化で社内コミュニケーションが減ったのは自明
マネージャーとして、「メンバ―たちのコミュニケ―ションが薄いんだよなあ」と思っていたら、それは誤りかもしれない。
複数の意識調査では、十分な指導やアドバイスが受けられない、孤独感や疎外感が解消しないという悩みを持つのは管理職の割合が大きい。マネージャーとして率先して、「ウォータークーラー効果」を狙いたい。
「Discord」で活発なコミュニティが生み出せるのか?
Discordの利用率自体はさほど高くない。NTTドコモモバイル社会研究所の調査結果によれば、Discordの利用率は4.6%で、その内訳では10代男性の3割超、20代男性の約2割がDiscord利用となっている。
Discord自体をビジネスシーンで利用する場合は、アカウント管理のセキュリティ要件を満たせないなどの課題があり、仕事用にすぐ導入するのは難しい。一方、Discordのコミュニティの設計思想は、業務で使っているTeamsやSLACKにすぐに輸入できる。
Discordが持つコミュニティ場の設計思想
「すべての会話を、全員が聞く必要はない」という思想で、Discordのサーバーは、「#総合」といった公式チャンネルだけでなく、「#好きなアニメ」「#今日のランチ」「#ペット自慢」など、テーマごとの無数のチャンネルが立ち上がっている。
巨大な「#雑談」チャンネルでは「何を話せばいいか分からない」と躊躇する人も、「#ペット自慢」なら投稿のハードルが下がるし、共通の話題を持つ人ともつながりやすくなる。これにより、業務では接点を持てないメンバー同士が繋がる機会となり、部署を横断したコミュニケーションが生まれるのである。
Discordは、「カテゴリー」を作成し、その中にテキストチャンネルや音声チャンネルなどを作って階層化できる。
Discordは参加が強制されない場を提供する
チャンネルマネージャーは、「会話を管理せず、会話が生まれる『場』を育てる」という思想で、各チャンネルへの参加を任意とし、「参加しない自由」を保障する。管理者は場を提供するが、会話の主役はあくまで参加者である。
「雑談への参加が評価に繋がるのでは」というメンバーの不安を払拭し、強制感がないからこそ本音の会話ができる。
気軽に繋がれる「ボイスチャット」の存在
「会話は『始める』ものではなく、『そこにある』もの」という思想で、例えばTeamsのコールや、Slackのハドルは、相手を呼び出すイベントだが、Discordのボイスチャットは常設された空間である。「ボイスチャット-雑談部屋」のようになっていて、誰かがいるのを見て、ふらっと立ち寄る、という使い方が基本となる。これは、リモートワークで失われた「隣の席の同僚や部下への声かけ」の如く、偶発的な会話が生まれやすく、チームに緩やかな連帯感をもたらしてくれる。
ボイスチャンネルをワンクリックするだけで、会話に参加できる。「呼び出し操作」をする手間がない。