イシューセリングとは、業務上の課題を具体的な解決アクションにつながるように提案するビジネススキルを指す。社員の提案力や主体性が高まり、組織の成長や利益拡大に有効な手法だ。
目次
ビジネスの現場において、これまで以上に重視されるようになってきている課題解決力や提案力。中でも効果的とされているのが「イシューセリング」と呼ばれる手法だ。
イシューセリングとは、ただ問題点を洗い出すだけでなく、相手を動かすようなかたちで具体的に解決策を提案し、実行まで導くコミュニケーション戦略を指す。
この記事では、イシューセリングのメリットや成功させるポイントを解説する。
イシューセリングとは
イシューセリングとは、どのような行動を指す言葉なのだろうか。まずはその意味と注目される理由を確認しよう。
■イシューセリングの意味
イシューセリングとは、英語の直訳である「課題(イシュー)」と「セリング(提案・売り込むこと)」を組み合わせた言葉だ。日常の業務などで気づいた課題を分析し、解決方法を上司や経営層に提案する一連の行動を「イシューセリング」と呼ぶ。
イシューセリングでは、ただ課題を指摘したり、要望として伝えたりするだけではなく、なぜその課題が重要なのか、どのような方法で解決できるのかを論理的に説明することが求められる。
■イシューセリングが注目される理由
イシューセリングがビジネスの現場で注目されるようになった理由には、従来の「上からの指示を待つ」受け身の姿勢から、社員一人ひとりが主体的に課題を見つけて提案する姿勢が求められるようになった背景がある。
また、リモートワークの普及によって、コミュニケーションが断片化しやすくなったのも要因の一つ。適切なイシューセリングを利用すれば現場の課題の解決が可能になるとして、イシューセリングの必要性がますます高まってきた。
経営判断や事業成長に直結する価値を生み出せる点が、イシューセリングが評価され、求められている理由だろう。
イシューセリングで期待できる効果
社員が自発的に課題(イシュー)を見つけ、経営をより良くするために効果的に働きかけるイシューセリングが浸透すれば、変化の激しい時代でも適切に対応できるようになる。
ここからは、イシューセリングによって得られる具体的な効果を詳しく見ていく。
■重要な課題が解決されやすくなる
イシューセリングの最大のメリットは、現場において優先して解決すべき課題にフォーカスできる点だ。現場では重要度が高くても、経営陣はつい見逃してしまう。そんな課題は少なくない。
イシューセリングでは社員が当事者意識を持って提案し、優先的に取り組める体制を整えられる。組織の根本にある課題を見極め、改善の方向性に持っていくことは、結果として会社全体の成長や目標達成に直結する。
■社員の「提案力」や「主体性」が高まる
イシューセリングは、社員の提案力や主体性も自然と高めてくれる。単なる問題提起ではなく、現状の分析や課題の背景を深掘りし、自分なりの仮説や解決策をまとめて上司や経営層に発信するプロセスは、個人の成長につながりやすい。
職場が自ら考えて動く姿勢を歓迎する雰囲気へと変わることで、部署やチーム内でもポジティブな発言や行動が生まれやすくなる効果も期待できる。自分の提案が採用されれば、自己効力感やモチベーションも上がるだろう。
■経営判断の質やスピードが向上する
イシューセリングは、経営層の意思決定の質やスピードの向上にもつながる。厳選された重要な情報が集まりやすくなるため、上位層が現場のリアルな状況をタイムリーかつ正確に把握できる。
意思決定に必要な材料が揃うスピードが短縮されれば、無駄な会議や調整の時間も減り、より早く適切な判断を下せるようになるだろう。
また、現場発信の提案が増えることで、経営陣と現場のギャップも解消され、組織一丸での課題解決が実現しやすい点もイシューセリングの大きな強みだ。
イシューセリングの効率的な進め方
イシューセリングは、課題を見つけて終わりではない。見つけた課題を周囲に伝えるプロセスやコミュニケーションの工夫が求められる。ここでは、イシューセリングをスムーズに進めるためのポイントを紹介する。
■重要なイシューを見極める
イシューセリングは、組織やチームにとって本当に重要な課題を見極めることから始める。表面的な問題や個人の不満ではなく、組織全体の目標達成や生産性向上に直結する課題を見つけよう。
例えば、業務プロセスのボトルネックや顧客満足度の低下といった課題は、データをもとに分析することで明確にできる。
まずは考えられる課題を洗い出し、影響の大きさや関係する範囲など複数の視点から優先度をつけて整理すると、取り組むべきイシューが見えてくる。
■提案資料を作成する
イシューが特定できたら、周囲に明確に伝えるための提案資料を作成する。
資料には、現状の課題や背景、イシューの重要度、なぜ今解決すべきなのかなどを盛り込むと説得力が増す。数字や顧客の声など根拠のあるデータを用いると説得性が増し、相手に伝わりやすい。
視覚的にも効果的な図やグラフを使い、論点が整理されたわかりやすい資料を意識しよう。上司や経営層も課題の重要性をすぐに把握できるよう、内容を簡潔にまとめるのも大切だ。
■上司や経営層へアプローチする
提案資料がまとまったら、適切なタイミングと方法で上司や経営層にアプローチをする。その際に、状況に合わせてアプローチの仕方を工夫することが重要なポイントだ。
会議やミーティングのアジェンダに組み込むのも良いが、相手が多忙で難しい場合もあるかもしれない。その場合は、休憩室やエレベーターで居合わせたタイミングや、雑談の中でさりげなく話すきっかけを作るのも有効だろう。
また、提案の際には、課題と解決策だけでなく、実行にあたって必要なリソースや相手のメリットも具体的に伝えることで、関心を持ってもらいやすくなる。相手の反応や態度に柔軟に対応し、建設的な対話を心がけよう。
イシューセリングを成功させるポイント

イシューセリングで成果を上げるためには、提案の中身だけでなく、提案後のコミュニケーションやフォローも重要だ。ここからは、成功のために押さえたいポイントを具体的に紹介する。
■共感と納得感を得るコミュニケーション
イシューセリングを成功させる上では、相手の共感と納得感を引き出すコミュニケーションが欠かせない。
自分の考えを一方的に押し付けるのではなく、なぜその課題が重要か、どんな影響が出ているかを具体的に伝えることで、相手も自分ごととして受け止めやすくなる。
また、相手の反応を窺いながら意見を聞き、やり取りを重ねることで、より良い解決策を一緒に探る、協力的な雰囲気が生まれる。論理的な説明と感情的な共感、両方のバランスを意識することで、提案が現実的なアクションへとつながるだろう。
■提案後のフォローアップ
イシューセリングは提案して終わりではなく、その後の振り返りやフォローも大切だ。その場で提案が通らなかった場合は、相手の視点で上手くいかなかった原因を考え、提案の内容や話を持ちかけるタイミングなど、自分の行動を振り返ることで次に活かせる。
提案が通り動き出した後も、進捗をこまめに確認し、必要に応じて追加の提案や調整を積極的に行おう。状況をタイムリーに把握しておくことで、関係者の認識を合わせやすくなり、スムーズな改善につなげられる。現場をはじめ、上司や経営層とも積極的なコミュニケーションを続けることで、信頼関係も深まりやすいだろう。
※情報は万全を期していますが、正確性を保証するものではありません。
文/編集部







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