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フォントのプロ「モリサワ」も初体験!たった3文字のロゴから、ひらがな95文字を生み出した「味ぽんフォント」開発秘話

2025.09.30

国⺠的な調味料として知られるミツカンの『味ぽん®』。その60周年の節⽬に、おなじみの商品ロゴをフォント化した「味ぽんフォント」が制作された。なぜ今フォントにこだわったのか。同プロジェクトを担当した株式会社ミツカン マーケティング本部 マーケティング推進部デザイン課の⼭⽥英⼦さんと、フォントデザインを担当した株式会社モリサワのタイプデザイン部 ⼤阪デザイン課 タイプデザイナーの市川秀樹さんに、オリジナルフォント開発の舞台裏を取材した。

企画のきっかけは⼩学⽣の⾃由研究

1964年11⽉10⽇に発売され、昨年、60 周年を迎えた『味ぽん』。この60周年のタイミングで登場したのが、オリジナル⽂字の「味ぽんフォント」だ。発端は、味ぽんをテーマに夏休みの⾃由研究を⾏なった⼩学⽣男⼦の存在だったと、ミツカンの⼭⽥さんが話す。

「お礼に名前を商品ラベルにした味ぽんをプレゼントしたら、とても喜んでもらえたんです。ただ過去に企画した同様のラベルも含め、フォントはばらばら。そこで、これを機にオリジナルフォントを制作することで、ファンの⽅々に喜んでもらうとともに、ブランド⼒強化につなげられるのでは、と考えました」

「味ぽんフォント」のプロジェクトを牽引した株式会社ミツカン マーケティング本部 マーケティング推進部デザイン課の⼭⽥英⼦さん

フォントではなくラベルの⾊を変えるなど、他の選択肢もあったはず。にもかかわらずフォントにこだわったのは、味ぽんの特徴的な商品名や定番ブランドのあり⽅に対する社内の意⾒が関係している。

「味ぽんの⽂字は愛らしく、声に出したときの響きもいいですよね。実際、前述した⼩学⽣男⼦や過去の企画でも、『味ぽんが⾃分の名前になった!』と反響は⼤きなものでした。そうした感触を得る中で、味ぽんらしいフォントを作ったらどうかという話が持ち上がったんです。味ぽんは60年という⻑きにわたり、⼤事に守ってきたブランドです。しかし最近は社内でも『もっとお客様を楽しませるコミュニケーションができるのではないか』という意⾒が出ていました。そのためには守るだけでなく、進化していかなければなりません。味ぽんフォントも進化のひとつだったわけです」

味ぽんの愛らしさと、ロングセラーの普遍性を両⽴

まず取り組んだのが、「味ぽんらしさ」を理解することだった。個々の頭にあるのは主観でしかないため、現在の味ぽんのロゴがどのような思いで作られたのかをリサーチし、正確に把握する必要があったという。

「味ぽんのデザインは、1977年以降ほとんど変わっていませんが、「味ぽん」のロゴは少しずつリニューアルしており、2004年に現在の形になりました。

2004年時のロゴを⼿掛けたデザイナーに話を聞き、味ぽんの親しみやすく愛されるキャラクターを⼤事にしながら、品質感とロングセラーとしての王道感や普遍性が表現されていることを知ったんです。」

『味ぽん』のデザインの変遷。1977 年以降、ほぼデザインは変わらず、オレンジと⽩のツートンカラーと『味ぽん』の⾚を継承。ただしよく⾒ると『味ぽん』のロゴやメニューは時代に合わせて変わっている。

そうした要素を踏まえ、フォントメーカーのモリサワに協⼒を依頼し、試⾏錯誤の末に約8か⽉間を要して完成。フォントデザインを担ったのが市川さんだった。

株式会社モリサワのタイプデザイン部 ⼤阪デザイン課 タイプデザイナーの市川秀樹さん

「味ぽんフォントは、ロゴをベースにしたひらがな95 ⽂字と、『味ぽん』『ぽん』のロゴを合字化※したものをラインナップとしています。漢字とひらがなのバランスや、味ぽんらしさを表わす調整に苦⼼しました」(市川さん)
※⽂字の並びがキレイにつながるように、2つ以上の⽂字を1⽂字とすること。

「味ぽんフォント」は、モリサワのユニバーサルデザイン書体「UD新ゴ」を基に制作。ロゴの形状と親和性が⾼かったからで、市川さんはこのUD新ゴの開発にも携わっていたという。

「ひらがなに関しては、味ぽんならではの親しみやすさを盛り込むため、⼀⽂字ずつチューニングを施しています。例えば、『き』『さ』のようにハネがある⽂字はシャープな印象になりやすいので、ハネの⾓度を緩やかにしているんです。同時に、UD新ゴの漢字と混植しても違和感がないよう、バランスを調整しています」

ロゴをそのままフォント化するのも異例のこと。「55年間、書体の制作に関わってきて初めての経験だった」と市川さんは振り返る。

「フォントの制作では、名前に使われることを意識して臨むのが、私のモットーになります。そうすれば仕上がりは格段に変わるという師匠からの教えです。今回、味ぽんフォントで名前⼊りのラベルを作ることが想定されていたため、その思いをより強くしました」

社員の名刺やLINEスタンプにも活⽤

ミツカンでは実際、名前⼊りラベルに使⽤し、〝オリジナル味ぽん〟としてカスタマイズ。取引先へのお⼟産やキャンペーンのプレゼントなどにあてている、と⼭⽥さんが話す。

「市販はしておらず、今はどのように展開していくかを検討している段階です。将来的には例えばECサイトで、『名前⼊りの味ぽんを作れます』みたいなことをできたらいいなあなどと企画を練っています」

ラベルだけに限らない。味ぽんフォントは社員の名刺やLINEスタンプに活⽤されており、社内外で⼤反響だったという。

「フォントによって伝わり⽅は変わるもの。今後も様々な形で味ぽんフォントを企画に絡め、味ぽんファンのさらなる拡⼤に努めていきたいと思っています」

今やフォントは紙上だけのものではない。Webサイトや動画などデジタル上にも活躍の場を広げている。こうした⽂字の⾒せ⽅に知恵を絞ることも、定番ブランドの活性化に有効な策のひとつといえそうだ。

※味ぽんは株式会社MizkanHoldingsの登録商標です

取材・⽂/百瀬康司

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