
AIをビジネスに活用することが一般的になりつつあり、急速に職場に浸透するAIによって、マネジメントの在り方は大きな転換点を迎えていると言えるだろう。「この国の総労働熱量をあげる」をサービスビジョンに掲げるmentoは、100人以上の企業に勤める会社員832人を対象に「AI時代の上司と部下の本音調査」を実施して、その結果を公開した。それによれば部下の9割がAIに本音を言いやすいと回答したが、上司の7割は「部下の本音を引き出す」ことに苦戦していることがわかったという。
ここでいう「本音」とは、愚痴や不満だけでなく、業務の不安や弱音、キャリアの希望、チームへの改善提案など多面的なもので、上司も部下も本当は「業務の不安や弱音」を話したいけれど話せていない実情があったという。
上司の7割が1on1を負担と回答
上司に対して「部下との1on1や面談に心理的負担を感じることがありますか?」と質問すると、「負担を感じることがある」(29.8%)と「負担を少し感じることがある」(35.6%)を合わせて65.4%が負担を感じているという。理由では、「部下に気を遣っているから」(62.5%)、「本音を引き出すことが難しいから」(44.1%)、「フィードバックが難しいから」(43.0%)が上位となった。
上司の7割が本音の引き出しに苦戦
上司に対して「1on1や面談で部下の本音を引き出すことに難しさを感じますか?」と質問すると、「とても感じる」(26.4%)と「少し感じる」(45.9%)を合わせて72.3%が難しさを感じていた。要因としては、「1on1で話せる時間が短い」(48.5%)、「声をかける適切なタイミングを見極めづらい」(45.2%)、「多拠点や直行直帰など物理的に会う頻度が少ない」(38.2%)などが挙がった。
部下の8割が本音を話せていない
部下に対して「1on1や面談で上司に『本音を話せていない』と感じますか?」と質問すると、「本音を話せていないと感じる」(21.6%)と「あまり本音を話せていないと感じる」(36.8%)と「どちらとも言えない」(23.8%)を合わせた82.2%が本音を話せていないと回答している。それによって転職を考えたことやキャリアに不安を持ったこともあるという。
上司・部下が話したい本音の1位は「業務の不安や弱音」
部下に対して「本当は上司に聞いてほしい本音」を質問すると、「業務の不安や弱音」や「仕事やチームへの改善提案」が挙げられた。上司に対して「本当は引き出したい部下の本音」を質問すると、同様に「業務の不安や弱音」や「仕事やチームへの改善提案」が挙がったという。話したいことや引き出したいことは共通しているが、うまく本音を対話できていないことが浮き彫りになる結果となった。
部下の9割がAIに本音を言いやすいと回答
仕事の中でAIを利用している部下に対して「AIに本音を言いやすいと感じますか?」と質問すると、「とても感じる」(32.6%)と「少し感じる」(52.4%)を合わせた85.0%が本音を言いやすいと回答している。「AIからのフィードバックをどう捉えていますか?」という質問では、「受け止めやすい」(25.1%)と「少し受け止めやすい」(55.1%)を合わせた約8割がAIのフィードバックを受け止めやすいと感じているという。
上司の役割はAIに代替ではなく「上司とAIが分担しあう」
部下に対して「チームにおいて『上司が担っている機能』はAIで代替できると思いますか?」と質問すると、「すべて代替できる」と答えたのは7.5%と1割以下だった。「ほとんど代替できると思う」(19.2%)、「一部しか代替できないと思う」(37.0%)、「ほぼ代替できないと思う」(16.6%)を合わせた72.8%が上司とAIが役割を分担し合うと思っているようだ。
上司は部下がAIに相談してから「感情を整理してから相談してくれる」ことを期待
AIが事前に部下の相談やケアを担うことに有効性を感じている上司に対して「有効性を感じる理由」について質問すると、「感情を整理してから相談してくれる」(70.7%)ことにもっとも期待していた。
削減した時間の再分配は「目標達成の取り組み」や「方針の意思決定」
上司に「部下のマネジメントが楽になったときに、何に注力したいですか?」と質問すると、「目標達成のための取り組み」(57.2%)、「方針の意思決定」(38.2%)が挙げられた。
今回の調査を行ったmentoの木村憲仁CEOは、次のようにコメントしている。「上司の7割が「部下の本音を引き出すことに苦戦」していることが明らかになりました。現場の管理職の方々の話を聞くなかでも、管理限界を超えた人数をマネジメントしていたり、テレワークや直行直帰で状況が見えなかったりと、プレイングマネージャーをしながらひとりずつメンバーと向き合うことの難しさをよく耳にします。そんな中で部下の9割が「AIに本音を言いやすい」と回答していることも特筆すべき点です。AI時代のマネジメントでは、AIが事前に情報整理やケアを担い、上司とAIが役割を分担することができると考えています」
これからの会社運用では、上司、部下の関係に加えて、いかにAIに役割を分担させることができるかがマネジメントとして重要なポイントになっていきそうだ。その意味では、AIに仕事の作業だけでなく、上司と部下の仲介役としての役割を持たせることも考えたほうがよさそうだ。
「AI時代の上司と部下の本音調査」概要
調査対象:100名以上の企業で働く社員
有効回答数:832(一般社員416・中間管理職416)
調査期間:2025年9月1日~2025年9月3日
調査方法:インターネット調査
調査機関:mento
調査委託先:ジャストシステム
構成/KUMU