
誰がどう見ても「それ」とわかるものがある一方、グレーなものもある。そんな時として不明確な「ハラスメントの境界線」だが、管理職と非管理職ではハラスメントの基準にどのような違いがあるのだろうか?
MENTAGRAPHはこのほど、22~65歳の全国のビジネスパーソン1,800人(管理職900名・非管理職900名)を対象に「ハラスメントの基準」に関する調査を実施し、その結果を発表した。
非管理職のほうが“身体的接触”や“私的時間への介入”により敏感であることが明らかに
今回の調査は、「ハラスメントの境界」という不明確な議題について、「職場における許容ライン」の実態を明らかにすることを目的に実施した。
業務内で行われる様々な行為について、「ハラスメントの基準に関して当てはまるものを選択してください」という質問に対し、5段階で評価を収集した。ハラスメントとみなす割合(当てはまる/やや当てはまると回答)で、最も多い結果となったのは、「業務時間外のLINE連絡」が28.6%(非管理職30.6%/管理職26.6%)という結果になった。
続いて「肩を叩く」が26.6%(非管理職30.2%/管理職22.9%)、「若いから体力があるという発言」と「下の名前での呼び捨て」は、同率25.4%でその後に続く結果になった。一方で、「業務上の指導での怒号」は14.9%(非管理職16.0%/管理職13.9%)にとどまり、大声よりも接触・呼称が問題視されやすい傾向がみられた。
また、管理職と非管理職の認識において、最も差が大きかったのは「肩を叩く」行為で、非管理職30.2%に対し管理職22.9%、ギャップは+7.3ptという結果になった。以下「若いから体力があるという発言」が+6.0pt(非管理職28.5%/管理職22.4%)、「髪型・服装への指摘」が+4.3pt(非管理職25.5%/管理職21.1%)と続き、「業務時間外のLINE連絡」が+4.0pt(非管理職30.6%/管理職26.6%)、「下の名前での呼び捨て」が+3.9pt(非管理職:27.3%/管理職:23.5%)となった。
いずれも身体的接触や属性・外見への言及、私的時間への侵入といった“グレーになりやすい行為”が並び、現場(非管理職)はリスクとして敏感に捉える一方、管理職は「コミュニケーションの一形態」「指導の一環」と捉えがちで線引きが甘くなりやすい可能性が示唆されている。
さらに、管理職に対して、「自分の意図と違って捉えられた経験」を尋ねると、「部下の興味・特徴の把握」が57.0%と突出するという結果になった。次いで「会社方針の伝達 」(12.2%)、「目標・進捗管理 」(10.7%)という結果に。支援意図の関与でも、詮索・干渉に映る危険性が示唆されており、目的の共有、同意の取得、頻度の合意というプロセスを挟み、情報の取り扱い範囲を事前に示すことが求められる。
ランキングからは、私的時間への連絡、身体接触、呼称、属性言及、身だしなみ指摘といった“対人境界”に関わる領域で、非管理職の基準がより厳しいことがわかった。企業においては、こうした意識ギャップを“可視化”し、上司・部下間で期待値をすり合わせる機会を設けることが、よりよいマネジメント環境づくりにつながる。
<調査概要>
調査手法:インターネットによるアンケート調査
調査期間:2024年12月3日~12月17日
分析期間:2025年8月15日~8月31日
調査対象者:22~65歳のビジネスパーソン1,800人(管理職900人・非管理職900人)
出典元:MENTAGRAPH株式会社
構成/こじへい